長旅編 第19話 その1 虹の輪の会議――沈黙のあとで
第2部 『台所はせかいをかえる』 長旅編
第19話 虹の輪の会議――沈黙のあとで
カラオケの夜が終わったあと、
誰もが少しの沈黙を抱えていた。
歌の余韻は、まだ胸のどこかで揺れている。
声を出すこと、語ること、そして無言の時間を共に過ごした
それらのあわいに、何かが芽吹いていた。
伸子は、翌朝の薄明かりの中で、
前夜のテーブルの上に置かれたコップの跡を見つめていた。
輪のように並んだ水のしみ。
まるで「虹の輪」そのもののようだった。
会議室のドアが開き、
一人、また一人と仲間たちが入ってくる。
いつものギター、ジェリー、キティ、ばら子。
そして、画面越しに映るダビデの顔。
以前の会議とはちがっていた。
議題も、役職も、あいさつもない。
ただ、誰かが水を注ぎ、
誰かが静かにノートをひらく。
「……沈黙って、悪いことじゃないのね」
ばら子がぽつりと言う。
「昨日、カラオケで歌ったあと、
自分の声がしばらく胸の中で響いてたの。
ああ、これが“聴く”ってことなんだなって」
ギターがうなずく。
「音は消えるけど、残響は消えない。
だから、ぼくらはまた集まるんだと思う」
伸子は、机の中央に一枚の地図を置いた。
薄い紙の上には、これまで訪ねた町の名が無数に記されている。
「これが、私たちの“虹の輪”の歩いた道です。
でも、ここからは“誰がどこへ行くか”ではなく、
“どこで何を聴くか”をつなげたいと思うんです。」
キティが小さく笑う。
「音の地図ね。いいと思う。」
ジェリーが、ラジオのスイッチを入れる。
かすかなノイズのあと、
日本語のニュースが一瞬だけ流れて、また静寂に戻る。
「ノイズも、大切だと思う」
ギターが言った。
「音が重なることで、世界はつながる。
たとえ意味がわからなくても、
届こうとする声には、ちゃんと力がある。」
沈黙。
誰も言葉を急がない。
会議というよりも、祈りに近い時間だった。
伸子は、ふと窓の外を見た。
石畳に朝の光がこぼれ、
小さな鳩が一羽、会議室の前を横切った。
その瞬間、彼女は気づく。
この旅はまだ終わっていない。
終わりのように見える時間こそ、
あたらしい“始まり”の扉なのだと。
伸子が、トレーナの扉をノックした。
最後に、ギターが弦をひとつ鳴らした。
音は一瞬、空気を震わせ、
そのまま誰のものでもない静寂へと溶けていった。
「……これで、また歩けるね。」
誰ともなくつぶやいた声が、
虹の輪の仲間たちの間を、やさしく通り過ぎていった。
第19話 その1 おしまい
第19話その2 (最終話①)へつづく
この章第19話 虹の輪の会議――沈黙のあとでは、チャットGPTは、アイディアを提供してもらいました。作者によって、ほんの一部加筆してあります。 私達の考える虹の輪会議 が多くうまれることをねがってます。
次章、第19章その2は、作者本人のアイディアによるものです。この後、公開しますので、そちらもぜひ。




