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第5理科室 「先生!魔物を退治する方法って、どの大学に進めば勉強できるんですかね!?」

美春「なっちゃん、私と結婚したいって思う?」

夏樹「殺されてえのかてめぇ」

「私、龍二先輩のことが好きなんです」


そういう彼女の瞳は僅かにうるみ、長いまつげが震えているのが見て取れた。


青陵学園の中等部の制服に身を包む彼女の方には緑色のリボンが揺れ、彼女が中等部の3年生であることを告げている。


「私と、付き合ってもらえませんか?」


僕たちは、陽の光が木漏れ日となって輝く柱を形作る体育館裏に、向かい合って佇んでいた。


僕は激しく動揺していた。


千載一遇のチャンスが訪れたのだ。


理不尽な暴力女どもに囲まれ、中学に続いて高校生活までをも灰にまみれて生活するしかなかったこの僕の目の前に、今天使がいる。


僅かに薄い栗色の髪をアップのお下げにし、日に焼けた快活そうな見た目をする女の子。


その身長は僕よりも頭一つ分ほど小さい。


どストライクである。


もしも今、同時に100人の女の子に告白されても、僕は脇目もふらずにこの女の子のところへ駆け寄るであろうほどにどストライクであった。


日頃からみーちゃんだのなっちゃんだのといった、確かに可愛いだろうが、それをかすませて余りある内面破綻を引き起こした輩に囲まれて生活する僕には、この女の子の周りがなにやらキラキラと輝きを放っているようにまで見えた。


なんたって、彼女は普通なのだ。


いや、油断してはいけないが、普通に見えるのだ。


僕の下駄箱に丁寧に入れられていた可愛いピンクの便箋は女の子らしかったし、なによりも「安藤龍二先輩へ   放課後、体育館裏にきていただけますか。  中等部3―F 小川秋乃」と書いてあった丸文字に、あまりにも女の子女の子したその文字に、僕の脳は完全にとかされていた。


それを目にした途端に一瞬にして激しい目眩と動悸に襲われ、「ぐぅぅう」と胸を押さえて、僕は下駄箱にしゃがみこむ有様だった。


周りの生徒が心配して大勢駆け寄ってきたが、脂汗を掻きながらも口の端を釣り上げてグフグフ笑う僕に恐怖したのか、その誰もが僕の周囲2mほどで足を止めていた。


危うく、本当に心臓麻痺を起こして死ぬところだった。


期せずして、この小川秋乃と名乗る可憐な少女は、みーちゃんもなっちゃんも成し遂げることのできなかった僕に対する完全犯罪を後一歩で完遂するところだったのだ。


油断してはいけない。


彼女は強敵だ。


今までにないアプローチの仕方でもって、僕を殺しにかかるみーちゃんからの刺客である可能性が僅かに残されている。


最大限の慎重さでもって、彼女に相対せねばなるまい。


あの悪魔どもに対して、警戒して警戒しすぎることなどありはしない。


だから僕は、今にも彼女を抱きしめたくなる衝動を必死になってこらえながら叫んだのだ。


万が一の可能性に備え、恥を忍んで、全力でもって



「みーちゃん!!!どこに隠れている!!!!いるのは分かっているんだ!!!出てこい!!!」



・・・と。


シーン・・・、と静寂があたりを支配した。


突然の僕の咆哮に、小川秋乃様がキョトンとした表情をその顔に浮かべる。


それを見た僕の胸には僅かな安堵と、おおいなる喜びが広がった。


知らない。


秋乃様は何も知らない。


なかったのだ。


みーちゃんによる陰謀など、存在しなかった。


僕の突然の絶叫にも彼女は「クク・・・見破られるとはなぁ・・・!!!」とこれまでの態度を一変させて僕に襲いかかってくることはなかった。


秋乃様はどこまでも純粋に、一体全体なにをどう間違ったらこうなったのか知る由もないが、僕に恋をして告白をしに来てくださったのだ。


涙で視界が滲んだ。


秋乃様と出会えた喜びで、全身が震えだした。


こんな僕を、好きになってくれるなんて。


こんな僕に、とうに諦めていた夢のような体育館裏での告白という大イベントを用意してくれるなんて。


彼女は世界で一番美しい。


彼女は世界で一番高貴だ。


もう、例え秋乃様がどんな屈折した趣味をお持ちでも、僕の秋乃様への思いが揺らぐことはないであろう。


コスプレ?厨二病?生ぬるい。例え今「私実は男の娘なんです」とカミングアウトされても構うものか。


覚悟はできた。


もしも、秋乃様の眼前に立ちふさがる者がこの先現れたとしたら、僕が全力でもってそいつらを叩きつぶし―――――――――




「フフ、龍くん、やるようになったわね。よく気づいたと褒めてあげるわ」




「ぎゃぁああああああああああああああああ!!!!」



突如として僕の耳元で囁かれた淫靡な声に、僕の全身は総毛立った。


僕は無様に転倒し、あまりの動揺に受身を取ることもかなわず、顔面から、文字通りのヘッドスライディングを秋乃様に披露した。


着地地点は、偶然にして、秋乃様のスカートの直下であった。


「キャッ!?」と秋乃様が可愛らしい悲鳴をあげて僅かに後退する。


「ちょっとぉー龍くん!おねえちゃんとなっちゃんのパンツだけで我慢できないからって、それはないんじゃないの!?」


「何を場違いな憤慨してやがるんだ!!!そもそもどうしてここにいる!!!!」


プンスカと口を尖らせ、絹のような長い黒髪を風にそよがせ、腰に手を当てて、僕に訳のわからない怒りを顕にする、誰も望んでいなかった来訪者「みーちゃん」に、僕は絶望した。


「やっぱりこれはみーちゃんの差金だったんだな!?おかしいと思ったんだ!!こんなに可愛い子がなんの苦労もなくホイホイと僕のこと好きになるもんか!!絶望だ!!絶望だよみーちゃん!!君はやってはいけないことをした!!僕の夢を・・・僕の心を・・・男の子の一番大切な部分を踏みにじったんだ!!許さないぞ・・・!!今度こそもう許すもんか・・・!!!クーデターだ!下克上を開始する!!みーちゃんを排斥し、僕が新聞部の王となる!!栄えある第一号の紙面はこうだ!《少年よ、正気を保て。~幻想からの回帰、悪魔、正体を現す~》」


僕は涙ながらにそう叫んだ。ついでに言うと悲しみのあまり涙に引き続き鼻水が盛大に流れ出していたが、構ってなどいられない。

僕は人間の尊厳を土足で踏みつけにされたのだ。

いかにみーちゃんと言えど、こんなことは許してはいけないのだ。

その行いは誰もやってはいけないけとだ。あまりにも悪趣味だ。

恋に密かに憧れる、純朴な少年の心をこなごなに砕くものだ。


しかし、怒りに身を焦がす僕に対して、当のみーちゃんはキョトンとした表情を浮かべた。


「なに言ってるのよ、差金?」


「・・・ん?」


「ひょっとして、私が陰謀でも巡らせたとでも?」


「違うのか?」


「私がそんなことをするとでも思うの?」


「思うよ?」


「即答しないでよ、失礼ね」


「どの口がいうんだ?」


僕は、秋乃様の方を振り返った。


どういうことだ。

みーちゃんの陰謀ではなかったというのか?

本当に偶然に、僕の人生のターニングポイントにみーちゃんが現れたとでも?

まさか、彼女は、本当に僕のことを?


「み・・・」


秋乃様は


「美春様・・・」


何故か、頬を赤く染め、恍惚とした表情でみーちゃんのことを見つめていた。


「・・・ん?」


なんだ


この


不穏な空気は


「ど、どうしてここに・・・」


「・・・?あなた、誰?私のことを知っているの?」


「んー?」


みーちゃんが不審そうに片眉をあげる。


訳がわからない。

しかし、どうやらみーちゃんの態度は演技ではなさそうだ。

二人のあいだに面識はない。


「も、もちろんです!ずっと、ずっと美春様のことを知ってました!」


胸の前で両手を組み、ずずいと秋乃様がみーちゃんに詰め寄る。


「私はあなたのことなんて知らないわよ?」


あまりの勢いにみーちゃんが僅かにのけぞる。


みーちゃんが回避行動をとる姿など、僕の人生において初めての光景であった。


「は、はい。ですから、その、これから知って頂ければとおもって・・・」


恋する乙女の瞳であった。


ど、どういうことなの・・・。


「あの・・・」


僕は、カラカラに乾いた喉から声を搾り出す。


二人が、僕の方へ顔を向けた。


みーちゃんは何やら憐れむような視線を僕に向けていた。


やめろ。


そんな目で僕をみるんじゃぁない。


「なんです?」


一方の秋乃とかいう小娘は、先程までのうるんだ瞳もどこへやら、既に用済みとなった僕へ向けてムシケラを見るかのような視線を向けた。


「あの、ちょっと確認したいんですけど」


「龍くん・・・」「どうぞ」


二人の声が重なる。


「小川秋乃さん、君はさっき、僕のことが好きだって言ったかな?」


「はぁ、まぁ」


「僕と付き合うつもりがあったってことだよね?」


「あー・・・」「龍くん、もうやめよう・・・」


「僕の目には、今秋乃さんが、恋する瞳でみーちゃんに迫ってるように見えるんだけど、幻覚かな?」


「はぁ」「龍くん、もう良いんだよ・・・これ以上は・・・」


「それはつまり何かな?つまり、僕を」


「龍くん、やめて・・・」


「僕を当て馬にして」


「龍くん!!もう!!それ以上はだめだよ!!!」


「僕を当て馬にして、みーちゃんに近づこうとでもしたってことかな?」


「はい、正解です。どうもすいませんでした」


ペコリ


と、秋乃とかいうゲス女が僕に頭を下げた。


「龍くん!!!!!!!!!!!!!」


「あぁ・・・」


僕の世界は、真っ白になった。

天使の羽が、舞い落ちてくるのが見える。

綺麗だった。

神々しい音楽で、僕の脳内は満たされた。

涙を流しながら、男の天使たちが全速力で僕のもとへ飛来してくる。

彼らは、とんでもないスピードで僕の方へと向かってきているはずなのに、スローモーションのように鮮明なイメージでもって僕の視界には映った。

「待ってろ!!!!今!!!今すぐ君を抱きしめてやる!!!!!」

天使が絶叫する。彼らの目には、血の涙が浮かんでいた。

彼らの遥か頭上では、神が、「お願い!!早く助けてあげて!!お願いだから!!あの子は・・・あの子はもう!!!!」と声の限りに泣き叫んでいる。

やめろ、僕は男に抱かれて喜ぶ趣味はない。

チェンジだ、女の子の天使をよこせ。

「ごめんなさい!!女の子は今みんな家出しちゃったの!!私がオカマだからって馬鹿にして・・・!私が不甲斐ないばかりに!!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

神が叫ぶ。

「すまない!!僕らが男で本当にすまない!!だが、男だからこそ君の苦しみを・・・君の悲しみを理解してあげることができる!!今は・・・今だけは僕らのことを認めてくれ!!いいじゃないか・・・男同士だからといって・・・怖がることなんてないんだ!!!!」

あぁ、そうか・・・。

女の子とか男の子とか・・・。

そういう、小さいものに、僕は縛られていたんだ。

いいじゃないか、男でも。

僕は、もう疲れたんだ。

理解し合えるのならば、相手が男でも別に・・・。

僕は・・・もう・・・。


「龍くん帰ってきて!!!ダメよ!!!死ぬなんて許さないわ!!!」


遠くで、みーちゃんの叫ぶ声が聞こえる。

みーちゃん、君は暴力的で、内弁慶で、僕と隼人を自立するおもちゃ程度にしか思っていなくて。

君のお陰で、僕は周りの人間から美春さんの飼い犬というイメージを持たれ、僕の周りの男たちは羨望と嫉妬の入り混じった目で僕を睨みつけ、僕の周りの女の子達からも何故か同じような目で睨みつけられ。

君は、恋をする機会も、恋をされる機会も、全て、僕からかっさらっていった。

でも


みーちゃん


僕は、それでも、君に感謝してるんだ。


僕と、みーちゃんと、隼人と、なっちゃんと。


4人で過ごして来た日々は、キラキラと輝いていた。


僕と隼人はいつも血にまみれていたけれど。


それでも、楽しかったんだ。


「龍くん!!返事をして!!・・・!?い、息が・・・。龍くん・・・龍くん!!!!!!!」


「美春様!!そんな矮小な男のこと等もう忘れてください!!私を、私を見てください!!好きなんです!!美春様が・・・美春様のことを愛しているんです!!!」


「今いくぞ少年!!待っていろ!!!生き延びるんだ!!死んじゃダメだ!!人間は抗うものだ!!簡単に、死んでもいいなんて考えるもんじゃない!!僕らが、僕らが今すぐに抱きしめてやるからな!!」


「ちょっとっ!何するの!離しなさい!今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!龍くんが息をしてないのよ!!早く・・・人工呼吸を!!あぁ!!心臓も止まってる!!」


「イヤァァァアアアア!!!美春様!!!!人口呼吸なんてやめて!!!そんな汚らしい男に美春様のくちび・・・く、くく、唇を付けるなんて、だだだだだ、だ、ダメェェェエエエ!!!」


「少年!!!あと500mだ!!!耐えろ!!!耐えるんだ!!!!神より授かりしこの力・・・今こそ解放してくれようぞ!!!!!!」


「ちょっと!!邪魔しないで!!!龍くん本当に死んじゃうでしょ!!!!」


「ダメェェエエエエエ!!!美春様やめて!!!!!美春様の唇は私が・・・私がぁぁぁあああああ!!!!!」


「しょうねぇぇぇぇええええええええええええええん!!!!!!!!!!」


場は混乱を極めていた。


その時、僕と、みーちゃんと、秋乃のクソ野郎と、天使たちの耳に


小さく



カキーーーーーン




爽やかな音が響いた。


空に


白球が舞い上がる音だった。


「怒るわよ!!いい加減に聞き分けなさい!!このままだと貴方、私に愛を告げるどころか警察に罪を告白することになるわよ!!」


「構いません!!!その生ゴミのような男に美春様の唇を奪われるくらいなら!!私はこの男を殺します!!!!」


「あと100m!!!!!!!!みんな、全力を振り絞れ!!!!!!!例え・・・この翼が折れようともぉおおおおおおおおおおお!!!!!」


空に舞い上がった白球は、緩やかに弧を描き。


強烈な回転をしながら、軌跡を記した。


その白球は、その勢いを頂点付近で一度緩めたあと、しかし、母なる大地の引力によって重力加速を味方につけながら


「そう・・・そこまで言うなら、ここまで邪魔をするなら仕方がないわね。私が貴女を、先に殺すわ・・・」


「み、美春さま・・・」


「あと50mッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「覚悟は、いいわね?」


「そんな・・・そんな・・・美春さま・・・」


「あと30メートルゥウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!」


「せめて苦しまずに逝かせてあげる・・・」


「あぁ・・・美春様・・・・・・・・・・。良いでしょう・・・覚悟は、できました。受け入れてくれないというのなら・・・それも、本望です!!」


「あと10メエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ―――――――――オゴブラバガァッァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」


白球は、先頭を飛んでいた天使の顔面に、横からクリーンヒットした。


天使は、吹き飛ぶことも叶わずにその場で激しく回転を始め、その後続となっていた他の天使たちをも巻き込み、僕の頭上を通り越して200mほど地面を転がり続け、そこで、ようやく停止した。


テン・・テン・・テン・・



ボールが、気まずそうに僕の屍の横に転がる。


「・・・」

「・・・」


突然の白球の乱入に、みーちゃんが何事かと眉をひそめ、秋乃とかいう大悪魔元帥がハッとした表情を浮かべた、その時であった。


遠くから、こちらに駆け寄ってくる人影があった。


「おーい!ごめんねー!飛ばしすぎちゃったー!大丈夫―!?」


キラキラとした笑顔を浮かべ、健康的な汗を額に浮かべ、肩上までの髪を揺らし、ごく普通に可愛い顔で、ごく普通に女子高生をし、ごく普通に人に接するときの


「あ“ぁ”!?なんだよ!!美春かよ!?心配して損したわ、カスが!!」


なっちゃんであった。


しかし、みーちゃんが生来の宿敵に毒舌を吐こうとするよりも一瞬早く反応する人物がいた。


「な、夏樹先輩!?」


「あれ?秋乃、あんたこんなとこで何してんの?」


秋乃とかいうハデスの化身が、なっちゃんのことを先輩とのたまったのであった。


「そ、それは・・・」


「てめぇ・・・美春・・・お前まさか、秋乃になんかしたんじゃねぇだろうな・・・?」


「えぇ、丁度ぶち殺すとこだったわ」


「あ“ぁ”!?」


「ち、違うんです夏樹先輩!私が美春様にご迷惑をおかけしていただけで!!」


「美春様だぁ?何言ってるんだ秋乃?」


「あの、その、こ、これは・・・その・・・」


「私のことが好きなんですって」


「はぁ!?」


「イヤンッ!!美春様!!」


「なっちゃんの後輩なの?」


「中等ソフト部の部長だよ、秋乃は。おい、秋乃、てめぇなぁ・・・」


「な、夏樹先輩・・・怒ってます?」


「当たり前だろうが!!何度目だこれで!?」


「んん?」


「おい、美春。今回ばかりはすまなかったな。こいつのこれは病気みたいなもんだからな、許してやってくれ」


なっちゃんの、人生初めてのみーちゃんへの謝罪であった。


「どういうこと?」


「こいつ、私にも3回告白してきたことがあるって言えば、伝わるか?」


「あぁ・・・」


「恋の病は・・・私をいつも苦しめるんです・・・」


「うるせぇぞ秋乃、またぶっとばされてぇか」


「いいえ!?」


「そういうわけだ、迷惑かけちまったな」


「別に、大丈夫よ。気にしないで」


「そうか、すまねぇな。・・・おい、秋乃行くぞ」


「は、はい!」


なっちゃんは、憮然とした表情を崩すことなく、しかし、それ以上みーちゃんに突っかかることもなく、クルリと踵を返して元きた方向へと歩いて行った。


パタパタと、秋乃が慌ててその後を追った。


「ふふ、すまない・・・か」


みーちゃんは、何やら嬉しそうに微笑み、そして、なっちゃんとは反対の方向へと足を向け、ゆっくりと歩き出す。


「次の新聞では、ソフト部の特集でも組もうかしら。ね、なっちゃん?」


軽やかな足取りで去っていくみーちゃんの背中は、キラキラとしていて、なんだか、とても綺麗だった。













その夜、安らかな顔で体育館裏に横たわる僕を見つけてくれたのは、またしても、定年が間違に迫った用務員の小林さんであったという。




ピコーン、ピコーン、ピコーン・・・


美春「ここね」

ガチャッ

美春「やっほー!龍くーん!」

龍二「みみみみ、みーちゃん!!!?なんでここに!!!!?」

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