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2-8 謎の美少女 麗華⑧

 その後、ホテルへ麗子を迎えに行ったマネージャーは、もちろん、麗子の体調を気にしたが、その一方で、あの麗子の代わりをした少女のことが頭から離れなかった。


ホテルに着くと、麗子は、完全回復していて、笑顔で、マネージャーを迎えた。


「今日は、ごめんなさい。でも、もう大丈夫よ。撮影はどうだった?あの子は、大丈夫だった?」


すると、マネージャーは、

「ああ、あの子ね。現場ではあなたのふりが、本当に上手くて、誰も気づかなかったのよ。それに、撮影は、なんだか、とてもスムーズに進んでね。重要なシーンは、ほとんど撮り終えたから、あと数回で終わると思うわ。」

「そう。それなら、よかったわ。それにしても、あの子、いったい、何なのかしら。」


麗子も、あの2人が、再び秘技を仕掛けてくるかが心配で、それだけが、気になっていた。すると、麗子は、

「万根田さん、現場はどうだった?女優同士は、トラブルとかはなかった?」

「えっ、、ああ、大丈夫よ。何も問題なかったわ。それどころか、緑川あやめと、吹雪ふぶきすずめの2人は、なんだかわからないけど、とてもいい人になっててね。そのせいもあって、撮影がスムーズに進んだのよ。」

「そう、そんなことがあったの。なんで、そんなことになったのかしら。もしかしたら、何か企んでいるかもしれないわ。でも、今日は、無事に終わったなら、とりあえず、よかったわ。」


 そして、その2日後、撮影は、最終日を迎えていた。最後のシーンをいくつか撮り終えると、


「これで、全員、終了となります。ありがとうございました。」


 監督から、声がかかり、麗子と、あやめ、すずめに駆け寄る監督。


「3人ともお疲れ様でした。作品は、とても、いい出来だったと思う。まさか、君たち3人と一緒に仕事ができたなんて、今後は、こんな機会はなかなかないだろうな。」


 その日の撮影も、マネージャーの万根田まねだから聞いていた通り、あやめとすずめの態度は、とても好意的で、撮影にも真摯に取り組んでいた。しかし、それが、麗子には、あまりにも意外すぎて、クランクアップしてから、思わず、2人に声をかけた。


「あやめ、すずめ、お疲れ様でした。」


2人は、ふりむいて、笑顔で返してきた。

「あら、麗子こそ、お疲れ様。無事に、終わったわね。本当にお世話になったわ。色々とありがとう。」


 なんという、優しさにあふれている返しなの!!本当に、これが、あの2人なの!信じられない!!


「あ、ああ、2人とも、よかったわよ。こんなにスムーズに撮影が進むなんて、珍しいわ。さすがに、2人とも、奇才塾での上達したのが生かされていたわね。」


すると、2人とも、少し、その表情を曇らせて、


「麗子、ごめんなさい。私たち、もう主技、じゃなかった、百合さんのことは、もう忘れたいのよ。たしかに、ここまでこれたのは、星影百合ほしかげゆりさんのお陰なんだけど、こっちにきてから、昨日までの私たちは、本当に間違っていたわ。それも、百合さんのせいだとわかったのよ。これからは、奇才塾との縁を切って、きちんと女優としてやっていくわ。昨日、2人で、そう話したの。麗子にも、迷惑かけたわね。本当に、ごめんなさい。」


 あまりにも、予想外の言葉に、言葉が詰まってしまった麗子。


「あ、いいのよ、これからもよろしくね。」


 その後、映画「恋は、絶好調!」は、一般上映され、予想外に大ヒットとなって、土日はもちろん、観客であふれて、平日も学生が学校から帰ってから鑑賞していて、なかなかの伸びを見せていた。


 今回の撮影が、主役の変更などのことで撮影がおしていたこともあって、キャストやスタッフたちの試写会が中止になっていたので、麗子は、映画館に初めて観に行った。


 その時が、初めて、その作品を通して観る時であった。一応、青春もののラブコメであるのだが、これが意外にストーリー展開が面白く、先が読めないストーリー。急な展開があるかと思うと、いきなりどんでん返し的な展開かと思うと、ちょっとサスペンス的な要素も加わったりして、それでいて、ちょっとホロリと涙するシーンもあり、これは、なかなか見応えがある作品になっていて、ヒットするのもうなずける。


 麗子は、やはり、台本を読んでいるとはいえ、撮影の順番は、ランダムであったり、あの少女が代わりにでて、自分のでないシーンは観ていないので、完成された映画がどんな映画なのかは、今ひとつわかっていなかったのである。


 しかし、いざ、完成した作品を鑑賞してみると、あの少女が代理で出てくれたシーンが、麗子に与えた衝撃は、あまりにもすごかった。


 そのスクリーンで観た、自分の代わりの演技が、信じられないほど素晴らしい。正直言って、この作品の、あの少女が出てくれたシーンは、どれほどのレベルでこなしてくれたのかと思っていたのだが、無難にこなすなどとは、とんでもない。あの少女の演技は、自分が自ら演じたシーンを、遥かに超えていて、自分のシーンは、レベルが低いと錯覚してしまいそうだった。


 そして、ほとんどの際立ったシーンは、あの少女が演じていた。しかし、これでは、いかにも、自分がこの作品では、最高の演技をしていた、という印象でしかない。それも、自分以外の人間が代わりに演じている感覚が、全く感じられず、麗子らしさの演技を残しつつ、レベルを上げるという、信じられないことが起こっていた。そして、最後まで、鑑賞し終わると、会場は拍手喝采で、麗子も思わず拍手していた。とても楽しめた満足感に浸っていた。


 そして、半年後、麗子は、この「恋は、絶好調!」において、なんと、アオデミー賞の主演女優賞を獲ったのであった。


 その時、麗子とマネージャーの万根田まねだは、喜びの表情で、授賞式に臨んだのだが、実は、それは本心ではなかった。やはり、この賞は、あの少女のもので、自分たちが受賞したとは、とても思えなかったのである。


 かつて、あの奇才塾にて、5年間学んできた、濃厚にして高度な指導を受けて、その実力を積んできた麗子は、かなりの実力を身につけてきたと思っていたのだが、正直ここまで、今の自分を簡単に上回れる存在がいるなんて、あまりにもショックなのであった。


 だが、あの当時は、あれが最高峰の指導であったことを、あらためて再確認していた麗子は、自分たちが、未熟者なのではなくて、あの謎の少女が特別にすごかったのではないかと、それをあらためて感じるのであった。

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