237.入鋏サービスするようです
「善君、どこ行ってたの?」
「いや、界王様に乾杯のお礼をしようと思って追っかけたんだけどね。」
「じっちゃんに会ったのか?大丈夫だったか?」
「あー、結局会えなかったんだよね。」
思わずウソをついてしまった。結婚式でいきなり新婦にウソをつくってなんか
罪悪感が半端ない。
その後、第一世界のいろいろな料理が招待客に振舞われた。
なんでも、異界ではこのように一同が会して食事をとるなんて風習は無いため
招待客は興味津々だ。
アミューズ、オードブル、パン、スープが出てくるたびに、招待客から歓声が
上がった。食事が不要な人たちにとっては新鮮な体験なんだろうなぁ。
「さてご来場の皆さま、新郎新婦が一旦退場させていただき、お色直しをさせて
頂きます。どのような服装になるのか、お楽しみに!」
ロボリオさんがアナウンスを発した後、オイラ達は高砂の裏にある出入り口から
控室に向かった。
控室では綾香たちが手ぐすねを引いて待ち構えていた。
「毎度ご乗車頂きまして、ありがとうございます。
只今より車掌が皆様の乗車券の拝見に参ります。
御面倒さまではございますが、ご協力をよろしくお願いいたします。」
扉が開き、車掌姿のオイラ達が現れる。
そして、各テーブルを回り、招待客にあらかじめ配布されたマルスで発見された
招待状にスタンプで今日の日付と入鋏済を押していく。
このスタンプを押すチケッターは第一世界に常駐している、閻魔庁の力で手に
入れた本物。但し、今は日付を押すことを省略しているので、古いものだが。
「只今、新郎新婦が皆様への御挨拶として、本日の招待状に入鋏させていただいて
おります。
本日の招待状は第一世界の実際の鉄道切符を使用し、本物の入鋏印を押しており
ますので、ぜひ記念としてお持ち帰り下さい。」
本当はオイラからキャンドルサービスをしたらどうかと嫁達に確認したのだが、
綾香から、それでも鉄ヲタですか。鉄分が無いじゃないですか?と窘められ、
今回の形に落ち着いた。
これって、実は綾香も鉄ヲタなんじゃないか?と思ったが違うとのこと。
「私はシャーロット様の鉄道をたしなむ姿を見て和みたいのです。
全てはシャーロット様のためなのです。」
主人に尽くすというよりは、主人を愛してるよな。メイド部隊って。