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8-3 大女優、美礼多恵子(みれいたえこ)の逆襲③

 その後、美礼多恵子みれいたえこは、マネージャーの神田真理子と共に、ある映画会社を訪れていた。


 その映画会社「三つ巴映画会社」は、美礼多恵子みれいたえこからの連絡をもらい、突然の訪問に驚きを隠せなかった。実は、長年、芸能界での付き合いもある社長の三つ巴大貴みつどもえたいきは、1ヶ月前に、多恵子から、そろそろ引退も考えていると話しを聞いたばかりだったからなのである。


「いやあ、驚いたよ。多恵子さん、君は、いったい、どういう風の吹き回しだい。こないだは、あんなにも、弱気になって、引退をほのめかしていたのに、、、。まあ、でも、正直言って、ちょっと嬉しいサプライズだけどね。」


 多恵子は、マネージャーの神田と、あらためて話しをして、もう一度、自伝の映画化を考えているということだった。社長の三つ巴は、それを聞いて、製作費も、そこまでではないことでもあったので、これまでの多恵子への感謝の意味も込めて、製作を快諾した。とても大ヒットなどは、はなから見込めるような類いの作品ではないが、彼女のファンは、まだまだ多いことから、引退記念の最後の作品となれば、その話題性で、そこそこの興行収入はいけるとは踏んでいたのである。


 だが、その後、三つ巴社長から依頼を受けた監督は、新作「美礼多恵子みれいたえこ・その女優愛」がクランクインしたのち、思わぬことで、しばらく驚きを隠せず、「三つ巴映画会社」の社長の元を訪れていた。


「三つ巴映画会社」の受付から、社長室に連絡が入る。


「ああ、冬馬監督か、わかった。すぐに、通してくれたまえ。」


慌てて、社長室を訪れた冬馬監督、入るや否や、


「社長さん、今日は、急に伺ってすみません。」


「いったい、どうしたんだね、監督。美礼多恵子みれいたえこの作品、無事にクランクインしたんでしょう。ひょっとして、彼女は、体調でも、崩しましたか。」


「いや、そうじゃないんですよ。実は、、、。」


 冬馬監督は、三つ巴社長から、今度、美礼多恵子みれいたえこが自伝の映画化をするので、ぜひ監督をしてほしいと依頼されて、クランクインの初日を迎え、あらためて、彼女の演技を久しぶりに目をした。そして、初日が終わると、三つ巴社長に、すぐに連絡して、やってきたというのである。


「いったい、何が起こったのか、自分の目を疑いましたよ。」


「監督、いったい何があったんだね。」


「それがですね。彼女のことは、何ヶ月か前に、あまり元気がないということも、最近出ていた作品にも、かつての演技力があまり感じられないという話しを聞いていたじゃないですか。」


「まあ、そうだね。私もそれは聞いていましたが、、、。だけどね、今回、急に、引退する前に、自伝を映画化したいから、また頑張ってみたいと依頼されたんだよ。それで、彼女とは、いくつも作品を撮ってきた君に依頼できればと思ってね。だいぶ、やる気だっただろう。」


「そうなんですが。だけど、その彼女は、話しとは、だいぶ、様子が違っていたんですよ。」


「だから、いったい、どうしたというんだね、監督。」


「それがですね。彼女、半年前とは、まるで別人のようで、活気があって、その演技力も復活していたんですよ。まるで、今だに、賞取りの頃の現役のような演技力で、引退が近いような感じは微塵も感じられないんです。そうですね、どちらかと言えば、その頃よりも、活力にあふれているというか、なんというか。それに、より綺麗になり、洗練されていたというか、それで、今度、現場に見にきてほしいんですよ。」


「なんだ。予想よりも頑張っているなら、そんなに驚くことはないだろう。心配させないでくれよ。驚いて、わざわざ言いにくるほどのことではないだろう。だけど、思っていたよりも、よかったなんて、それなら、よかった。」


「とにかく、一度、撮影を見にきてほしいんです。」


「わかった、わかった。時間があいたら、そのうち行くから。」


 すると、三つ巴社長は、安心したのか、


 監督も、心配ごとがあるのはわかるが、思っていたよりもよかったなんて、そんなことで、驚いたなんて、多恵子さんも、よほど、この作品に入れ込んでいたんだなあ。まあ、自伝ともなれば、やる気も違って当然のことさ。



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