524.タキオンが解決の糸口になるようです
-第1世界の核心へアクセスするための観測層-
「ところで博士。
第9世界の隔離された博士とは連絡取れるんですか?」
「あー、残念ながらリアルタイムでは無理だが、君たちのところでいう、メールの
様な方法でやり取りしているんだ。」
そう言うと、博士はどう見てもノートPCと思われるものを見せてくれた。
「これって第1世界の物じゃないですか?」
「そうだよ。君が居た世界の物を応用して作ったモノなんだ。
同じ世界間だったらインターネットとか言われるものが使えるかもしれないが、異
なる世界では次元の壁が存在するから使えないんだ。
そこで、これを使ってるんだ。」
そう言って、そのノートPCモドキの裏ブタを開け、小さなバッテリーパックの
様な四角く、黒いパーツをとりだして見せてくれた。
「こいつには”タキオン”を集めて入れてあるんだ。
お陰で、次元の壁を突破して、第9世界にある隔離された世界の私とやり取りがで
きるって訳さ。
どうしたんだい?君がこんなことに興味があるとはね?」
思った通りだった。この博士は次元の壁を越えて通信する方法を確立している。
しかも”タキオン”ときたか・・・発見されていない光より早い粒子だよな・・・。
博士は黒いパーツを指先で軽く弾きながら、にやりと笑った。
「タキオンは、観測されていないどころか、存在そのものが疑われている粒子だ。
だが“存在しない”と証明されたわけでもない。
だから私は、存在する前提で装置を組んでみたんだよ。
案外、動くものだろう?」
そう言われても、僕には返す言葉がなかった。
目の前のノートPCもどきは、どう見ても普通の機械にしか見えない。
けれど、その裏側では、想像すらできない物理法則が働いている。
「……つまり博士は、タキオンを“燃料”みたいに使って、次元の壁を越えてるって
ことですか?」
「燃料というより、鍵だね。
次元の壁は閉じているようで、実は無数の“隙間”がある。
タキオンはその隙間を通り抜ける性質があると仮定すると、通信路として使える。
もちろん、安定しているとは言い難いがね」
博士は肩をすくめて、さらに続ける。
「だからリアルタイムは無理なんだ。
送ったデータがどの“時間”に届くかは、タキオンの気まぐれ次第でね。
まあ、それでも連絡が取れるだけマシだろう?」
時間すら曖昧な通信――そんなものが成立する世界が、本当に存在するのか。
博士はそんなオイラの反応を楽しむように、さらに続けた。
「君が来た第1世界は、タキオンを“存在しない粒子”として扱っている。
だがね、存在しないと決めつけてしまうのは、世界を狭くするだけだよ。
観測できないなら、観測できるように世界のほうを変えればいい。
私はそう考えている」
その言葉に、背筋がぞくりとした。
この博士は、常識の外側で生きている。
そして――その外側にこそ、第1世界の核心へ至る道があるのかもしれない。
読んでいただき、ありがとうございます。
この方向で、崩壊を回避する方向に持って行けるかどうか、ちょっと微妙な
感じですけど、何とか回収するように持って行きたいと思います・・・。




