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【旧稿】台所シリーズ ― 水と記憶と祈り ―  作者: 朧月


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台所シリーズ 第1部「台所でせかいをかえる」ただいま編 今までのお話 第1話〜第10話

台所シリーズ 第1部「台所でせかいをかえる」ただいま編 

今までのお話 第1話〜第10話


第1話 台所とトンネルを抜けると、雪国ではなかった。


朝の白さが、秋の青い空へとぬけていった。

道は、限りなく高い空へとのびていた。

この二年で、町には信号機がずいぶん増えた。

赤信号で停まったとき、赤い自転車がすっと目の前を通りすぎた。

見覚えのあるその自転車は、次第に小さくなり、やがて角をまがって見えなくなった。

――北海道北広島市に住む伸子は、つい先日、長旅から帰ってきたばかりだ。

その旅の疲れを感じさせることもなく、再び慌ただしい日常へと戻っている。


第2話 次女、未希の物語 『しまえながちゃんときゅんちゃんによる水の話』


「聞いたわ。お母さん、長旅から戻られたって。わたしのことは大丈夫よ。

せっかく北広島まで来たんだから、凛ちゃんと二人で、お母さんの顔を見に行ってらっしゃいな。」

未希は、伸子の家の方をそっと見やり、凛の手をやさしく引きながら言った。

「きっと、父と母の、水入らずの時間もいいはずだから。」

「凛、寿司太郎のお寿司、買いに行こうか?」

凛は、春江と未希の顔を交互に見て、にっこり笑った。

「水、いるよ。……みずは、いるよ。」

お気に入りのかばんを、小さく揺らしながら、足元を見つめて言った。


第3話 栗丘の丘から 〜静けさと再会のあいだで


カーテンも閉めず、電気もつけない北広島と岩見沢の部屋。

闇の中で響いていたのは、66歳と57歳の少女の声だけだった。

それでも、響香の部屋に誰かが入った気配をスマホが拾い、冷蔵庫を開ける音や食器を動かす音が遠くに聞こえてきた。

「あー何時間あっても話しきれないね。また電話するね。」

長年の決まり文句で電話は終わった。


第4話 エスコンフィールドの手前で ~世界で一番すてきなところ


エスコンフィールドの、まだ見ぬ庭。

本当なら、伸子はそこでガーデンボランティアをするはずだった。

遠い旅先から、画面越しにではあるけれど、ずっと見守ってきたその庭。

響香に旅のことを伝えることもなく、太平洋も大西洋も、静かに越えてきた。

まちの誰よりも早く、響香と歩いて案内したかった、その庭のすぐそばを今日もまた通りすぎる。

けれど、足はそこに向かわない。


第5話 水仙のつぼみ〜心の庭に咲くまで


風に揺れていると、つぼみも葉っぱのふりをしているように見える。

「まだだよ、まだ咲かないよ」って。

その形もその色も、――まるで、身を守ってるみたい。

だからこそ、花が開くときのふいの明るさが、たまらなく美しい。

それがまだ「ない」ことで、咲いていた二、三輪の水仙の花さえ、まぶしすぎた。

響香は、空を見上げた。

季節はまた巡っている。

――2023年の春、その日、水仙の写真は、結局だれにも見せなかった。


第6話 ポンポネッラと慣れないスマホ


実家からLINEが届く。

「例の、謎の……」

添えられていたのは、幼い子どもの書いた、たどたどしいひらがな。

その下にミミズ、芋虫、そして長いしっぽの虫。

何段にもわたって列をなし、ずるずる、もぞもぞ……と。

延々と続く虫の行進。

最後には、アルファベットの筆記体。


第7話 2枚目の謎のメモ~きょうかへ㊙kyokaの手紙


「子供が書いた手紙?」

よく見ると、たどたどしいひらがなで「きょうかへ㊙kyoka」と読める。

さらにボールペンで書かれた文字――「アラビア語かしら?」

そして筆記体の英語のサイン。

最後には、はっきりと数字が記されている。

「1978 11 07」

「……何かしら、これ?」


第8話 ふたりの幹事会〜秋の本屋で再会 おかえり


「元気そうで、よかった。」

伸子は、思わず「わっ」と小さく声をあげた。

そして――

大きな心の声を胸にだけ響かせる、小さな声の、優しい

「お・か・え・り」


ふたりはベンチを立ち上がり、静かに伸子の車へと歩き始める。

響香は、一瞬足をとめてふりかえる。

「べらぼうベンチ」


第9話 メモリー~五年のトンネルを越えて


わたしたちは、看板の先の階段を、ゆっくり――あがる。

五年のトンネルを越えたその先で、初めて感じる光。

秋の、駆け込み乗車。

それは、時をとめた。

過去も未来もその一瞬の輝きに閉じ込めたようだった。


第10話 虫たちの行列の正体〜きょうか ㊙ 1972 11 7:


流れる文字は、生き物のように四角い枠の中を泳いでいた。

──まるで、虫たちの行列。

「虫たちの行列……? 象形文字?」

「翻訳してみる?」

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