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ただいま編 第29話 クリスマスがおわらない
台所シリーズ 第1部 「台所でせかいをかえる」ただいま編
第29話 クリスマスがおわらない
ぴぴぴぴぴ。
腕時計が鳴る。深夜0時。
「イブの日が終わった。」
そう思って、そっと目を閉じた。
── 小田さんの夜。
日本語って、なんて美しいのだろう。
冬から春に変わる少し前、
氷がとける直前の季節。
「このまま冬にいたい」と思う春。
凍えてもかまわない。
手放したくない冬。
でも、春はかならず来る。
季節はページをめくるように進んでいく。
そう思いながら、クリスマスが過ぎていった。
翌朝、インスタに小田和正の歌が上がっていた。
まだ、クリスマス。
言い訳をつくって、箱を開けるのをやめた。
次の日も、小田さんの曲で始まった。
いいねをつけて、今日もクリスマス。
元旦になっても、
クリスマスの日々は続いていた。
リボンのかかった箱は、
部屋のインテリアみたいになっていた。
「この箱、なに?」
哲郎がそう聞いたのも、忘れてしまったみたいに。
箱は、いつもリビングの写真の前に置かれていた。
クリスマスは終わらず、
正月が一緒にやってきた。




