5-15 映画「少女歌人の恋」15
和歌は、ただの詩ではなく、「言霊」として、世界を揺るがす霊的な力を持つと信じられていた。その力を濫用せず、純粋に“言葉を救い、未来を繋ぐ者”に受け継がせるため、選ばれし者の出現を待っていた。
我らは、和歌を未来永劫伝えていくための、それに相応しい人物を探しだすために、この書物をしたためて、亡くなった。それは、和歌が、将来的に、未来の世界に、この奇跡の言語を持って、新たな時代の流れを生み出してほしいという願いのものであり、それは、一般的な流れとは違って、秘密裡に行なわれて、やがて広まっていくだろう。
そして、その流れを秘密の流れとして、「秘流」といい、和歌の理解力、詠み上げるための高度な知識と技術力を備えた者に、我々六歌仙の伝承者として、そのまま「秘流」という伝承者としての名を与えることとする。伝承者として認められた者は、我らの力により、さらに、未知の力を得ることができるだろう。
しかしながら、この「六歌仙」とは、我々が没したのちに、付いた名であるが、その後の時代において、この名が、和歌や我々を広く知らしめるためのものであることを考慮し、そのまま、その呼び名を認め、使用するものとする、と締めくくってあった。
そして、さらに、最後にある一文。それは、和歌が、一首、書かれていた。それは、
「詞もて 秘なる流を 継ぐ者に 歌ぞ導く 未来のとばり」
この言葉の意味は、
言葉をもって、隠された流れ(秘流)を受け継ぐ者として、歌こそが、未来という帳(とばり=幕)を導いてゆく。
この歌を、ソフィアが自らの声で、詠み上げた瞬間――書に刻まれていた、伝承者とある、その下の空白の欄に、
秘流 ソフィア オートマティック
と、赤い文字で浮かび上がり、書の題名も、ぱらりと一枚めくれるようにして変化する。その書は、まるで生きているかのように、ゆっくりと光を放ち、書き換わる。
「秘流伝承ノ書」から、「秘流伝承ノ証」へと変化した。
ソフィア・オートマティックは、たった今、「六歌仙」の6人により認められた、和歌の歌人の伝承者「秘流」となったのである。
すると、ソフィアは、同時に、脳裏に浮かび、「秘流」という伝承者としての名と、その名の力を授かったことを知った。
だが、その後は、全く何の変化もなく、言語学者と女優の2本立てで、仕事をこなしていき、趣味レベルで、和歌の研究をする毎日を送っていた。
しかし、ある日、言語学者の知り合いから、和歌の研究家たちが集まる会があるので、ソフィアにぜひきてほしいと、声をかけられた。
それまで、ソフィアは、和歌について、他人と話しをしたり、和歌について関わることは、一度もなかったのだが、それは、自分1人で行なうことを常としていたからであった。
だが、今回は、なぜか珍しく、人とも、和歌について、語り合いたいと思って、参加を決めた。




