21話 〈4階の鏡〉
「なぜソナタさんが?そんなのを知ってるんです?」
管理人と共に不審な物や不備がないか見回っている。その際に鏡を見たって不思議では無い。
「シンリュウさんに教えてもらったからです。4階の鏡は現世と幽世を繋ぐ唯一の接点だって…」
「しんりゅう…またその人ですか」
ソナタがこれまで器物破損を働き、何回も口にする人物。どこの誰だかも分からない。妄想上の存在。
「へー、その人興味深いね〜」
藍田さんがノリノリで受け答えする。
「そうなんですっ、何だかこの世でないものが見えるらしく。それを生業にしているとか…おっしゃっていました」
「はぁー、インチキじゃないと良いけど。で、ソナタさんはそれを信じてるんだ?」
「一応…心当たりがあるので」
猫っ毛の女性は肩を落とした。「お母さんがいつまでも帰ってこないのはおかしいな、て…」
「そうかぁ…とにかく4階の鏡を見てみよう。あったらソナタさんの言う、シンリュウさんを信じてみようかなー」
(コミュニケーション能力あるというか、言いくるめる力あるなぁ。藍田さんて)
彼女が幽霊を探しているくせに、超常現象を否定しているのはどことなく理解していた。家庭の影響もあるだろうが、このマンションでまだ変な事象に巻き込まれた事がないのだろう。
──ユルカだって、あの日までは多少変な出来事があっても幻覚ですませてこれた。
三人で4階へ行く。ソナタさんは観葉植物と自動販売機が置かれた場所、『故障中』の貼り紙を指さした。
「貼り紙の裏にあるはずです」
「自販機、故障してんだ」
「あー、4階はすぐに故障するんで。ずっとこうなんです」
直してもすぐに故障するので管理人さんがこうして貼り紙でやりしのいでいた。苦情は来ていないので大丈夫なのだろう。
「はがしてみますか」
「え?」
「いやいや、あるか確かめないと」
「ゆっくりはがしてくださいね?壁がハゲたら嫌なんで」
「またまた〜ユルカちゃんは〜」
そういうなり、ゆっくりとセロハンテープをはがしていく。ペロリ、と紙が垂れ…小さな鏡が現れた。
「マジか」
これには藍田さんも驚いている。
「鏡…あったんだ」
たのしー。




