ただいま編 第23話 秘密基地のその後
台所で、は、が、世界をかえる
ただいま編 第23話 秘密基地のその後
北国・さっぱり市の街に、秋風が一段と冷たくなったころ。
児童館「めだか」の秘密基地は、新しい局面を迎えていた。
春江は、最近「ペッパーさん」「警部」と呼ばれることが増えていた。
親子同時参加のカラオケ大会で、ピンクレディーの「ペッパー警部」を歌った時、
彼女が披露した両手をピタッと合わせる振りつけに、子どもたちは大喜び。
それ以来、春江はちょっとした人気者になった。
秘密基地は、合言葉を知らない子たちが近づくたび、言い合いが起き、
ときには壁を壊されることもあった。
それでも凛たちのゾーンBは、何度も作り直され、
壊れては復活し、少しずつ強くなっていった。
「札っぱり(さっぱり)ドーム 道民カラオケ大会をやろう!」
凛たちは本気で計画していた。
しかし、中学生のなかいくんが突然来なくなり、
その夢は秋風にさらわれる落ち葉のように遠ざかっていった。
三度目の秘密基地が完成したころには、
他校の子どもたちも遊びに来るようになった。
スマホを持つ子と持たない子の間で合言葉が伝わらず、
大人の仲介で「スマホは禁止」という新しいルールが加わった。
ある日、祥也くんが赤い首輪の黒柴「くろ」を連れてきた。
「犬はだめかな?」
「ダメよ。」
「じゃあ、外にも秘密基地を作ろう。」
秋風の中、SMAPりんチームはめげずに作業を続けた。
祥也くんのおじいちゃんが軽トラで運んできた木の棒と、
牛乳パックを組み合わせ、基地は外へと広がっていく。
子どもたちは「道産 牛乳パック募集」のチラシを作り、
柴犬くろの写真を添えて街じゅうに配った。
小さな遊びの熱は、街全体を巻き込む冒険になっていった。
そんなある日、凛は2週間ぶり「めだか」秘密基地にいった。
すると、大切にしていた布が
二つに裂けているのを見つけた。
夕方の光に照らされ、裂け目がひらひらと揺れる。
指先で裂け目をなぞると、しゃりっと小さな音がして、胸がきゅっと締めつけられた。
胸がぎゅっと痛くなり、泣きそうになるのをこらえて、
凛はその布をそっと抱えて家へ帰った。
その日は母・未希がお休みだった。
「凛、どうしたの?」
「おばちゃんのところに行きたい。」
伸子の家に着くと、伸子は驚きつつも笑顔で迎えた。
「あら、来るのは明日ではなかったの?でもうれしわ。」
「今日は一緒に寝ましょう。」
夜がふけると、伸子はむかし、むかし、とお話を語りはじめた。
切ない記憶と今の凛の気持ちが静かに重なり、
物語はふんわりとした温かさの中で進んでいった。
後書き
最後まで読んでくださりありがとうございます。
「めだかの学校」のお話は、ひとまずここで一区切りですが、
まだまだ続きがあります。
別シリーズ「めだかの学校」にも、よかったら遊びに来てくださいね。
もちろんこの「台所でせかいをかえる」も、まだまだ続きます。よろしくお願いします。




