433.止まるのは仕様です
-異界管理局 駅及び列車整備部-
「そう言えば、ここは整備もやってる・・・んだよね?」
そう。列車を整備すると言えば、どんな鉄道でも、工場のようなところで、油に
塗れながら、打音検査したり、グリスアップしたり、増し締めしてダブルチェック
入れたりする、何らかの音がして然るべき場所だ。
でも、ここはシーンとしている。時折、列車に自動洗車機のようなものが光を当
てながら動いているが、音は一切しない。
「室長、ここの列車は全てデッドコピーですよ。第1世界で動かしている本物とは
違うんです。素粒子線を固めてできているだけなので、削れたり、破損した箇所は
あの機械で素粒子線を照射すれば、簡単に元に戻るんです。
と言っても、通常の使用では、削れたりすることは無いんですよ。
自然回復するように作られてますので!」
何てご都合主義なんだ!第1世界で列車整備している方に申し訳ない・・・。
「ん?もし、デッドコピーの種車が欠陥車だったらどうなるんだ?」
「あーそれですね。実は室長が乗って来たキハ81系は大変だったらしいです。
何しろ、第1世界で登場してすぐの編成をコピーしたので、途中で止まってしまう
トラブルが複数回発生したそうです。
列車整備部では教訓として、”絶対にデビューしたての列車はコピーするな!”と教
本にも載せているそうです。」
キハ81系は確かにエンジン廻りで色々とトラブル起こしたからね。
「あ、でもさ、実車のトラブルはエンジン廻りなんだよね。
ここでデッドコピーした列車はエンジンなんて積んでないじゃん。
と言うことは、トラブルで停止するというのは無いんじゃないの?」
「えーとですね、エンジンの有無では無くて、”トラブルで停止する仕様”の部分が
コピーした際に仕様だから生きてくるんですよ。」
俗にいう”これってバグじゃないの?いいえ、仕様です”ってヤツじゃん・・・
「室長、ひょっとしてこのカード気になっちゃったりします?しますよね?」
綾香の圧が凄い。どれだけ金色の加護カードに興味を持たせようとしてるんだ?
「気にはなるけど、第2世界で運転できる免許持ってるから・・・」
「室長!せっかくなんですから異界で運転できるようになっちゃいましょうよ。」
綾香はオイラに、言うなれば国際免許を取りませんか?いいえ、取るべきです!
と圧をかけている状態だ。
「わかったよ。興味があるのは本当だ。ちなみに、その加護カードを取得するま
での手順と期間を教えて!」
「まず、ここの運転加護課に申請して、運転加護教育を1年受けます。
あっ、室長の場合は、通信教育でも可能ですよ。
で、合格すると、異界管理局運転課に籍を置いて、運転及び関連業務に3年携わ
ります。そのあと、試験を受けて合格すると・・・」
「それで加護が貰えるんだな?」
「違います。列車整備部に籍を置くことになります。ここでも3年間業務に携わ
り、試験を受けて合格すると・・・」
「ようやく加護が貰えるんだな。うん、大変だ。」
「いえ、局長に会う権利が貰えます。」
「加護の話はどこに行った?」
「まぁ、慌てずに。でですね、局長と会って、じゃんけんして勝ったら、加護が
貰えるという仕組みです。」
「最後はじゃんけんかよ・・・」
読んでいただき、ありがとうございます。
キハ81系は図鑑やネットでしか見たことは有りませんが、独特のデザインが
気に入っていて登場させました。
ただ、調べていく中で、トラブルが続いて初期の評判は悪かったのだと知りました。
トラブルが続いた原因は短納期案件だったから・・・。
この時代にISOが有ったら、こんなことは起きなかったのかもしれませんね。
尤も、国鉄がISOの認証を取得するかは別ですが・・・。




