452.親の気持ちになるようです
-第26世界 地下連絡実験線 117系車内-
エベッケンは運転室直後の席に座った。
到着した時は、座席が特効薬の箱で埋め尽くされていたが、すでに全て運び出さ
れ、車内は元の姿を取り戻している。
「この列車の到着は15分後を予定している。何も起こらなければ・・・。」
コンピュータの合成音声が車内に響く。不確定要素を気にするあたり、いかにも
スキルーランド開発室で作られたコンピュータだ。
車内はエベッケン以外におらず、トンネルを走行する列車の音が響くのみだ。
彼は無事に界長の下に辿り着けることを心の底から願った。
-第26世界 中央駅地下研究室-
トンネルの奥から、かすかな風が吹き抜けてきた。
「これは117系が戻ってこようとしていないか?」
「そのようね。確かにトンネルから”列車風”を感じるわね。」
しばらくして、甲高い音のタイフォンが聞こえ、トンネルから117系が姿を
表した。良かった、オイラの117系が無事に戻ってきて。
「善行、何涙流してるんだ?」
気づけば、頬を涙が伝っていた。はじめてのおつかいの親の心境はこんな感じ
なんだろう。
特効薬を積み込む際、仮設ホームを設置した。
117系はその仮設ホームに滑り込んで停止した。
車両中央の窓上に設置された車側灯が点灯し、ドアが一斉に開く。
そして、一人の男が降り立った。
「私はエベッケンと言う者だ。至急、界長バスティアン殿に取次願いたい!」
ルーデリッヒがどこかに電話をかけると、この事態を予測していたかの様に、
すぐバスティアンが現れた。
「エベッケン君だね。君が知らせてくれたおかげで、特効薬を準備することがで
きた。君の働きに感謝する。」
「バスティアン殿。私が居た建物と他の建物の連絡が全く取れなくなってしまっ
たのだ。感染症の発生が私のところだけならば良いが、他の建物でも発生してい
たとすると、大変な事態に陥っている可能性が否めない。
至急、他の建物の調査を進言したく、参上した次第だ。」
「エベック君。了解した。すぐに対応しよう!」
その後、ルーデリッヒさんからこの世界の通信環境を教えてもらった。
建物同士は有線の通信回線でつながっているものの、中央駅のある建物とエベ
ッケンが居た建物は直接つながっているが、その隣の建物とは繋がっておらず、
エベッケンが居た建物を経由しないと通信できない構造らしい。
「いっそ、ネット環境を構築すれば良いのでは?」
あっ、また、余計なことを言っちゃったかな?
「ネットって何です?それを構築とは?詳しく!!!」
ルーデリッヒさんの顔が近い。
あー、嫁達がオイラのことを白い目で見始めてる・・・。
読んでいただき、ありがとうございます。
第26世界は、どちらかと言うと、第1、第2世界よりも文化がアナログ寄り
なところになります。
いっそのこと、レールは敷かれているのであれば、レール通信なんてことも可能
かもしれませんが、どのように改善していくのか、次回で書きたいと思います。




