82.乗っ取られたようです
あれっ、ここはどこだ?目の前に見える景色は見たことが無い。
そう言えば着替えようとして、そのあとの記憶が無い。
「名前を答えてごらん」
「栢山善行です。」
なんかどこかで聞いた声だな・・・オイラの声だ。
目の前にいる女性はフードを被りサングラスを掛けているので顔がよく見えない。
そもそも自分の意思でそこだけを見るということができなくなっている。
オイラはしゃべってるつもりが無いのに、勝手にしゃべってる。
口の感覚は有るのに変な感じだ。
「アンタの服のポケットにペンシル型爆弾を入れておいた。取り出してみな。」
「イエス。マム。」
目の前に自分の手がボールペンを握っているのが見えた。
手の感覚は有るのに、見えてる手の動きは違うという、なんとも不思議な感覚。
足を手術する時、麻酔の効きを確かめるのに、足を持ち上げられて確認される。
確かに持ち上げられた自分の足を見ているのに、感覚は足が床にあるという、
あの不思議な感覚と似てる。
「大丈夫だね。それじゃ一仕事しといで。」
歓迎パーティーが始まり界王が近づいてきた。
「そう言えば善君、娘の誘いを断ったそうじゃないか?
こんな可愛い娘のどこが気に入らないんだい?」
フィオナさんはなぜかモジモジしている。酒場の女将さんがモジモジしてる
としか見えなくて違和感全開なんだが。
界王族となるべく距離を置きたいというのが本音だ。
変身してもらえばっていうのもありだけど、気分的にどうなんだろ。
だって、絶対に異界の改革をとか、面倒事に巻き込まれそうじゃん。
「イエス。マム。」
オイラの声が聞こえたと思った次の瞬間、オイラの腕が勝手に動き出し、
例のボールペンを握った。
カチッという音がしたと同時に目の前が光った。
「善君聞こえるかい?」
ゲントさんが現れた。ゲントさんが念じるとオイラの体は自分の意思で動かせる
ようになった。
「いったいどうなってるんです?」




