8-2 大女優、美礼多恵子(みれいたえこ)の逆襲②
そして、美礼多恵子の奇跡の復活については、2年前のこととなる。54才を迎えた美礼多恵子は、国内でも大御所女優と言われ、現在でも、その演技力は決して衰えてはいなかったが、その体力のなさに加えて、やはり、見た目の衰えには、勝てず、美人女優としても人気を博してきた彼女にとって、自信喪失という感は否めなかった。
そして、当然、年齢的に、脇役や、大きな子供のいる母親の役、など、その点についても、活力がなくなっていて、すでに50代を迎えて、引退を考えていた。だが、しかし、その一方で、なんとか、もう一度でもいいから、一花咲かせたいという気持ちがないわけではなかった。
だが、すでに、巨万の富を得て、決して金銭のために女優を努めることなど考えることもなく、むしろ、金に困り、しっかりと女優をやらなければ、生活が立ち行かぬというような危機感でもあれば、もっと精力的に女優をやれたのかもしれないが、広大な敷地に大豪邸に住む生活を手にした彼女には、そこまでの欲や勢いがなくなっていた。
長年の付き合いである、マネージャーの神田真理子とも、そろそろお互い、独身のままで老後のことまで考えなければという話題には、事欠かない毎日となっていた。今や、人生90年とも100年とも言われる昨今ではあるが、美人女優とまでうたわれた美礼多恵子にとっては、50代後半が、もはや終末と意識せざるを、えなかったのであった。
また、思い直してみるなら、いまさら、引退作として、ここで主演女優として、作品の主役を華々しく演じる自信はなくなっていたのである。だが、せめて、自分の華やかで活気に満ちた自身を、最後に一度、アピールして終わらせたいと、そのように思っていた。
そんなある日、彼女は、なんとか、その芸能活動の1つとして考え、自伝である「美礼多恵子、人生、一女優」という本を出版していた。これは、生まれてからこれまでの女優としての体験談だけではなくて、その、小さなことから、大きなことまで、これまで、自分に起こってきた問題や、障害など、どのようなして、乗り越えてきたのかを着飾ることなく、赤裸々に書いたものであった。そして、これが意外と、彼女のファンだけでなく、悩み事のある人たちにとって、とてもいい癒しのある指導書のようにして、大ヒットにつながる売上となっていた。
美礼多恵子は、嬉しかった。それは、女優そのものの仕事ではないが、これまでの女優としての仕事が、またここにきて別の形で、多くの人々に役立てたことは、なによりも嬉しかった。そして、その出版記念サイン会が、催されて、改めて、美礼多恵子は、どんな女優なのかを、生で見てもらい、最近の人たちにもアピールできればと、少しずつ前向きになっていた。
そのサイン会では、中には、20才くらいの少女までが会場に来ていて、彼女の気持ちは元気づけられていた。けっこう、その人数も集まっていて、とても満足してサイン会は、終了した。




