7-5 映画「運命の時間」⑤
佳奈である麗子が消えたあとは、もはやサリーの1人舞台である。事故の衝撃映像により、観客は、衝撃を受け、その衝撃の気持ちが消えないうちに、サリーは、3つのセリフで、立て続けに、【3段烈火弾】を放って、さらなる衝撃を与えた。まさに、サリーの計算通りの展開であった。
このあとは、姉妹が生まれる前に命を落としてしまった父親から生まれた佳奈は、もう登場しない。だが、意外にも、姉の明日香は生きていた。
すると、そこで、1時間が過ぎ、現在に戻った姉の明日香。すぐに、自宅に戻ると、自宅の表札には、森本という見知らぬ苗字と、そのあとには、さっき防いだ事故の直後に、無事助かっていた母親が、電話で連絡していた時に、耳にした名前「孝」という名が記されていた。
その「孝」こそ、父親と結婚していた母親が、それ以前から交際をしていた相手、森本孝であった。そして、孝との間に生まれた明日香は、父親の子だと偽られていて、消えることはなく、自分だけが生きていたわけを知り、さらに衝撃を受けた。
「ど、どうして、こんなことが!!」
泣き叫ぶ、明日香の顔が大写しとなり、場面は、変わっていく。
そして、物語は、さらに、衝撃的な事実が、次々と明かされた。つまり、父親は、結婚当初から、すでに、母親の浮気を暴いていて、交通事故を起こして、母親を殺そうとしていたのであった。
だが、姉妹2人が過去に戻る前であったなら、その犯人が不明のままのひき逃げにあい、重症を負って車椅子になってしまった母親には、夫との間に産まれてきた佳奈がいて、そして、その前には、その遺産を狙って父親と結婚した母親との浮気相手、森本孝との間には、明日香が産まれていたのであった。そして、その後、今度は、母親が浮気相手と手を組み、父親である夫を、事故に見せかけて殺害していたのであった。しかし、薬を飲んだ姉妹は、未来を変えてしまった。
物語は、ここから、母親が無傷で助かり、父親が亡くなったことで起こったタイムパラドックスにより、その物語の展開は、大きく急変する。
過去に行った時に、父親は死に、助かった母親は、無傷で家に帰った。あとをつける明日香は、どこかに、連絡をしている母親を目撃した。
「ああ、もしもし、孝、私よ。今、危ないところだったわ。うちの旦那にひき殺されるところだったわ。え、うん、うん。ところが、偶然に通りかかった女の子が、なぜか助けてくれたのよ。そう、なんだか、事故が起こるのを知ってたみたいなタイミングでね。本当に驚いたわ。いつか、こっちから、殺して財産を奪おうと思ってたからね。まさか、こんなに早く、向こうからチャンスがくるなんて、私たち、なんて、ラッキーなの。じゃ、また、連絡するわ。ちょっとね、旦那の葬式とか終わって、ほとぼりが覚めたら、こちらから連絡するから、それまではできないけど、いいわね。」
それを聞いていた明日香は、絶望の真っ只中にいた。そして、1時間のタイムリミットとなり、現代に戻ったというわけであった。
これが、すべての真相であり、1人残された姉、明日香のシーンとなった。その衝撃的な事実の展開は、サリーに、【感情烈火弾】を、その最高レベルバージョンである【3段烈火弾】を連発させるに、これほど好都合な状況は、今までなかった。しかしながら、これが、今回、サリーが、あらかじめ、脚本の内容を知っていて、この作品の主演女優を射止めたかった動機なのであった。
すると、1時間が過ぎて、現代に戻った明日香は、自宅に戻ると、森本孝の表札をみて、すべてを悟った明日香は、呆然となった。
このシーンの撮影を現場でみていた、もはや登場シーンのなくなった麗子とマネージャーの万根田は、サリーの演技の凄さに圧倒され、彼女の独壇場であると思わざるを得なかった。
帰宅した明日香を迎えた母親は、
「あら、明日香、どうしたの?そんな真剣な顔して。大丈夫。何かあったのね。あなた、ひとりっ子だから、昔から、怖がりだものね。」
なんですって、私が最初からひとりっ子??
すると、横から出てきた人物が、やはり、心配そうに声をかけてきた。
「明日香、あまり、無理しない方がいいよ。少し休んだらいい。」
あああ、そこには、父親ではない、母の浮気相手の孝がいるのだった。




