514.魂流攻防戦が始まるようです
-生と死の境界を越えた領域-
「博士、その”境界適正”と言うのはどんなことができるんです?」
「さっき、君はできていたじゃないか?”魂流”に触れることを。
本来であれば、魂流れに人が触れることはできないんだ。
それも、目には見えない防護壁、我々は境界と呼んでいるが、このために触れるこ
とができないんだ。
だが、君にはその境界を越えて、魂流に触れることができるんだ。」
博士は更に続ける。
「前にも言ったが、あれは魂の流れだ。
もし、悪意を持つ者が、あの流れの中から特定の魂を抜き出してしまえば、その魂
を根源とする生命体の存在は異界から消えてしまうのだ。
そして、今、君とティアマト様の身にその危機が近づいているのだ。」
オイラは目の前が真っ暗になった。
折角、嫁もできて、鉄道もできて、ましてや自分の車両まで持てたんだ。
それなのに、存在が無くなってしまうなんて・・・。
ー異界管理局-
「お前ら、わかってるな。事は一刻を争う事態だ!
非番の奴らも緊急呼集かけて、第9世界に乗り込む準備をするんだ!」
局長の指示に、管理局職員たちは慌ただしく走り回る。
だが、その中心で、局長だけは異様なほど静かだった。
静かだからこそ、逆に怖い。
「アルテウスのヤツ、諦めていないようだな。」
その一言で、場の空気が凍りつく。
「局長、室長は大丈夫ですよね?」
綾香の質問に、局長は首を横に振る。
「いいか綾香。アルテウスは魂流の存在に気がつきやがった。
そして、オジキの命を元から絶つ気でいるんだ。
今はまだ大丈夫だが、急がないとアイツ等に魂を抜き取られたらおしまいだ。」
―そして、局長の言葉は、綾香だけでなく場にいる全員の背筋を凍らせた―
「もっとも、その時は、俺らの記憶から、オジキたちのことは一切消えてしまうか
らな。」
局長はそこで言葉を切った。沈黙が落ちる。
誰もが息を呑み、誰もが続きを聞きたくないと思った。
だが、局長は容赦なく続ける。
「……”消えた”ことにすら気づけなくなる。存在が無かったことになるんだ。
魂流から抜かれるってのは、そういうことだ。」
綾香の顔から血の気が引いた。
「そ、そんな……室長が……ティアマト様まで……」
「だから急ぐんだよ。」
局長は立ち上がり、作戦卓に両手をつく。
その目は、怒りと焦りと、そして何より“覚悟”で燃えていた。
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異界 対 元界王 の魂流攻防戦が始まりました。
この戦いの軍配如何では、異界は元界王の都合の良い世界に書き換えられてしまいます。
そして、善行は”境界適正”の能力をどのように生かし、自分の身を守っていくのか。
次回に続きます。




