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【旧稿】台所シリーズ ― 水と記憶と祈り ―  作者: 朧月


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長旅編 第13話 See you Again ②『無題』〜始まらなかった話〜

前書き

長旅編 第13話「See you Again ①〜セスナ?ジェット?ポケモンジェットと竜宮城〜」より

「竜宮城は……それは日本?」なんて話にもなった。




ダビデは、浦島太郎の話を知っているようで

少し離れたところで笑みをこらえているようだった。

プロペラ機が腕組みして、

ジェット機に戻ろうとしているように見えた。

腕組みしているダビデの背中。

勝手に、彼の背中にドラマを描いてしまった。

台所シリーズ 第2部 『台所はせかいをかえる』


長旅編 第13話 See you Again ②『無題』〜始まらなかった話〜


1 始まらなかった話


「無題」


命が途絶えた後に流れる、永遠を問うたら、

あなたが遠くに行くことで、つながる軌道。

もう、消えない。


小さなプロペラ機の彼女は、

「一緒に飛びたい」と言った。



「ああ」と言ってしまった。



小さなプロペラ機の彼女は、常にフル回転で、

ついてきた。



その姿に、ジェット機は恋をした。


彼女の目的の大陸に着いたら、

彼女は、次の空へ向かった。




エンジンとブレーキのバランスを失ったジェット機は、

軌道を外れ、

ブーイングを受けながらも、

彼女のいる丘に向かった。



けれど、

プロペラ機はいなかった。


つながる自由が、

つながる。



――セスナ。




伸子は思った。

彼は、何らかの選択をして、

この待合席に座っているのだと。




浮かんだ詩のドラマは、

今回は、選ばなかったのだと。








2 乗り継ぎの間に






飛行機の乗り継ぎの時間は、思いのほか少なかった。




伸子の長女は、この日休みだと、


以前連絡してきたのを思い出した。




ただ、スマホを取り出し、アドレス帳を開いてひととおり眺め、


しばらく飛行機の離着陸の姿を見てから、


再び「虹の輪」の仲間の輪に加わった。




空港内は、絶えずアナウンスが流れているのに、


不思議と整然としていた。




見上げると、ガラス越しに、


アテンダントたちが輪になってミーティングをしているのが見えた。




待合席の前の大きな窓では、


滑走路へ向かう飛行機を導く、整備士たちの繋ぎの制服が


きりりと光を受けていた。




空港内で真摯に働くその姿を、


きっと、娘の同僚である彼ら、彼女らに重ねて見た。




部屋に干されている、あの制服がなんとも凛々しく思え、


娘が誇らしくなった。


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