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【旧稿】台所シリーズ ― 水と記憶と祈り ―  作者: 朧月


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長旅編 第7話 ① 横浜バラ園 

まえがき


台所シリーズ 第2部 『台所はせかいをかえる』 長旅編 第7話 ① 横浜バラ園


第2部は、第1部で語ることのできなかった伸子の旅の回想録です。


大阪で集った「虹の輪」は、まだ始動したばかり。

材料は揃っているのに、どんな料理になるのかわからない――そんな状態にも似ています。


たどたどしいけれど、いとおしい65歳の伸子。

異国の人々に囲まれて、彼女の前には何が待ち受けているのでしょうか。


この物語は、どこから、どの順番で読んでも楽しめるように構成しています。


どうぞ、台所シリーズの世界へ。



本文

第7話 横浜バラ園


のぶこはさくらよ


横浜での「虹の輪」の研修が始まった。

最初の顔合わせは、またカラオケハウスだった。


伸子は、ジェリーがアルバイト店員とやけに仲がいいのが気になった。


「また、お願いしますね」

「はは、いつもありがとう」


思わず伸子は口を開いた。

「私は、さくら?」


それを聞いた異国人が、即興で歌を歌った。

その瞬間から、伸子はしばらく「さくらさん」と呼ばれることになった。


Sakura Sakura


さくら さくら      さくら さくら

やよいの空は       のぶこはさくらよ

みわたす限り       みわたすかぎり

かすみか雲か        かすみかくもか

朝日ににおう        あさひににおう

さくら さくら       のぶこはさくら

花ざかり          はなざかり


さくら のぶこ

野山も里も

見わたす限り

かすみか雲か

においぞ出ずる

いざや いざや

見にゆかん


見わたす限り

かすみか雲か

においぞ出ずる

いざや いざや

見にゆかん


指先がリズムを刻むたび、手にしたポテトが軽やかに揺れ、

マイクを握る手も自然に上下に動く。


だれかのスプーンが微かにリズムを立て、

まるで歌声に呼応するかのようだった。


その場にいた誰もが、即興の演奏者の一員になった。


伸子は少し照れくさかった。

でも、悪い気はしなかった。



後書き


読んでくださり、ありがとうございます。


いよいよ、あすは研修本番(第7話 ②)。

伸子自身も、まだ概要はわからない。


ダビデとの劇的な出会い(第2部 長旅編 第1〜第6話)から、

何かに押し流されるように、国際プロジェクトの一員へとなるのだろうか。


ちなみに、第1部『ただいま編』は、この旅が終わった後を描いています。

よろしければ、そちらものぞいてくださったら嬉しいです。

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