23話 〈天井から木箱〉
「エレベーターの様子がおかしいから、一応見てくれるかな。照明器具の調子が悪いんだ」
管理人さんがエレベーターの掃除をした後、照明を指さした。
「ハシゴを持ってくるから、ユルカちゃんは他の箇所を確認して欲しい。念のため、なんだけど」
「分かりました」
埃が取れたエレベーターは未だにどんよりしている。空調が悪いのか重苦しい。
「ボタンは大丈夫かな」
ふるっちゃけたボタンが外れていないか確かめ、壁に穴が空いていないかも確認する。
誰かが利用してはいるはずだが、夜勤勤務では皆さん、階段を必ず登っていくのでエレベーターは年代ものにしては質が良かった。
管理人さんがハシゴを抱えてやってくる。そうして二人がかりで照明の点検作業に移った。
「虫か何かが挟まったんですかね」
「まあ、そんな感じだろうね。壊れたらまた修繕費がかさむなぁ」
ボヤきながら、彼は照明のパネルを外し電灯に異常がないか隅々まで目視している。
「何もなっていない。電気を変えたのも2ヶ月前だし」
「ええ?」
「うーん。天井を外してみようか」
「できるんですか?!」
ハシゴを支えながら驚愕する。そういうや否や、管理人さんはエレベーターの一部──天井を外し、懐中電灯で暗闇を照らした。
「うわあ!!」
叫び声をあげたものだから、ユルカもハシゴを倒しそうになる。慌てて支え直し、うろたえる管理人を眺めた。
「どうかなさいました?!」
「変なものが」
「えっ!」
「これなんだけど」
細長い木箱だった。そこにはよくホラーにある謎のお札が貼られている。
(うわああああ)
「ユルカちゃんは知らないよね?」
「知りませんよ!そんなの!なんですかそれっ!」
「と、ともかく、エレベーターを直してロビーで見てみよう」
(み、見るんだ…)
エレベーターを元通りにしてからは、ロビーで木箱を遠巻きにあれが何のために置かれたかを考えた。
住人同士の呪い、とか、恨みなど管理者たちにしてははた迷惑なもの。だが、エレベーターの監視カメラを見返しても怪しい動作をしている人は写っていなかった。
カメラに映らないよう行動するとなると、エレベーターのかごではなく内部に入らないとできないはずだ。
保守点検を行ったのは丁度1ヶ月前。エレベーターに異変が起きたのと重なる。
となると点検整備の人がやったのだろうか?
「イタズラにしては手がこんでるな…。整備士さんたちと揉めたくないから…ユルカちゃん、あれ、新聞紙に包んでゴミ箱に捨ててくるから1週間くらいはエレベーター使用禁止の貼り紙、作ってくれる?」
「だ、大丈夫なんですかっ?捨てて!」
「所詮イタズラだから。仕方ないんだ」
「は、はあ。分かりました」
整備をしている会社と一悶着するのはリスキーだった。だから黙認して無かった事にするしかない。
釈然としないが、ユルカは新聞紙に木箱を包みながらふいに呪符にノスタルジックを感じた。
(なんだろ。どっかで見た事がある?)
なんと不吉な、ノスタルジックなんだろう。我に返り早足でダストボックスへ向かった。




