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7-7 映画「運命の時間」⑦

 すべての撮影が終わり、衝撃的な結末を迎えた、今回の作品は、もちろん平和的な物語ではなく、感動のハッピーエンドのものでもない。強烈な印象を残した作品だった。


 クランクアップした現場では、姉妹の両親役の、というか、正確には明日香の両親役の、2人。父親役の、崖渕赤司がけぶちあかしと母親役の天末美英てんまつびえいが、サリーと麗子を、主演と助演としての、その演技を拍手で讃えた。


 それというのも、この大ベテランの2人は、サスペンス系のドラマや映画には、ひっぱりだこであり、良い役なら、刑事でバディとして活躍し、悪役では、金のことしか考えずに悪事を繰り返す夫婦など、この手の役柄をやらせたら、今、右に出る者はいないと言われている。


 今回の衝撃的なストーリーに、その演技力を見込まれた主演と助演の2人に対しては、この大ベテランの2人が、対抗して華を添えた。しかし、サリーにとって、自身の演技力を強烈に印象づけるためには、彼女の望むべき作品であった。彼女の性格からいっても、可愛いとか、爽やかとかよりも、強烈な印象こそが、自身のイメージを、まさに強烈に植え付けるものだったのである。


 しかしながら、サリーが、その2人と共演したあとの感想は、やはり、ベテランの2人とはいえ、自分たち、異次元女優の2人の演技力には足元にも及ばないだろうと高をくくっていたが、さすがに、サスペンスドラマの2人と、言われるだけあって、この手の演技には、よほど慣れていて、油断ならないというのが、正直なところであった。


そして、再婚した父親役の崖渕赤司がけぶちあかしは、2人について、こう語っている。


 助演の進藤さんは、前回の映画で、アオデミー主演女優賞を獲っただけあって、今回は、助演ではあったが、見事に演じてくれた。それから、今回、1番の注目は、なんといっても、主演の久条沙衣莉くじょうさいりさんだろう。彼女は、この映画のオーディションで、驚異的な印象を残していた。私と、母親役の天末さんも、そのオーディションの審査員にいたので、その演技力は、とても新人とは思えないものだと感じていた。たぶん、今回の両親役が、別の役者であったなら、完全に喰われてしまったかもしれない。まあ、すでに喰われていたかもしれないがね。久条くじょうさんなどは、自分の演技力の発しどころなどを、よくわかっていて、とにかく、すばらしかった。


次に、母親役の天末美英てんまつびえいも、2人について語った。


 とにかく、2人は、あの若さで、あの演技力は、ベテラン感が半端ではなかった。危機迫る状況において、もちろん、アオデミー主演女優賞の進藤さんも素晴らしいのですが、あの、過去に戻って事故から母親を救って起こるタイムパラドックスからの衝撃のシーンでの、久条くじょうさんの、畳み掛けるような衝撃のセリフは、まるで観客が、自身で、その場で体験するような衝撃を受けたようでした。なぜ、あんなに、セリフが生きているような衝撃を伝えられるのか、信じられません。


すると、そこに、言葉を添える父親役の崖渕赤司がけぶちあかし


 そうそう。そうなんだ。あの時のセリフの感情は、ものすごかった。観ている人たちの心に、深く突き刺さったようだったね。


 そして、作品は、完成し、サリーは、麗子に言った。


「麗子、私はね。もちろん、あなたとは、別々の作品で、主演女優賞を争いたいという気持ちはあったわ。だけどね、この作品における、ただ主演と助演という位置付けよりも、途中で消滅してしまう、あなたよりも、そのあとに明かされる沢山の衝撃が、私が1人でいる現場から発信されていくところが大事だったのよ。これなら、私の印象は、強烈よね。


 これは、もはや、事故が起こって、その犯人が明かされた時から、終わりまでが、まさに、すべて、【感情烈火弾かんじょうれっかだん】に最適になっているのよ。そして、私が、主演女優賞を獲って、あなたが助演女優賞を獲ったとしても、同等の評価ではなくて、私の評価の方が、間違いなく大きくなるでしょうね。だって、この作品での、インパクトが断然違うでしょう。アオデミー賞の授賞式が楽しみだわ。あなたも、たぶん助演女優賞は、間違いないとは思うけど、私のことも、お祝いしておいてちょうだい。じゃあ、楽しみにしてるわ。」


 そして、やがて、日本アオデミー賞の授賞式が開催された。もちろん、主演女優賞には、サリーが、そして、助演女優賞には、麗子がノミネートされていた。それに、この2人は、まだ20才という若さで、これだけの実力を見せつけている女優は、話題となっていた。


 そして、いよいよ、監督賞、作品賞などの発表の前に、まずは、助演女優賞の発表となり、見事に、「運命の時間」の進藤麗子が受賞した。


 ところが、主演女優賞は、なんと、その引退に向けてラストシネマとなる自伝的作品「美礼多恵子みれいたえこ・その女優愛」主演の美礼多恵子みれいたえこが、その引退の華向けとして、見事10年ぶりにアオデミー賞主演女優賞を受賞した。まさに、56才で引退記念作品に相応しい最後であった。


 そこで、驚きをかくせないサリー。



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