第一青空教室「先生!!!合宿って自分の家の権力つかって高級旅館とかに設定していいもんなんですか!?」
虎継「あああああああああ美春どんんんんんん!!!!美春どんんんん!!!!!!!!!!!!!!美春どんんんんんんん!!!!!!!!!!!!」
虎継母「うるさいよ虎継!!!!!!!!!」
虎継「青春の叫びじゃあああああ!!!!!!ちっとは我慢せぇええええええええ!!!!!!」
「合宿をします」
「断る!」
夏休みの開始を明日に控えたある日、まぁ要するに終業式の日の放課後、僕とみーちゃんは新聞部の部室で龍虎あい対するの絵を体現するかのごとく一触即発の空気をまとって対峙していた。
「・・・合宿を―――」
「断るぅ!!」
みーちゃんは僕の大声に僅かに眉をひそめ、小さくため息をついた。
「くい気味に大きな声を出さないでくれないかしら?」
「やだやだ絶対に嫌だ!!何が合宿だ!断固拒否するぞ!どうしてわざわざ虎穴に全身バター!の状態で入っていくような真似をしなけりゃいけないってんだ!絶対にやだよ!」
「前進☆ハガー!」
「唐突なファイナルファイト!?また懐かしいものを!しかも☆をつけることによって硬派なハガーのイメージにポップなテイストを加えることにも成功している!?しかしそれはいけないぞみーちゃん!トレンディーでないばかりか最早意味がわからないからね!」
「ハガーは虎穴に入っていくの」
「ほう、聞いてやらないこともない、それで、どうなるんだい?」
「そこで、一匹の傷ついた虎と出会うのよ・・・」
「ありがちな展開だ!だが嫌いじゃないぞ!」
「ハガーは・・・」
「ゴクッ・・・」
「虎の4m手前で立ち止まったの・・・」
「ど、どうなる?」
「虎も、警戒はしているものの何せ4m・・・低く唸るばかりだわ・・・そしてハガーはおもむろに」
「・・・ハラハラするね」
「虎に・・・フライングパイルドライバーを決めたのよ・・・」
「とらぁぁあああああああああ!!!????アニマルハートフルストーリーなど期待した僕が馬鹿だったぁああああ!!!!!」
「虎は、まるで亜空間を移動するようにしてハガーの腕の中に吸い込まれていったわ・・・」
「なんてこった!ハガーの吸い込み判定がまさかそこまでのものだったなんて虎も予想していなかったはずさ!」
「虎は、死んだわ」
「トラァァああああああああああああ!!!!なんてこったぁぁああああ!!!」
「そして、ハガーは」
「畜生ハガーの野郎!!!市長の顔の裏にそんな残虐性を秘めていたなんて!」
「タイガーマスクとして新たな人生を歩み始めたの・・・」
「皮はぎやがったああああああああ!!!!!!!超展開だ!!!!虎の犠牲が新たな感動の物語を!!!!?そして多くの孤児が救われていくんだね!!!」
「そうよ・・・そして世界にHEIWAが訪れるの・・・」
「そのパチンコメーカーみたいな平和の言い方やめてくれないかな!?」
「だから、私たちは合宿に行かなくてはいけないの・・・」
「おかしいだろ!!!!!」
「そういう定めなのよ・・・」
「話の落としどころが見えていないのはとっくのとうに分かっていたさ!!」
「失礼ね、これはこれで悪くはないのよ」
「すこし納得のいっていない顔をしながら自分を肯定されてもなぁ!」
「とにかく」
「いやだ!」
「合宿行きます」
「いやだったらいやだ!!!!!!」
「合宿で勉強を教えることを条件に補習免除の特約を先生にとりつけてあります」
「きたねえええええええええええええええええ!!!!!!!」
「いかないなら停学にします」
「どこまでみーちゃんは学校の運営サイドに食い込んでんだよ!?すでに権力を手中に収めたか!!!?」
「停学は冗談にしても、こないというのなら私が龍君のへやで個人授業を開くことになります」
「そっちの方が危険なきがする!!!!!!!!!!」
「フフ・・・二人きり・・・でね?」
「合宿いくよ!!!!!!!!!!!!?」
「行きたくないんでしょう?合宿」
「行きたくなってきた!!なんだかすげぇ行きたくなってきたんだ今!!まさに今!!」
「えーどーしよっかなー」
「グゥウウウ!!!この天邪鬼め!!!!みーちゃんはそうやっていつも人のいやがることをして喜ぶ!!!人の負のオーラでも喰ってんのか!?」
「私は人の幸せを食べて生きているの」
「余計たちが悪いわ!!幸せってキーワードを言えばいいと思っている典型的な人だよ君は!!」
「もう、幸せでおなかがいっぱい」
「くそうちょっとばかし美人で勉強ができて運動ができて愛想がよくてジョークが言えて格ゲーが強くて道を歩けば老若男女問わずフラフラと人が寄ってくるからっていい気になってるんじゃないぞ!!!!!」
「ちなみに龍くんは?」
「どうせ僕は冴えない顔して勉強ができなくて運動もできなくて愛想もわるくて友達もいなくてジョークしか言わなくて格ゲーはストツーの待ちガイルしかできなくて老若男女みんなから無視される虫程度の人間さ!!!!!!!!!!僕の負けさ!!!!どうせみーちゃんの勝ちさ!!!」
「失礼ね、待ちガイルは結構大変なのよ。全国のガイルファンに謝りなさいよね」
「そこかよ!!ガイルはもうこの際どうでもいいだろう!!!そこは僕の事を肯定するようなことを一つくらい言ってみせろよ!!」
「龍くんはー・・・」
「やる気出せよな!!!そこで止まるなよな!!!一つくらいあるだろ一つくらい!!」
「声が大きい!」
「うるさくしてすいませんでした」
「分かってくれるなら許してあげないこともないわ」
「僕はもう喉がカラカラさ・・・」
「私はヘラヘラしてるわ」
「どうしてみーちゃんはそう僕をイラッとさせるのがうまいんだろう?」
「そりゃぁ私が龍くんの事が大好きだからよ」
「そんなまがった愛情はお断りさ!!」
「さて」
「はい」
「合宿についての伝達事項を伝えます」
「メモメモ!」
「そこは要チェックやと言ってほしいわ」
「みーちゃんがこの前こう言えっていったんだろう!!!!」
「私は赤鉛筆をなめながらメモメモ!って言えっていったの」
「贅沢をいう子は嫌いさ!」
「伝達事項を伝えます」
「メモメモ!!!!」
「強情な子ね」
「ささやかな抵抗と言ってほしいな」
「まぁいいわ、それで、合宿だけど」
「へいへい」
「隼人がきます」
「あいよぉ」
「なっちゃんが来ます」
「おわったぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「秋乃ちゃんも来ます」
「最悪だぁああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「赤城くんもきます」
「うぜぇえええええええええええええ!!!!!!!!!!!」
「部屋は個室です」
「ほう?」
「ちなみに私と龍くんの部屋は隣同士です」
「ぎゃぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「覗いてもいいよ☆」
「ふざけるなぁああああああああああアガガガガガガ!!!!!!!!!」
「覗いてもいいよ☆」
「誠心誠意がががががががががががががが!!!!!!!!!」
「いいよ☆」
「がががががががががががんばります!!!!!!!!!!!」
「よろしい、健闘を祈るわ、カギは24時間開いてるからね。ちなみに窓のかぎもバッチリオープンよ」
「いてぇよぉ・・・いてぇよぉ・・・頭蓋が陥没したよぉ・・・」
「大げさね」
「どこがだよ!!!」
「なきごとを言う龍くんなんてきらいよ」
「僕がみーちゃんのせいで泣き言言わなかった日など今までで一度たりともないはずだ!願わくば嫌ってくれていいから僕を解放してくれ!」
「心にもないことを言ってぇ」
「心の中はこの思いだけではちきれんばかりさ!」
「とにかく」
そういうと、みーちゃんは澄ました顔で紅茶に口をつけて一呼吸おいた。
「明日の朝4時に出発するから、早く支度しに帰りなさい」
「ハガーの話で引っ張りまくった挙句に明日の朝4時からとかおよそ深夜型の僕には理不尽極まりない今後の行動予定を涼しい顔で冷酷に告げた!?」
「起きられないなら私が龍くんにモーニングコールを・・・」
「いやだ!なんで朝っぱらからみーちゃんの声なんて聞かなきゃいけないんだ!僕はひとりでちゃんと起きられる子だ!」
「ひどいわ・・・折角この間手に入れた稲川淳二先生のテープを電話口に」
「朝から何を聴かせるつもりだ!」
「持ち物は自由よ」
「自由って聞こえはいいけどそれはただの説明責任の放棄にほかならない!どこ行くんだよ!海か!?山か!?それとも地獄か!?」
「山よ」
「ち、水着なしかよ」
「針が生えているわ」
「地獄じゃねぇか!!」
「近くには川が流れているの」
「山だからって水着がないなんて凝り固まった発想はあかんかったんや!」
「川の色は赤いらしいわ、珍しくて、素敵ね」
「やっぱり地獄じゃねぇか!!地獄の川にビキニの女の子がいたって僕は・・・ちょっとは興奮するけど!でもみーちゃんとなっちゃんと秋乃じゃなぁ!!!!」
「私は、スクール水着よ」
「くそう!!!!そんなんで勝ったと思ったら大間違いだからな!!!」
「旧スクを今回特別に手配したわ」
「旧ザクだと!?」
「なんで私が連邦に追い込まれて仕方なく性能に劣る旧ザクを戦場に投入しなければならないのよ。旧スクって言ったのよ」
「ちくしょう!古典的な手ではあるが、万人に受け入れられるからこそのオーソドックス!!脈々と受け継がれてきた伝統的な水着にはさしものこの僕も・・・!」
「色は白よ」
「連邦の白い悪魔!!!だが残念だったなぁ!!!白で奇をてらったつもりだろうが・・・紺こそが至高!!!奇策は奇策にしかなりえないのだよ!」
「ちなみに白はお風呂用、混浴らしいわ。川では紺を着用する予定です」
「くそうどこから反応していいのか分からない魅力的なセリフを!!!!」
その時である。
ガラリ、というか、ガラグワドッシャアァァァァアアアアアン!!!!!!!!!という効果音と共に、部室のドアが開かれた。
そこには、目をつり上がらせ、顔を真っ赤にし、口からは白い蒸気をあげ、肩からはなにやら紅い闘気を立ち上がらせ、たぶん今話しかけたら僕は殺されてしまうだろうなぁ、といった様相を呈している、なっちゃんがいた。
「あら、なっちゃん、明日の準備はできたかしら?」
「どういうことだ・・・」
「どういうことって、そのままの意味よ?明日から合宿いくのよ?」
「そうじゃねぇぇえええええ!!!なんでアタシが新聞部の合宿なんていかなきゃなんねーんだよ!!!!!!」
「なっちゃん新聞部じゃない」
「お前があたしを騙して勝手に入部届け作成しただけだろうが!!!!!アタシは明日からソフトの夏季合宿があるんだよ!!!!新聞部の合宿なんて行ってる場合じゃねぇええ!!!」
「でも、もうソフトの顧問の先生には話をつけちゃったわよ?」
「それがどういうことだって言ってんだ!!!!!!!!!!!なんであたし抜きでさも当然の様にアタシの夏の練習スケジュールが作成されてんだ!!!!!てめぇどういう手を使ってこんな悪魔のような所業をぉおおおお!!!!」
「ちょっとばかり先生の趣味を暴露しますって脅かしたら、すぐに快諾を・・・」
「人の弱みを握ってしかもそれをあたしに嫌がらせするために使おうとするんじゃねぇぇええええ!!!!!!!」
「なっちゃん」
「なんだこの悪魔、くだらねぇことぬかしやがったら即刻この場でテメェを――――――――――――」
「隼人と部屋を隣にしておいたわ」
「て、て、え?」
「炊事当番も、ちゃんと隼人と組んであるわ」
「あ、そう。だ、だだ、だ、だから、なに?別にあたし、隼人と一緒だからって特に嬉しくもなんともないしね、あんな、人様の下着で遊ぶような人間のクズ!!!!!」
「なっちゃん、明日4時に集合ね?」
「ふーん、そ、そそそそ、そう。4時ね。どどどどどどどどこよ。」
「学校の校門集合でいいかしら?」
「ま、ままぁ、その、もう、先生に話つけちゃったっていうんなら、まぁ、ししししかた、ないよな?」
「そうね、ちなみにお風呂は混浴だから水着用意してきてね?」
「こここここここ混浴!!!!!!!!!!!!!!???????」
「えぇ、せっかくですもの、みんなで入りましょう?もちろん隼人も嫌だといってもちゃんと引きずり込むわ、安心して」
「だだだだだだだだだめだろ!!!!!!!なんであああああああああああああたしが隼人と風呂なんかははははははははいんなきゃいけないんだよ!!!!!」
「嫌ならお部屋にも一応お風呂ついてるけど・・・」
「だだだだだだだ誰も嫌だなんていってねぇだろ!!!!!!!!!!」
「そう、それは良かったわ。隼人もなっちゃんが来るっていったら喜んでたわよ?」
「な、なななななななななな!!!!????」
「えぇ、そりゃもう涙を流して悲痛な叫びをあげながら」
「そそそそそ、そんなにか!?」
「あんなに喜んでる隼人を見たのはさすがの私も生まれて初めてだったわ」
「なななななななななな、そそそそそそうなのか!!!!?」
「なっちゃん・・・この夏は、決めてやりましょう?」
「な、なにをだぁぁあああああああああ!!!!!馬鹿やろぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「・・・いったか」
「あら、龍くん、いたのね、虫けらのように小さな存在だから気づかなかったわ」
「なっちゃん、すごい勢いで走っていったなぁ・・・」
「えぇ、発情期というのは恐ろしいものだわ・・・」
「あれ、いつからだっけねぇ」
「知らないけど、隼人はいまだにわかってないわね」
「あいつラノベの主人公か何かなの?なんなの?女の子にモテてるって自覚ないの?本当に抹殺してやりたいんだけどどうすればいいの?」
「良いじゃない、なっちゃんのハレンチな姿をみて私たちも楽しみましょう」
「みーちゃんは清々しいほどにゲスだね」
「褒められたからにはありとあらゆるものを出してあげるしかないわね」
「何も出ないのが普通なんだけど、やっぱりみーちゃんはちょっと頭がおかしいみたいだね」
「素直ないい子って言って欲しいわ」
「いやそりゃ無理だ」
「まぁ、とにかく明日から合宿だから、私たちもイチャイチャしましょう龍くん」
「みーちゃんとイチャイチャするなら僕はまだ秋乃ちゃんといちゃいちゃしてたほうアガガガガガガガガア!!!!!!!!!!!!!!!!」
「一緒にお風呂入りましょうね龍くん」
「ははははははいるあああああああ!!!!!いたああああああああああああいいいいい!!!!!」
「結構。さぁ、明日の持ち物はここに全部かいてあるわ。この合宿のしおりを持って美春おねーちゃんダイシュキ!って言いながら豚のようにブヒブヒいって明日の準備をしにおうちに帰りなさい」
「しおりを自作してあるだと!?みーちゃん合宿楽しみだったんだね!!?」
「べ、別に龍くんのために頑張ったんじゃないんだからね!」
「申し訳程度のツンデレ要素などいらん!!!!!!むしろもうちょっとツンツンしてくれ!!!!僕に構わないでくれ!!!!」
「照れちゃって・・・」
「照れてねぇ!!!!」
「それじゃ、私も帰るわ」
「あ、そう、相変わらず唐突なテンションの移り変わりにびっくりさ、んじゃ僕も」
「うん、龍くん」
「なんだい?」
「楽しみね」
「そうかい?」
「えぇ」
「そりゃよかった」
「龍くん」
「なんだい?」
「またあした」
「またあした」
「それじゃね私の可愛い龍くん」
「それじゃね」
手を振るみーちゃんが消えると、部室はなんだか物悲しい雰囲気に包まれる。
でもまぁ、明日から、きっとまた、騒がしいんだろうなぁ。
龍二「お前、なっちゃんと部屋となりらしいな」
隼人「なんかあいつから電話かかってきてさ・・・無言で切れたんだけどどういうことなんだよ・・・」
龍二「たぶんなっちゃんの頭の回路が切れただけだ、安心しろ」