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【旧稿】台所シリーズ ― 水と記憶と祈り ―  作者: 朧月


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ただいま編 第22話 「めだか」の秘密基地

台所でせかいをかえる」第22話。6歳の凛の物語。

舞台は、児童館「めだか」。凛は、伸子の旅先から送られてくるお菓子の箱で、世界をつくっていた――それは、秘密基地。

あかねちゃんの牛乳パックも加わって、凛のだいどころもできた。

―身近なものが魔法の素材に変わる場所。


凛の手で日常が冒険に変わる


第22話 「めだか」の秘密基地 (凛の物語)


♪めだかの学校は川の中

そーっとのぞいてみてごらん

みんなでお遊戯しているよ♪


児童館「めだか」。

伸子の孫、凛が時折訪れる場所だ。


秘密基地ができたのは、ほんの成り行きだった。

最初は、ゲームをこっそりやるための小さな隠れ家。

きっかけをつくったのは、ほかならぬ厳島哲郎。

ーでも最近は、姿を見せない。


凛は工作がしたくて、春江と一緒に「めだか」にやってきた。

きっかけは、旅先から伸子が送ってくれたお菓子の箱。

海外から届いたその箱は、捨てるにはもったいない。

凛は思わずつぶやいた。

「何か素敵なものが作れるかも」


そのとき、ちょうど来ていた子どもたちが言った。


「それ、秘密基地にぴったりじゃない?」

「『めだか』の中に、特別な場所をつくろうよ!」


常連の子たちは、ゲーム空間がほしかった。

でも、凛たちは単に基地作りに夢中だった。

けんちゃん、そして一つ年上のあかねちゃん。

三人は「プロジェクト・凛」を立ち上げることにした。。


基地にはリビング、台所、三人それぞれの部屋もできた。

凛の部屋は、異国の香りが漂う不思議な空間。

おばあちゃんから届いた段ボールには、見慣れない外国の文字や大判の布が入っていた。


「これ、壁にしよう!」

凛のひらめきで、たちまちカラフルな空間ができあがる。


けんちゃんは日本の箱を集める係。

近所や児童館のスタッフまで巻き込み、素材を集める。

あかねちゃんは牛乳パック集めに夢中。

一リットルパックをメーカーごとに分け、詰め物をして積み上げる。

詰め物はジブロックにいれた、うがいコップ2杯分の水。

その整然としたさまはドイツの街並みを思い起こさせる。


「これなら、しっかりした壁になるね!」

牛乳パックは積木のように整列し、色味のパターンまで設計される。

ただの廃材ではなく、誇り高き建築素材となった。

ひんやりした重みが箱の底におさまると、それはもう単なる箱ではなく、未来の街の一部となる。


秘密基地には“合言葉”があった。

「ひらけぽんぽっきー」

「おどるポンポコリン」

「ひょっこりひょうたんじま」

知っている子だけが入れる、特別なルールだ。


噂はすぐに広まり、基地は大人気になった。

三人は新しい仲間を迎え、にぎやかになっていく。



やがて秘密基地は「おままごと」から「未来の街」づくりへと進化した。

男の子も女の子も関係なく、オフィスやカフェ、薬局――ごっこ遊びの中で街を建設していく。


オフィスでは、パソコンを使ってテレワークのまねごと。

画面越しに会議をしたり、画像書類を共有。

「次のテレワークの時間です!」

「はい、画面共有しまーす!」

たいやきの中で笑うけんちゃんの画像。


カフェでは、タブレットで「注文」をやり取りし、ピザやパフェのやり取りに笑い声が絶えない。

薬局では、棚に並べた箱やおもちゃの薬を手渡しながら、接客の練習も欠かさない。


上級生が持ち込んだドローンは、街の「配達係」として空を舞う。

荷物を運ぶたびに小さな歓声があがり、子どもたちは忙しくも楽しそうに働く。


さらに、ソーラーカーを作るチームが現れた。太陽光で走るミニカーは、道路に見立てた床の上を滑るように進む。

アミューズメント会社の計画も進行中。

滑り台やアーチ型のゲートを組み合わせ、あらたな街の構造を生み出す。


そして、ついには「ドームカラオケ大会」の構想まで生まれた。


発案者は、凛とあかねちゃん。

きっかけは、昭和のスターたちへのおばあちゃんの思い出だった。

「札幌ドームで道民運動会があるなら、カラオケ大会もあっていいよね!」

大会はエントリー制で、当日の観客投票で歌う人が決まる。

おばあちゃんの好きな歌が会場中に響く日を、凛とあかねちゃんは夢見る。


こうして秘密基地は、子どもたちの小さな台所のような創造空間になった。


その小さな発見と遊び心が、今、凛たちの未来都市で生きているようだった。




凛たちの秘密基地の扉を開けると、想像と遊びが渦巻く小さな世界が待っている。

けれど、順風満帆とはいかない

――それもまた、リアルな冒険のひとつだ。

できることなら次回もみまもっていただけたら嬉しいです。

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