466.DXに振り回されDT疑惑をかけられるようです
-異界管理局 界務課事務所-
三船課長は支給されているパソコンと格闘していた。
最近までパソコンなんてものは無かったのだが、”第1世界出身の善君を見習え”
と、パソコンの有用性を説き始め、異界管理局は全員にパソコンが支給された。
裏を返すと、パソコンが使えないと失職の可能性があると・・・。
「ええと・・・マウスを使って、ここの変なマークのところに、カーソルを移動
し、クリック。次に、検索窓が開くので、調べたい内容をキーボードを使って入力
し、”Enter”キーをクリック。
おー、本当に検索結果が出てきたぞ。
次に、一番関係がしそうなサイトを選んでクリックしてジャンプだと。
なるほど、検索結果が出てくるわけだ。
マウスは仕方がないとして、カーソルは”やじるし”、クリックは”押す”って簡単な
言葉で言えないものなのか・・・。」
彼は界王城DX推進部謹製の操作説明書に従い、ネット検索を試していた。
「なんで”DX”なんだ?デジタルトランスフォーメーションだろ?
”DT”じゃないのか?”DT”じゃ?」
そこに綾香がやって来た。
「課長、いい加減、オフィス系のアプリの使いかた、覚えてくださいよ!
ハンコついて紙で廻すとか、うちの課だけですよ!」
「綾香!上司に向かって、そりゃーないだろ?
紙とペン、電話がありゃ、ここの事務仕事は片付くだろうが。
だいたい、なんだって”DX”なんだよ。”DT”だろうが!」
「トランスフォーメーションの”トランス”を、第1世界の英語圏では”X”で表すこ
とから”DX”になったそうです。トランスには何かを超えて変化するという意味が
あり、トランスの持つクロスと言うイメージを込めてXという記号であらわす習慣
があるんですよ。第1世界で、クリスマスを”Xmas”と略すような感じですね。
ちなみに、”X'mas”のアポストロフィーは間違いだけど、善行さんの日本では受入
れられているみたいですね。あと、「いやもう結構!」」
三船課長は綾香の長い説明を途中で遮り、深いため息をついた。
そこに二人のカティナが現れた。
「ところで課長、あの書類、承認していただけましたか?
会計課から催促が来てるんです。”紙での運用はウチだけだ”って愚痴付きで!」
「カティナ・・・で良いんだったな。
ちょっと待て、すぐ確認するから・・・あれ、書類が無いぞ!」
綾香が三船課長の机の紙を見る。
「課長、その裏紙って件の書類じゃないんですか?」
「ああ、しまった。書類読んでいるときに、急にTeamsで連絡が有ってな。
メモする必要が有ったから、つい裏返してしまい・・・。」
「課長。会計課には課長が説明してくださいね。私の落度じゃないですからね!」
カティナが怒りながら言い放つ。
「そう言えば課長って独身でしたよね。ひょっとして”DT”?」
綾香の鮮やかな追撃は、彼の精神力にクリティカルヒットした。
読んでいただき、ありがとうございます。
久々に三船課長の登場です。
名前に偽りなしの、ザ、昭和のオヤジ的な人物で、PCに慣れるのに四苦八苦
している日常とDXを絡めて描いてみました。
そのうち、AIがさらに進化すれば、キーボードやマウスって何?っていう時代
になるかもしれませんね。




