517.光の向こうで運命が動き出すようです
-生と死の境界を越えた領域-
コピの言葉が胸の奥に沈んでいく。
重くて、温かくて、どうしようもなく切ない。
「……博士が、オイラを……?」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
コピはゆっくりと、そして深く頷く。
「博士はずっと気にしてたんだ。オマエが“選ばれた子”であることも、そのせいで
背負わされる運命も。だから最後に願った。
――『あの子を、ひとりにしないでくれ』って。」
その瞬間、空気が変わった。
境界の空間が、まるで呼吸するように脈動し、
白と黒の狭間が波紋のように揺れ広がる。
生と死、過去と未来、存在と非存在――
そのすべてが混ざり合う光が、オイラたちを包み込んだ。
「善行。
オマエは・・・博士が選んだ“継承者”なんだよ。」
「継承者……?」
「そう。
博士が果たせなかった願いを、オマエが果たすために生まれた存在。
そしてアタシは、その道を外さないように導く“残響”。
博士の最後の祈りが形になったモノ。」
コピは一歩近づき、オイラの胸にそっと手を当てた。
「でもな、善行。
アタシが導くのは“博士の願い”じゃない。
オマエ自身が選ぶ未来だよ。博士はそれを望んだ。
“あの子が、自分の足で歩けるように”って。」
胸の奥が熱くなる。痛いほどに。
「……コピ。
オイラは……何をすればいい?」
コピは微笑んだ。
懐かしさと、決意と、少しの寂しさを混ぜたような笑みで。
「まずは――“戻る”ことだよ。オマエの世界に。
そして、守るべきモノを守る。それが博士の願いであり、
オマエが選ぶべき最初の一歩。」
善行達を包む光が、さらに強く脈動する。
そして、まるで出口を示すように、光の裂け目が開いた。
「行こう、善行。
オマエの時間が、動き出す。」
コピに促され、善行達は光の裂け目を目指す。
「コピか・・・良い名をもらったな。もう一人の私。
彼のことを頼んだぞ!」
博士の叫びに、コピはサムズアップを返し、裂け目に飛び込んだ。
読んでいただき、ありがとうございます。
博士が見守っていた”魂流”のある、異界から切り離された世界とは、
ここでお別れです。
魂流に悪さをしようとする輩から対抗するためには、ここににとどまる
べきだと思いますが、別の理由があるようです。




