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9-5 星影百合の秘密⑤

 さて、ここから、百合の女優人生がスタートした。見事に映画の主役を努めて、いきなりの主演女優賞を総なめにして、様々なドラマや映画から、声がかかる。高校生にして、もはや、子役ではなく、ベテラン並みの忙しさと、大役が目白押しということになっていった。そして、この頃になると、その話題性から、とうとう、大御所夫婦の長女であることが判明して、さらに話題となっていた。


 そして、高校を卒業する頃には、飛ぶ鳥を落とす勢いで、芸能界にもはや大女優の風格で君臨していた。とにかく、普通に演技が上手いというのを、かなりのレベルで超えていて、主役をすれば、主演女優賞受賞というのが、もはや当たり前のようで、映画のヒットや、ドラマの高視聴率は、彼女がでるから必ず観るという、とんでもないことになっていた。


 だが、その、高校卒業を待たずに、思いがけない不幸が百合を襲った。それは、母、ひかりが癌を患い、若くして、その生涯を終えたのだった。10代にして成功し、巨万の富を手にして、何不自由ない生活であったが、母の死は、彼女にとって唯一の拠り所であった、1番大切な、大きなものを失って、これまでの生涯で最大の悲しみであった。


 すると、さらに、百合は、その自身の女優としての在り方に貪欲になり、さらに、さらに女優として自分の可能性を無限に追求していった。その、彼女の探究心は、果てしなく、他の俳優、女優には、そんなに追求しても無駄よ、とよく言われていた。しかし、すでに女優として頂点に立っていた彼女は、求めれば求めるほどに、再び頂点が遥か彼方に広がって、先がないと女優仲間に話すと、そんな無駄な努力、もうやめて好きなことをしたら、とよく言われていた。


 だが、その追求の先で、ある時、百合が目にしたもの、それは、普通の主役ではなくて、悪人の役についての追求であった。誰もが、その本人のイメージをより良いものとしたいがために喜んで演ずる、良い主人公や、良い人の役どころ。しかし、百合は、演技力の極みには、そうではなく、悪役を演じ切ってこそ、その演技力の極まれるものが、その先にあると思うようになっていた。


 しかし、もはや大女優の仲間入りをし、そして、その美貌と物腰の柔らかさや、優しい風貌に、悪役はとても相応しくない。こちらから、希望しても、その役柄が回ってくることはなかった。それは、一度だけ、大作の映画において、主役でないが、準主役の大悪役の抜擢があり、百合は喜んで全身全霊を込めて、演じ切ったが、その非凡な演技力が際立ち過ぎて、主役を圧倒してしまい、もはや主役は、その作品において、主役の位置から外れたイメージになっていた。それほど、百合は、素晴らしかった。いや、素晴らしすぎたのだった。


 すると、その時の役で、百合は、助演女優賞をとった。百合は、いつも獲っていた時以上に、その時はうれしかった。しかし、その後、百合に、悪い役は、来なくなったのである。そもそも、悪役は、主人公になることは、なかなかない。しかし、悪役は、物語の上でとても大切であり、本来なら、演技力が求められる位置付けである。演技力の乏しい悪役などは、とても観ていられない。しかし、それが、主役以上になり、主役よりも目立つことは、さらに、視聴者は観ていられないのであった。


 そこから、百合は、良い役柄、主役を次々と演じて、その度に、賞を、当たり前かのように獲っていった。なんと、若くして、揺るぎない大女優としての不動の地位を手にしたのであった。



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