518.世界が再び動き出すようです
-光の裂け目の向こう側-
眩い光を抜けた瞬間、世界が反転したように静まり返った。
足元に感じるのは、確かな“重さ”。
空気の温度、遠くで聞こえる風の音――
先ほどまで居た生と死の境界を越えた領域と違い、生の世界のものだった。
「……戻ってきた、のか?」
善行が呟くと、肩にふわりと温もりが乗った。
「そうだよ。ここからがオマエの“続き”だ。」
コピの声は、さっきまでの境界の空間よりも少しだけ柔らかい。
そして、コピの声に、エマ、リン、シャーロットの3人も力強くうなずく。
善行はゆっくりと周囲を見渡す。
博士の研究室――かつての、そしてこれからの出発点。
だが、何かが違う。
空気の奥に、微かな“残滓”が漂っている。
博士が最後に残した祈りの名残。
そして、善行がまだ知らない“使命”の影。
「コピ……オイラ、本当に継承者なんだな。」
「うん。でも勘違いすんなよ。」
コピは善行の胸を軽く指で突いた。
「継承するのは“博士の未練”じゃない。博士が信じた“オマエの未来”だ。
それを選ぶのは、オマエ自身だぞ!」
そうだよな。オイラがしっかりしないと。
胸の奥に、熱いものがゆっくりと広がっていく。
「博士が守りたかったもの。
オマエが守りたいと思うもの。
その二つが重なる場所に、オマエの“答え”がある。」
善行は拳を握りしめる。迷いはまだある。恐れもある。
けれど――歩き出す理由は、もう胸の中にあった。
「行こう、コピ。
オイラの時間を……動かすために。」
コピは満足そうに笑い、善行の隣に並んだ。
「任せとけ!オマエが選んだ未来を、最後まで見届ける。」
オイラは研究室の扉を静かに開く。
「えっ、ここは研究室・・・だよな。」
-生と死の境界を越えた領域-
「彼ならきっとやり遂げてくれるだろう。
アイツがついているのだから。」
博士は一人そう呟く。
善行達が居なくなったこの領域では、音が出るモノは殆どない。
動くものは、”魂流”と博士と博士の道具ぐらいだ。
「今頃彼は、私の研究室であれこれ不安に思っているだろうな。
あの場所は第1世界の彼が生まれる遥か昔の場所なのだから。
そんな時代にあの研究所はオーバーテクノロジーだったけど。
まぁ、彼なら楽しんでくれるかもしれないな。
何しろ、あの研究室は動いているんだから・・・。」
読んでいただき、ありがとうございます。
善行達は第1世界に戻りました。
但し、善行が生きている時代より遥か昔の。
そして、研究室は・・・




