5- 10 映画「少女歌人の恋」10
その後、彼女は、和歌に関する仕事を、何よりも優先しており、これまでも、著名な歌人の和歌の詠み上げを、請け負ったことがあったが、その表現力は、圧倒的であり、その詠み上げは、聞くだけで、感動して涙を流すほどであった。
つまり、今回の、少女歌人が主人公の、この映画にとって、ソフィア以上の適任者はいなかったのである。というよりも、この映画のシナリオは、大門監督の夫である、脚本家である大門肇により、もともとソフィア主演のイメージで書かれたものであった。
いよいよ、映画「少女歌人の恋」がクランクインとなり、とりあえず、町娘、小野 柚の初登場シーンである。正面から、こちらに向かって、周りにある店の人たちに、声をかけながら、歩いてくる。
だが、そこで、
「カット!!」
大門監督は、すぐに、カメラとともに、ソフィアを止まらせた。
きょとんとするソフィアは、監督のもとに駆け寄ると、なぜ止めたのかを聞こうとするが早いか、監督からの一言が!
「あなた、ちょっと待って!ソフィア?あなた、ソフィアよね!」
ええ!あまりの、予想外の一言に、驚くソフィアだったが、その言葉に驚くスタッフたち。実は、スタッフたちも、本当は、監督と同じ気持ちであったが、そのまま、特に気にしないようにしていた。
それは、なぜなのかというと、その町娘を演じているソフィアは、まさに、日本人の町娘にしか見えなかったからなのであった。
さっきまでの、フランス人とのハーフという印象が全く消されていて、そこには、普通に、時代劇の町中にいる、素朴で純朴な町娘が、そこに、ただいるだけであった。
そして、さっと、元のソフィア・オートマティックに戻った彼女は、そのままハーフのイメージが同居している姿であった。つまり、たった今、町娘を演じていたその時は、その演技力で、フランス人感を消して、日本人の町娘になりきっていたのである。今、ソフィア・オートマティック本人に戻った彼女をみて、監督は、その演技力にあらためて、言葉を失ったのであった。
これは、すごすぎる。まさか、その演技力で、その雰囲気を変えて、ここまで、全くの日本人になってしまうなんて、とんでもない演技力よ。この子ったら、和歌の才能だけではない。女優としても、うわさ以上だわ。
ソフィアは、ただ和歌の詠みが特出してすごいというだけではなくて、その驚異的な演技力にも改めて驚かされたのであった。




