表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/50

5-17 映画「少女歌人の恋」17

 いよいよ、最後の自分の番がやってきた。


 さて、と、少し緊張して、深呼吸をしたが、その時、なぜか、自分の回りには、透明感のある風が、少しだけ起こってきたような感じがした。


 やがて、その風に、やさしく包まれたと思うと、なにやら、頭の中には、ある一文が出てきた。


「「「【秘流 詠人よみびと下ろし】」」」」 


 何が何だかわからないまま、そのまま、その言葉をつぶやいたソフィアは、続いて、浮かんできた文章を、つぶやいた。


「「「「ゆかしきは ときえたる こころおとよみびとのこえ われにしみわたる」」」」


 それをつぶやいた途端に、自分に、何か、別の力がみなぎってくるのを感じた。


 これこそ、「六歌仙」から授かった、その伝承者、秘流としての秘流の、その力であった。


 たった今、つぶやいた一文は、その力、【秘流 詠人よみびと下ろし】を発動させるための、発動詠歌であった。


 そして、ふと頭に湧き上がる言葉:


在原業平ありわらのなりひら この歌、現世にてしのび申す。」


 だが、ソフィアには、そこで言葉は、発せられない。


 そう思った瞬間であった。未知の世界から、ソフィアの口を借りて、声が発せられた。それは、在原業平ありわらのなりひら本人であった。


「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」


 朗詠が始まると、空気が一変し、外の風の音すら、すっと遠のいていく、染まっていく川、水の音、色の動きが、頭の中に自然と浮かぶような感覚が訪れる。


 そして、朗詠が終わったとき、誰一人として拍手ができないほど、場が静まりかえっている。すると、誰かがぽつりと、


「、、、まるで、あの時代の風景が、ここにあったようだった、、、」と、


 それ以上、誰も、言葉をだすことは、できなかった。


 すると、ソフィア、深く頭を下げて、小さく一言、


「このしるし、しかと受けとめ候。深く、ありがたく存じ上げます。」


 その言葉こそ、歌人へと、その礼をつくして、その感情の揺らぎを残すものであった。


 しかしながら、この和歌を選び、発動させたのは、「六歌仙」側の意志であり、ソフィアの中にある「澄んだ心」「世界を言葉で染める力」が、本物であることを確認し、今この時代に、和歌の再生を果たす「かた」として、静かに、けれど、確かに、人々の記憶に刻まれる演出がなされたのであった。つまり、これは、ただの詠み披露ではなく、和歌の力を信じている者たちが、再び時を動かそうとした「最初の一手」だったのである。


 こうして、ただ、伝承者として認められただけではなく、長い時を経て、積極的に、その使命を与えられて、今ここに、今回、活動を開始したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ