5-4 映画 「少女歌人の恋」 ④
すると、いよいよ、1番より、番号と名前が告げられた。
舞台上にある椅子は、やや審査員の方を向いているが、残り99人全員の視線が突き刺さってくる中、この作品に対する意気込みや思いなど、これだけの視線の中、緊張しても上がらずに対応するだけでも、かなり困難を極めて、自分の持ち味をアピールなどとんでもないことであった。
それに、最後に要求された演技だが、それは、この作品でもっとも重要な和歌の詠み上げであった。だが、これは、参加者たちは、すでに作品の趣旨から予想しており、多くの参加者たちが練習済みであった。そして、麗子も、同様に、練習済みであったが、実は、これが、大きな落とし穴であった。
その指定された和歌は、初見のものばかりで、間違えずに詠み上げるのが、やっとであった。
中には、感情を込めて、見事に詠み上げる人もいたが、それは、すでに、プロとして活躍している俳優たちであり、参加者たちの明暗はかなり分かれていたようであった。
そして、いよいよ、参加者の最後の1人。それは、あのハーフにみえた少女であった。
「それでは、ナンバー100番 ソフィア・オートマティックさん、舞台へどうぞ。」
すると、彼女の周りの席の人たちからは、様々な反応が起こり始めた。
ハーフで、時代劇に出るなんて、何を考えてるのかしらとか。でも、あの人、どこかで見たことあるわ、など、その感じ方など、様々であり、たしかに、彼女に見覚えのある人も、中にはいたようであった。
舞台上では、大門監督から、いくつか質問があり、無難に答えているソフィア。
ひと通り質問も終わって、最後に、演技の課題に移り、これまでの参加者と同じく、その課題は、和歌の詠み上げであった。
ソフィアは、目の前にある箱に手を入れると、一枚の紙を取り出した。参加者たちは、この箱に入っている紙を取り出して、そこには、たくさんの和歌がランダムに書いてあり、ソフィアも、一枚の紙に書いてある和歌を確認した。そして、おもむろに、詠もうとした、その時であった。
大門監督から、発言があった。
「ちょっと待って、ソフィアさん、その和歌の詠み上げ、秘流というのを、お願いできるかしら。」
それを聞いて、驚く、夫の大門肇。




