520.世界の崩壊を防ぐカギは善行のようです
-博士の列車内研究所-
研究室に戻り、ドアが閉まると展望デッキに居た時に聞こえて来た、子気味良い
レールの通過音が嘘のように消えた。
それどころか、動いている感覚がまったくない。
まるで別世界に切り替わったみたいだ。
さっき、展望デッキで見た景色は、どう見ても日本ではなかった。
線路幅からすると、標準軌だったな。
そしてカーブでちらっと牽引機が見えた。
あれはアメリカのJクラスと言われた機関車では?
20世紀特急と言われた機関車によく似ている。
ということは、ここはアメリカ?しかも第二次世界大戦前?
「さて。まずは君に“見てもらったほうが早い”だろうね」
博士が指先で板を軽く弾くと、内部の光が一斉に走り、空中に立体映像が浮かび
上がった。
それは・・・第9世界の隔離された世界・・・生と死の境界を越えた領域の地図。
だけど、オイラの知っているものとは違う。
地図のあちこちに、黒い染みのような“穴”が広がっていた。
「これが、あの世界で観測された異常だ。
正式名称は《世界境界面の崩落》」
博士の声は、さっきまでの軽さが嘘のように重かった。
「境界面……って、世界と世界の“壁”みたいなものですか?」
「そう。通常は絶対に破れない。
だがあの世界では、何者かが意図的に“外側から”干渉している」
外側から?・・・オイラは思わず息を呑んだ。
「君が光の裂け目を通ってここに来られたのも、その影響だ。
本来なら、あんな自然発生的なゲートは存在しない」
博士は映像を指で拡大しながら続ける。
「そして……君がここに来たのは偶然じゃない。
あの世界の崩落は、君の存在と深く関わっている」
「オ、オイラが……?」
心臓が跳ねた。
何も知らないはずなのに、博士の言葉が妙に胸に刺さる。
「安心していい。君が“原因”じゃない。むしろ・・・“鍵”なんだよ」
博士は振り返り、いたずらっぽく笑った。
「世界を救う鍵だ。」
そう言うと博士は壁際の装置に歩み寄り、いくつかの操作を行った。
そして、再びこちらを向く。
「君に見せたいものは、まだまだある」
博士が手を伸ばし、研究室の奥にある別の扉を指し示した。
扉の隙間からは、淡い青色の光が漏れている。
「第1世界の“核心”へようこそ。ここからが本番だ。」
読んでいただき、ありがとうございます。
博士の言葉から、第1世界にも何かが隠されているようです。
当然博士の研究室がある列車も普通の列車ではない筈です・・・。




