5-19 映画「少女歌人の恋」19
すると、数分の沈黙をへて、まず、ソフィアから発言をした。
「以上で、第1回目が終わりになります。監督からは、どうぞ、感想をお聞かせください。」
ハッとなる、大門監督。たった今、さっきまでの自分に戻ってきたかのような、ハッという感覚で、
「、、、、すごかったわ。この場が、思っていた以上に、その和歌の持つ思いに包まれて、本当に感動してしまった。たった一首の和歌が、こんなにまで、心を揺さぶるなんて、信じられない。個人的には、もう、これで良いと思ったのが、正直な気持ちよ。
それに、このあとの2回目がどんなものかは、わからないけど、それでも、これは、もう完璧だったわ。この撮影現場が、一変したわ。本当に、信じられない体験だった。それから、やっぱり、この和歌の一首が、その表現が完璧すぎる。さすがの六歌仙は、もう何もかも超えているわ。」
「ありがとうございます。私も、【秘流 詠人下ろし】を始める時まで、どなたが、どの和歌を詠みあげてくださるのかは、全くわからないのです。そして、この度は、在原業平ご本人が、たった今、この現代にきてくださり、柚の今の気持ちに寄り添って、それにもっとも近い当時の気持ちをそのまま詠んでくださったのは、やはり、この和歌の感動を伝える最高の詠み手であったということが伝わって、感無量の面持ちです。」
監督は、言葉を続けて、
「こんなに感動する和歌なのに、もしかしたら、次の回と比べなければならないという理由が私には、皆目見当もつかないわ。もうこれで、完璧よ。本当に、充分すぎるくらいじゃないかと思うけど。」
すると、ソフィアも、少し微笑みながら、
「その通りです。この和歌は、完璧なので、和歌そのものとの良し悪しとは違う判断になるのです。次の回には、また、違う条件で、違う和歌が登場します。それには、深い理由があるのです。」




