505.境界を突破して走るようです
-アークライト博士の研究所列車?-
「どうだ、驚いたか諸君!これが私の研究所であり家であり列車だ!」
三位一体と言いたいのだろうか?
にしても、この列車何となく見覚えがあるんだよな・・・。
「みんな席に着いてシートベルトを締めてくれ!
結構衝撃があるけど、大丈夫だから安心してくれ!」
博士はそう言って、全員がシートベルトを締めたのを確認した後、自分も何かの
装置の前に座った。
「さぁ、いくぞ!」
博士は目の前の装置についている大きなレバーを前に引く。
すると、乗っていた列車が急加速する。
飛行機が離陸するときのあの感じよりも、もっと強くシートに体が押し付けられ
る感じだ。
小さな窓から外が見えるが、線のようなものが光っている光景しか見えない。
列車は更に加速を続け、車窓には光がさらに細い糸のように伸びていく。
「うおっ……! 博士、これ本当に大丈夫なんですか!?」
誰かが叫ぶが、声は妙に遠く聞こえる。
列車の窓の外では、夜景が線となって流れ、やがて線は粒になり、粒は光の霧へ
と変わっていく。
「心配するな! これは“境界突破加速”だ!
この列車は物理法則の上を走っているわけじゃないからな!」
博士は楽しそうに笑いながら、さらにレバーを押し込んだ。
しばらくすると、急加速の衝撃がふっと消えた。
代わりに、身体がふわりと軽くなる。
まるで重力が半分になったような、不思議な浮遊感。
窓の外には、青白い光の粒子が無数に漂い、列車の進行方向へ吸い込まれるよう
に流れていく。
「……これ、星じゃないよな?」
「星じゃないさ。あれは“記憶の粒子”だよ」
博士は振り返り、誇らしげに胸を張った。
「生と死の境界を突破した世界はこうして“思い出”を光として浮かび上がらせる。
我々は今、その世界を走っているのだ!まずは観測デッキへ行ってみるといい。
どんな“記憶”を映しているか、君たち自身の目で確かめてくれ!」
そのとき、車内の空気がひやりと冷たくなった。
誰かが小さく息を呑む。
窓の外の光の粒子の中に――
人影のようなものが、ゆっくりと浮かび上がった。
輪郭は淡く、風に揺れる炎のように不安定。
けれど、確かに“誰か”がそこにいる。
「……博士。あれ、もしかして……」
「うむ。あれは“向こう側の住人”だ。安心しろ、彼らは優しい。
ただ、こちらを見守っているだけだよ」
博士は穏やかに微笑んだ。
読んでいただき、ありがとうございます。
新たな領域に善行達は到達しました。
アークライト博士は何故この領域に善行たちを連れて来たのか。
徐々に明らかになっていきます。




