第14話 きみはだれ?
なぜかだ分からないけれど、泣いている男の子から目が離せない。
「──っ」
「ねえ、大丈夫? どこか痛いの?」
スッと言葉が出て少年に声を掛けた。彼はビクッと震えつつも顔を上げた。インディゴの綺麗な瞳が大きく揺らいで私を見つめ返す。
「──ッ、繝槭Μ繝シ縲∽◆■°縺」縺滂シ√??螟「縺◇◆ェ縺?h縺ェ縲◆◇■?繝ェ繝シ?!?」
「え?」
少年は私の顔を見るなり、目に涙を浮かべて抱きついて来た。そのことに驚きはしたけれど、何よりも彼の声、いや言葉がわからない。
今、なんて言ったの?
聞いたことのない言語だ。何か必死に伝えようとしてくれているが、何を伝えたいのだろう。少年をよく見ると顔の左半分が黒い痣が浮かんでいて、とても痛そうだ。
「──ッ、繝槭Μ◇■繝シ?√??遘√′蛻?°繧峨↑縺??縺具シ!」
必死に何かを訴えかけているが、声は届くのに、何が言いたいのか全く分からない。
「もしかして痣が痛いの?」
「繝槭Μ■◇繝シ?√??遘√!?」
「ごめんね。君がなんて言っているのか、私には分からないの。何か私に言ってくれているんだよね?」
そう問いかけると男の子は絶望した顔で、またボロボロと涙を零す。ああ、泣いてほしくないのに、泣かせてしまった。そんなつもりはなかったのに。「泣かないで」と男の子を抱きしめて背中を摩ったけれど、さらに泣いてしまうので困ってしまう。
「私の名前はマリアンヌっていうの。大丈夫、その痣も痛いことも私が治してあげるわ。こう見えても薬草の調合は得意なの」
「──ッ繝槭Μ繝シ?√?◇■■?遘√!」
ギュッと私の服を握りしめた彼は、引っ付いたまま離れなかった。そんな彼がなんだか可愛くて、ほっとけなくて、不思議な気持ちになる。
もしかしたら過去の私もこんな風に婚約者のことを思い、薬や薬草の知識を増やしたのかもしれない。その記憶も、思い出せないけれど。でも胸の中で助けたいという気持ちが動いた。
「──、──」
服を引っ張って私の気を引こうとしたのか、彼の顔を覗き込む。インディゴの綺麗な瞳は何か覚悟を決めた顔で、私の唇に触れた。
「ふ、ふぇ!?」
「繝槭Μ繝シ?√■◇??遘」
何か宣言をした刹那、彼は外套と時に忽然と消えてしまった。羞恥心と驚きと──いろんな感情でぐちゃぐちゃになりそうだ。
「な、なな、なんだったの一体ーーー!?」
『春』
『青春ですな』
「なんで二人は分かっている風なの!?」
叫ぶ私に、ヴァイスとリュイは「よしよし」と、何故か撫でられた。いや慰められたような気がするのは何故だろう。よく分からないまま、その日から図書室に行くと男の子がいるようになった。
も、もしかしてあの男の子は精霊とか妖精の類い?
***
その男の子はいつも部屋の隅で蹲っていて、声を掛けないとずっと泣いているのだ。まるで繰り返すように泣き続けている姿を見ると胸が痛くなる。
「泣かないで、ね」
「──、──」
そう言って声をかけると、私を見つけることが出来たからか、安心して泣くことなくなった。私を離さないように手を繋ぐか抱きしめていないと、不安なのか泣いてしまう。まるで私が居なくなってしまうのを恐れているかのようだわ。それに目に涙を溜める姿は痛々しい……。
「──ッ」
「そんな泣き虫さんには、このハンカチを上げるので、泣き止んでね」
「繝槭Μ繝シ?√■◇??遘!!」
刺繍入りのハンカチを渡した途端、男の子は目をまん丸くした後、また泣き出した。逆効果かと思って焦ったけれど、この涙はうれし泣きみたい。
涙目なのは変わらないけれど、「えへへ」と笑っている。あ、なんか可愛い。
「この刺繍はね、あなたをイメージして見たのだけれど……」
インディゴをイメージした蒼月と銀の剣の刺繍を作ってみたのだ。泣き虫な彼のイメージとは違うのに、何故か不思議と月と剣が浮かぶのだから不思議だと思う。
「──っ」
この子は私のことを知っている風だった。もしかして婚約者の弟とか?
それとも私は年下好きだったのだろうか。たしかにこの子は可愛いけれど。さすがに年下というかこの年齢差は犯罪では?
「マリー☆オヤツの時間になるから、パンケーキを作ってみないかい?」
「作る!」
私は男の子の手を掴んだ。彼はビックリしたけれど、照れているのか頬が少し赤い。うん、初々しくて何だか可愛いわ。
「君も一緒に食べましょう」
「槭Μ繝シ?√◇■」
ほわっと柔らかく笑う少年に癒された。
そういえば昔、誰かにも似たようなことを言ったような気がしたけれど、ふわりと浮かんで霧散してしまった。
やっぱりこの子は婚約者の身内なのかもしれない。だから胸がざわざわするし、何か思い出しそうで思い出せないのかもしれないわ。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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