10.家族に挨拶するようです
なんかポヤポヤした気の良さそうな女性がエマにしゃべってる。
「あなたが善君ね。主人から聞いているわ。」
しゃべり方までポヤポヤしてる。
「初めまして。丸芝電気の栢山善行と申します。」と思わず名刺を差し出してしまった。
サラーリーマンだから名刺は胸ポケットに入れてるよね。
あっ、そういえば会社帰りからこっちの世界に来てるからスーツのままだった。
「エマ。結婚する前に、子供まで作るなんて、お母さんそんな風に育てた覚えは無くってよ。」
父:オイラ 母:エマ 子供:コピ で家族に見えるっちゃ見えるな。
「私いらない子なんだ・・・・」
いい年した閻魔様がすねた。
テッテレー。どこかで聞いたレベルアップの音が聞こえた。
何回起きるんだ、このくだり。
「エマ。すねる のレベルが上がったのね。じゃぁ、今日はお祝いだわ。」
はぁ?どういこと?
「ごめんなさい。善君。全部冗談よ。本気にしちゃったかしら?」
いやいや、何言ってんのこの人。
「善君のことはすべてお見通しよ。閻魔一族なんですから。」
そうだよな。
「ようこそ閻魔ビルに。私たちの住まいなの。善君の部屋も用意済みよ。」
エマ曰く、この閻魔ビルはエマ達家族というか、閻魔庁長官一族の私邸らしい。
しかも、今回作ったそれぞれの駅から町に入ると、どの町に行っても、さっきの行き方でこのビルにたどり着くとのこと。
つまりは、どの町にも閻魔ビルが存在するが、各町に一つずつあるのではなく、今入ったビルしか
この世界には存在しないという。
「善君の世界の常識は、こっちの世界では通用しないよ。」
「ですよね~」
「さぁ、せっかく集まったんだからみんなでご飯食べましょ」
「やったー!!ご飯久しぶり!!」
「私、ご飯初めて食べるかも!!」
エマにどういこと?と聞いてみたところ、この世界にはご飯を食べる習慣がないらしい。
というより、ご飯を食べる必要が無い。
そして、時間という概念もないから、今食べようとしているご飯も、朝ご飯なのか、夜ご飯なのかさえはっきりしない。ついでに、夜もない。ずっと昼間。
「善君が来たから、善君の世界に合わせてご飯を食べるの。食材はこっちの世界では不要だから善君の世界から取り寄せたのよ。」
お手数をお掛けしますっ。
お金持ちそうなシャンデリアが吊るされたリビング、場違いなこたつ、そして、こたつの上には
本日のご飯。ホールケーキが2台も置いてあった。
「これはご飯じゃないっ!!」