521.崩落を止めるのは自分にしかできないようです
-博士の列車内研究所?-
扉の向こうから流れ込む青白い光は、ただの照明ではなかった。
空気そのものが震えているような、肌の表面をそっと撫でるような、奇妙な感覚
を覚える。
博士が先に一歩踏み入れる。
オイラも続こうとした瞬間、足元の床がわずかに沈んだ。
「気にしなくていい。ここは“世界境界面”そのものを観測するための部屋だ。
重力も、時間の流れも、本来の世界とはズレているんだ。」
しばらく歩くと、小屋が見えて来た。
小屋の扉をくぐると、そこは研究室とはまったく違う空間だった。
壁も天井も存在しない。
代わりに、淡い光の粒が無数に漂い、ゆっくりと渦を巻いている。
まるで星雲の中に立っているみたいだ。
「ここが……第1世界の核心……?」
「正確には“核心へアクセスするための観測層”だね。
本物の核心は、もっと深いところにある。
君に見せたいのは――その入口だ」
博士が指を鳴らすと、光の粒が一斉に集まり、巨大な球体を形作った。
球体の表面には、さっき見た地図と同じように黒い“穴”が点在している。
しかし、こちらの穴は……動いていた。
まるで生き物のように、じわり、じわりと広がっている。
「これが“崩落”の本質だ。
境界面が破れた部分は、放っておけば必ず拡大する。
そして最終的には――世界そのものを飲み込む」
博士の横顔は、いつになく険しい。
「……じゃあ、オイラは何をすればいいんですか?」
自分でも驚くほど自然に、言葉が口をついて出た。
怖いはずなのに、不思議と逃げたいとは思わない。
博士はゆっくりとこちらを向き、静かに言った。
「君には“境界面の共鳴反応”が起きている。
本来なら第9世界の住人には絶対に起こらない現象だ。
つまり――君だけが、この崩落を止められる」
「……どうしてオイラなんです?」
「それを今から説明する。
ただし、その前に……君に“会わせたい人物”がいる」
博士が指し示した先、光の粒が割れ、奥に通路のようなものが現れた。
その先には、誰かの影が立っている。
人影はゆっくりとこちらへ歩み出た。
その姿を見た瞬間、オイラの心臓が大きく跳ねた。
「……え? なんで……?」
読んでいただき、ありがとうございます。
第9世界で見た”魂流”を守る異界から切り離された世界の外側に、
第1世界が覆うように存在しているようです。
そして、世界の境界面に問題が起きているのが今の状態です。
果たして、善行はどのようにその問題を解決していくのか・・・。
そして、善行の前に現れた人物とは・・・。




