519.研究は移動しながら行うようです
-第1世界 博士の研究室?-
研究室のドアを開けた瞬間驚きの光景が広がった。
「マイテ49?」
オイラは第9世界から光の裂け目を通って博士の研究室に入った。
だから、この研究室がどこにあるのか、まったく見当がつかなかった。
ましてや、研究室に窓が無かったので、外の様子は一切わからない。
研究室は、木の匂いがふわりと漂っている、落ち着いた空間だ。
そんな研究室の様相とは異なり、机の上には研究器具が所狭しと並ぶ。
しかも、どう見てもオイラが大学で触っていたものより、1世紀は先の代物に
見える。
用途も想像がつかない、未来的な装置ばかりだ。
それでも、どこからどう見ても”研究室”だ……そう思っていた。
ドアを開けたら目の前に柵で囲われたオープンデッキになっている。
そのオープンデッキの後ろには線路がずっと続き、横を見ると街並みが勢いよく
流れて見えた。
・・・動いてる。研究室ごと、まるごと列車の上に乗ってる……?
「ようこそ、僕の研究室へ。第9世界からの旅人君!」
突然、背後から声をかけられた。
白衣をひるがえした博士が、まるで散歩にでも出るような軽い足取りで近づいて
くる。その手には、見たことのない透明な板――光の粒が内部を流れる“何か”を持
っていた。
「驚くのも無理はない。この研究室は“移動式”なんだよ。」
博士はオイラの横に立ち、街を見下ろしながら続けた。
「世界間移動の研究には、固定された拠点よりも、“どこにも属さない場所”のほう
が都合がいい。だから私は、研究室ごと走らせることにしたんだ」
オイラは言葉を失った。
だって、研究室が列車の上にあるなんて、そんな発想・・・。
「君が来た理由はわかっているよ。
第9世界で起きた“あの現象”について、だろう?」
博士はすべてを見通しているような目で、こちらを見つめていた。
「さあ、中に戻ろう。話すべきことは山ほどある」
列車は、光の街を切り裂くように走り続けていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
博士の研究室は第1世界の列車に設置されていました。
マイテ49のような展望デッキ車両のようです。
一体どこを走っているのか、そして時代はいつなのか。
次の話に続きます。




