511.二人の魂が揺らぐようです
-生と死の境界を越えた領域-
「博士、ここは博士の物語の世界なんですよね?
いや・・・どうも腑に落ちないんですよね。
物語の世界に”魂流”があったり、それを妨害する存在が出てきたりするのは、まぁ
物語だからアリかなって思うんですよ。
でも・・・」
オイラは博士を真っすぐ見つめる。
「その妨害する存在が、僕に直接接触してきたのが・・・物語の世界なら有り得な
いんじゃないかって思うんです。」
自分でしゃべっていても、釈然としない。
博士は善行の言葉を聞き、ふっと表情を緩めた。
それは、長い間隠してきた真実にようやく触れられた者を見るような、どこか安
堵の色だった。
「……やはり気づいたか。君の感覚は鋭い。
いや、“鋭い”というより――本来の姿に戻りつつあると言うべきか。」
博士は白衣の裾を払って善行の前に立つ。
「ここは“物語の世界”などではない。
そう呼んでいたのは、あくまで君を守るための方便だ。」
オイラは息を呑む。
博士は静かに続けた。
「この領域は、異界から切り取られた“隔離世界”だ。
魂流を守るために、創始者が自らの力で編み上げた防壁の一部。
外界の干渉を遮断し、魂の流れを保つための――いわば避難所だよ。」
博士の声が低くなる。
「だが、完全ではない。
境界が揺らげば、外の者が入り込むこともある。
君に接触した妨害者は、その“揺らぎ”を利用したのだ。」
善行の胸がざわつく。
博士は善行の肩に手を置いた。
「そして、君がそれに気づけた理由こそが――
君が“境界適性”を持つ者であり、この世界に選ばれた存在である証拠だ。」
ー界王城-
「準備を急げ! 至急、第9世界へ向かう!」
界王ティアマトは、配下に鋭く命じた。
その声には、界王としての威厳よりも、焦りが色濃く滲んでいる。
ティアマトの脳裏には、最悪の光景が浮かんでいた。
<<“魂流”の妨害者による、善行の消滅>>
妨害者たちは、魂流から“都合の悪い魂”を抜き取り、その存在を歴史ごと消し去
ることを目的としている。
魂流から切り離された魂は、存在そのものが“なかったこと”になる。
そして――今回の事態をさらに深刻にしている問題がひとつあった。
ティアマトと善行の魂は、同じ源を持つ。
二つの肉体に宿りながら、根底では一つの魂として繋がっている。
ゆえに、妨害者がどちらか一方の肉体に触れた瞬間、
その魂全体が危険に晒される。
……善君が狙われたということは、私も例外ではない。
魂そのものが断たれれば、どちらも消える。
ティアマトは唇を噛みしめた。
「急がねばならん。
妨害者が再び動く前に、彼を保護し、魂流の揺らぎを止めるのだ。」
読んでいただき、ありがとうございます。
魂を亡き者にしようと企てる敵の存在。
ティアマトと善行の魂が同一。
そして彼らは何故、”魂流”を妨害するのか。
徐々に明らかになっていきます。




