27話 〈カエルの季節〉
「ギャーっ!?!!」
ロビーに悲鳴が響き渡り、うつらうつらしていたユルカはガバリと飛び起きる。夜更けに決まってくつろぎにくる藍田さんが変な動きをして跳ねていた。
「か、カエル!カエルが!たくさん!いやいや!」
「え?…カエル?」
管理室から出ると絨毯にヒキガエルが何匹か、ウロウロしていた。
「これもカエルですか?」
「ファァッ?!ユルカちゃん!?カエル知らないの?!?ヒキガエルよ!ヒキガエル〜!!」
「ま、まあ。あまり。このカエルは初めて見ました」
駐輪場にいたアマガエルは何度か目にしたが、これは初めてだった。
「すいません。ちょっと寝てたみたいで。いつ入ってきたんだろ。すぐ外に逃がしますから…」
「い、いや、良いよっ。記憶喪失だもんね。カエルとか知らないよね」
「はは…」
ゴーイングマイウェイな彼女にも苦手なものがあるのを知り、浮世離れした印象が薄れた。カエルたちはヨタヨタと徘徊している。
「あらぁ〜、懐かしい。カエル」
広田さんが酒臭さを漂わせながら帰宅してきた。ワーカーホリックなのも問題であるし、毎晩酒を飲んでフラフラになって帰ってくるのは心配になる。
「これ、ヒキガエルというらしいです。意外と可愛いですよね」
「ユルカちゃん、カエルさんにはもーっとたくさん種類があるのよー?」
「いいから!この子に変な入れ知恵しないでっ!」
藍田さんが止めに入ってきて、二人は苦笑する。
「そうねえ。昔はここ、駐車場あたりに池があったのよ。ホテルには庭がつきものでしょ?それでカエルも迷い込んで来てしまったのかも」
「へえ。庭があったんですか?」
「日本庭園みたいな。周りも田んぼだったらしいからこの季節になると、カエルの大合唱ですごかったみたいよ〜」
ユルカは日本庭園なるものを想像してみる。庭園なのだから、草木が生えているのだろう。
池はなぜ必要なのか不明であるが、日本らしい空気を出すためだろうか?日本らしさとは?
「その、田んぼって何ですか?」
「あらあら、そこから??」
「い、いいからっ!ユルカちゃん!か、カエル、撤去して?!」
「は、はいはい。今すぐ」
軍手をポケットから出して、カエルたちを見やる。田んぼとはなんだろう。池にはカエルの他に生物が居るのだろか?
ユルカは何も知らないのを痛感させられた。
「広田さん。カエルの種類、教えてくださいね」
ウシガエルはあまり見た事がないです。




