508.魂潮が揺らぎ始めるようです
-生と死の境界を越えた領域-
目の前の青白い粒子は滝ではなく、無数の“線”として空間に走り、一本一本が
意識に触れてくる。
音は聞こえない。
代わりに、言葉にならない“記憶の気配”だけが、波紋のように広がる。
――砂漠を歩く映像と足裏の感触。
――見知らぬ街で誰かの手を握る温度。
――星のない夜空を見上げた時のせつなさ。
それらが一瞬で意識に流れ込み、また遠ざかる。
「……こんな場所行った覚えがない……」
“思い出した”のか、“見せられた”のか、自分でも判別がつかない。
博士の姿は見えないが、声だけがすぐそばで響いた。
「それは“君が歩いた可能性”だ。
”魂潮”は、過去と未来を区別しない。
君が歩いた道も、歩かなかった道も、すべて同じ流れの中にある。」
視界の端で、粒子の線がひときわ強く輝いた。
一本の線が、まるで主人公を“選ぶように”揺れている。
「……博士。あれは、僕を呼んでいるんでしょうか」
「呼んでいるのではない。
“君が応えられる状態になった”だけだよ。」
博士は静かに息をついた。
「もし触れれば、その線が示す“世界”が、君の中に流れ込む。
それは記憶かもしれないし、使命かもしれない。
あるいは――まだ名前のない感情かもしれない。」
オイラは、揺れる光の線に手を伸ばした。
指先が触れた瞬間、光が奔流となってオイラの身体を包み込む。
そして――“誰かの声”が、確かに聞こえた。
それは懐かしく、けれど一度も聞いたことのない声だった。
「やっと、見つけた。見つけた、見つけ、見つ、見、見、見・・・」
声が歪み、目の前の少女が徐々に”何か”へと変質していく。
意味を持たない形へと・・・。
ヤバい、体が動かない、終わりだ。
そう思った瞬間、視界が弾け、僕は我に返った。
息が荒い。心臓が痛いほど脈打っている。
「危なかった。あれは”魂流”を妨害する者だ。
すまない。まさか、あのタイミングで君に接触してくるとは思わなかった。」
「・・・あれは僕の記憶ですか?それとも、これから起こる未来ですか?」
「正直言って私にはわからない。
君を観察していて、妙な波形が現れたので、マズいと思って慌ててサルベージ
したんだ。
”魂流”を妨害する者については、その顔を見た者はいない。」
博士は苦い表情を浮かべた。
「私はこの物語の世界でしか生きられない。
それは彼らの妨害で”魂流”からはじき出されたからだ。
だから私は、この世界で妨害者を観察し、君のような界王に助言を与える
働きをしているんだ。」
あれっ、今さらっと、トンデモナイ、ワードが聞こえて来たぞ。
オイラが界王?
読んでいただき、ありがとうございます。
今回の話では、"魂流”を妨害する者があらわれました。
彼らは何故、自然の摂理に逆らってまで、”魂流”を妨害しようとするのか。
そして、善行に界王と言った博士の意味は?
徐々に明らかになっていきます。




