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予告 知覧編 32B
32B。
鹿児島空港から、北海道へ帰るために飛行機に乗った。
響香の席は32Aだった。
北海道へ帰る飛行機。32Aの席に座った響香は、ふと隣を見る。
隣には、見知らぬ男性が座っている。
たぶん、ビジネスマン。離陸前から本を読んでいる。
――ライト兄弟が、人類で初めて空を飛んだのは1903年。
そこから技術は目まぐるしく進歩して、1960年には鹿児島―羽田間の定期便が開通した。
飛行機は、特別な乗り物から、いつしか日常の一部になっていた。
1973年と74年。
響香は父と一緒に飛行機に乗り、知覧へ向かった。
機内からみた雲の形。
到着してから参加した
忘れることのない知覧の盆踊り大会。
なぜだろう、あの夏の日々は今も鮮やかに思い出せる。
幼い心に、強く焼きついていたのだろう。
あの頃は、いつも父の隣に座っていた。
無表情で、特に何かを話すわけでもなかった父の横顔。
今でも、はっきりと覚えている。
……ちょうど今、隣に座るこの男性のように。
あの時、父は何を考えていたんだろう。




