第19話 ジェシカの視点
エグマリーヌ国、ヴェグ領――ラヴァル子爵の離れの屋敷。絢爛豪華というよりは質素かつ落ち着いた色合いの内装と、調度品が揃っている。本館に比べてだいぶランクが下がっていて、ベッドも硬いし、部屋も以前の半分の広さだ。
なにより食事の質は落ちるし、ドレスや宝石を新しく買うこともできない。
「ありえない、ありえない、ありえない!!」
ベッドの上にあるクッションを何度何度も殴りつけた。
何度も思い切り叩きつけたせいか羽毛がベッドに舞い鬱陶しい。やっと邪魔者が消えたのに、何も状況は進展しないどころか最悪だ。
「なんでミシェル様から返事が来ないのよ! あの女が死んだのに、何で結婚したことになっているの!? 意味分からない!」
途中までは全て彼の言うとおりだったのに、あと一歩で公爵夫人になれたはずだった。それは砂の城のように一瞬で崩れ去った。悪夢以外にでも何でもない!
「ああああああーーーー、腹立つ!!!」
もう一度力強くクッションを投げつけたところでノックの音が響いた。「ジェシカ」と声を上げたのは父だ。
「どうぞ」
投げやりに答えた。部屋に入ってきた父はどこかやつれて、精気が感じられないほど痩せこけている。服もよく見ればヨレヨレで違和感があったけれど、父は興奮気味に話し始めた。
「朗報だぞ、ジェシカ! エドワード王子の計らいにより、グルナ聖国の公爵家で聖女見習いとして働くことが決まったのだ!」
「え!」
「これでミシェル公爵に会うことができる。今度こそ、彼に取り入って公爵夫人となるのだぞ」
「お父様! ええ、わかったわ」
父の言葉に沈んでいた気持ちが浮上する。グルナ聖国! 一度は子爵令嬢として出向いたら門前払いされたけれど、精霊信仰の厚いあの国で聖女見習いという肩書きがあるなら好き放題できるわ!
ああ、今から楽しみだわ。今度こそ、ミシェル公爵を骨抜きにして、マリーのことを忘れさせてやるわ。マリーは死んだのだから、もう邪魔されないもの。
「ああ、すぐに参りますわ。ミシェル様!」
父の目が虚ろで服もヨレヨレなこともすぐに気にならなくなった。そんなことよりも何を着ていくか、髪型はどうするか、そのことばかりで頭がいっぱいだった。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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