台所シリーズ 第1部「台所でせかいをかえる」ただいま編 今までのお話 第11話〜第20話
台所シリーズ 第1部「台所でせかいをかえる」ただいま編
今までのお話 第11話〜第20話
第11話 レシピの余白に咲く文字
あれから長旅中は音信不通だったけれど、ボールペンから始まった物語が、静かに胸に甦る。
蔦屋書房の駐車場で、二年前の秋のように別れた。
伸子は何も話さなかったけれど、その思いを胸に帰路につく。
第12話 旅のイントロ ① ウインカー
たん、たん、たん、たん……
ピアノの和音が、伸子の車のスピーカーから静かに流れ出す。
そろそろ、雪虫の季節。
この虫は飛ぶ力が弱く、風に乗ってふわふわと流される。
第13話 十月のある日曜日の朝〜スパイスの香りと凛との再会
「ばあばー!」
玄関を開けると、凛が笑顔いっぱいで両手を広げて駆け寄ってきた。
の後ろには、娘の未希が「おかえり」と言いながらゆっくり家に入ってくる。
第14話 静けさのアイス
煙突に向かって息を吹き込むように、部屋がじわりと暖かくなっていく。
「ストーブさん、生き物みたいだね。」
第15話 アイスの最後の一口
最後のアイスの一口は、すでに溶けていた。
伸子は、溶けかけたアイスの残りを、引き出しの奥にずっと紛れていた、子供用の小さなシルバーのスプーンですくった。
やわらかくて、少し甘くて、あたたかいものの味がした。
第16話 ザ・シークレットアイス ― おとうさんがくれた地図
もし『ザ・シークレット』の著者がこの話を聞いたなら。
響香がこの本と出会い、信じ、そして実際に願いを叶えた――
その一部始終は、世界中の自己啓発運動のなかでも、きっと象徴的な出来事になるに違いない。
そんなふうに、伸子は思った。
第17話 手放さなければならないシークレットアイス
長い間のあとに、響香はつづけた。
「そしたら、瞬く間に叶っちゃって。きづいたら、明け方。
その声には、ほっとしたような、それでもどこか悲しげな感情が混じっていた。
「でも……それを手放すのって、とっても、つらすぎるの。」
第18話 (シークレットアイス Ver.2
印籠 は、ぎりぎりの5分前。
心の旅はまた来週へとづづく。
第20話 スマホの夜会(第二夜)
「もっと、お父さんの話を聞かせて、じゅういさん。」
それは、9.11の衝撃的なテレビ映像のことだった。
天井をしばらく見つめたあと、父はゆっくりと私のほうに視線を戻して言った。
「腕時計を……みつくろってきてくれないか。
日付のわかる、デジタルのやつを……。」
現実の日付を、確かめたかったのだと思う。
枕元には、まだ封を切っていない真新しい携帯電話の箱が置かれていた。
父はそれに触れようとはしなかった。あとから思えば、あれは当時テレビで話題になっていた最新機種だった。




