9話 〈八和田 真流〉
阪上 許鹿。
自らが会ってきた中で特段、霊感が強い女性であり、鏡による霊能力を有していた。そうして自身、八和田 真流の相方であり、二人で様々な交霊や除霊をしていた。
真流は質の悪くなった長髪を束ね、朝日が昇る街並みを眺める。安アパートの一室は朝焼けにより照らされ、清らかだった。
時たま除霊をして欲しいと依頼がくる。その他はフリーターとして細々と食いつなぐ日々である。
大学生の頃、許鹿とやんちゃしながらも霊能力者の真似事をしていた記憶が輝かしい。もう、彼女がいなくなり何年経ったろうか。
家族が行方不明の届けを出して、たまに似ている人がいないか探したりもする。霊感が強い真流は万が一を想定して、許鹿の霊を降霊しようとした事もあたった。
…だが、彼女の魂は現れなかった。
(許鹿はまだどっかで生きてる。それは確か)
二度と自分の前に、あのような力強い霊感を持つ者は出現しないだろう。そして友達だと接してくれる者も。
シリアルに牛乳を注ぎ、真流はため息をつく。
(親の目も痛いし…どうすればいいかな)
せっかく大学を卒業し、フリーターとして働いているのもあるが…霊媒師として活動しているのがなぜだか身バレしている。母親からはアンタ、怪しい水だか売ってないわよね?などと言われる始末。
それでは悪徳商法ではないか…。
そんな時にスマホが鳴り、見てみると除霊関係のメールアドレスでの連絡だった。
(…アタシはまだ、やれる)