表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第3理科室 「先生!!小林さんにお歳暮送りたいんですけど住所教えてくれませんか!?」

隼人「あの時のパンツどうした?」

龍二「なっちゃんのお父さんの棚にしまっといたよ」

「なっちゃん、こんなの、やっぱり間違っている」


「あら、怖気づいたの?」


「そんなんじゃないさ、ただ、僕は君が傷つくのが耐えられないだけだ」


「ふぅん・・・そうやって、美春のことも口説いてるのね」


「そんな!?そんなことするわけないだろ!」


「じゃぁ、早くシテよ、龍二」


「・・・」


「やっぱり、怖いの?」


「違う!僕は・・・」


「やっぱり、私よりも美春の味方なの?」


「・・・」


「別に、私は・・・」


「やめようよ」


「・・・」


「やめよう、なっちゃん。こんなことをしたら、僕らは今までのような関係でいられなくなる」


「今までのような関係って、何よ」


「それは―――――――――」


「幼馴染だからって、言うの?」


「・・・」


「私は、そんなものに縛られたくない」


「なっちゃん・・・」


「幼馴染だからって、どうして我慢しなくちゃいけないの?」


「それは・・・」


「幼馴染だからって、なんで世間の目を気にしなきゃいけないの?」


「でも・・・」


「私は、世間の目なんて怖くない」


「なっちゃん・・・」


「私は、もう決めたの」


「そんなに・・・」


「私が、どう思われようと知ったことなんかじゃない、もう、自分の気持ちに嘘をつくことなんかできない」


「それほどまでに、君は・・・」


「だから龍二、それ、早く入れてよ」


「君は・・・」


「お願い、龍二」


「君は」








「そこまでみーちゃんが憎いのか」








とめどない







涙が溢れた。






そして、





僕の手の上で




一匹の





カエルが「ゲコ」と相槌を打った。






「こんなの絶対おかしいよ!!!!なっちゃん!!!!」

「うるさいわね、早くその蛙放り込みなさいよ」

安藤龍二こと、僕となっちゃんは、放課後の下駄箱で押し問答を繰り返していた。

哀れなアマガエルも一緒に場をにぎわせている。

「やっぱりやめよう!なっちゃん!殺されちゃうよ!」

「返るうちにしてくれるわ」

「無理にボケようとしなくたって良いんだなっちゃん!!君にそういうのは似合わない!面白くないし!」

放課後、僕は新聞部に一人でいたところをなっちゃんに強制的に連行され、何故かアマガエルを一匹捕獲させられた上に、強引にみーちゃんの下駄箱の前まで連れてこられていた。

「みーちゃん絶対怒るよ!主に僕が怒られるよ!僕はまだ死にたくない!なんで僕を巻き込むんだよ!」

「一人じゃ、怖くて・・・」

「嘘をつくな!!!!!なっちゃんさっき覚悟決めたって言ってただろ!!見せてみろよなっちゃんの覚悟!!!」

「私、女の子だし・・・」

「関係ねぇだろ!!!!女の子が日頃の鬱憤バラシの腹いせで下駄箱に蛙放り込もうとか考えないでくれよ!!僕はまだ青春したいんだよ!!女の子には綺麗な存在であってほしいんだよ!夢を見させてくれよ!!!!!」

「あの女を痛い目に合わせてやりたい、そして、出来ることなら私は傷つきたくない」

「本音を言ってくれて嬉しいよと言うとでも思ったか!!!あんたは悪魔だ!!!正体を表したな!!!全てお見通しさ!!!」

「傷つくのは、龍二一人でいい・・・」

「それはなっちゃんのセリフじゃねえよ!!!!他人が言っていいセリフじゃぁ断じてねぇ!!!俺が、本人がいわなくちゃいけねぇんだ!!誰にも譲るつもりはねぇ!!」

「いいから」

ググッ

「蛙入れろよ、オラ」

「落ち着くんだなっちゃん、どうどう、君は女の子であって、黒髪がとってもキュートな魅力的な人だ。決して男の子の胸ぐらを掴んでガンをつけてはいけない。しかも内容がちっさすぎ。蛙いれろって、そんなセリフ聞いたことないね、僕は」

「ぶちのめすぞ?」

「君がぶち殺すと言わなかったことだけは評価しよう、簡単に殺すとか言ってはいけないからね、人として。そして僕は思うんだ、いくら相手が憎いからって放課後こっそりとそいつの下駄箱に雨蛙を放り込んで憂さ晴らししようなどと、思ってはいけない。そうさ、人として、ね」

ウィンクをしてみた。


ゴッ―――――――――


殴られた。


「痛えよ!!!!!!!!」

「フフ」

「満面の笑顔で微笑む場面じゃねーからな!!!その笑顔は感動のラストシーンまでとっておけ!!!幼馴染の顔面強打して出す笑顔じゃねぇよ!!美少女ゲームの立ち絵だったら今のシーンでその笑顔は完全にバグ扱いだ!!訂正を要求する!!!」

「ぐだぐだうるさい、ぶち殺すわよ」

「殺すって言わない約束だろ!!!駄目だよ!!!最近厳しい世の中だろ!!そんなことも君は理解していなかったのかい!!?胸ぐらつかむんじゃないよ!!やめろよ!!やめてってば!!いやっ!!はなしてっ!!!!!!ヤダッ!!!!!いやぁっ!!!」


あわや、みーちゃんが再び僕を毒牙にかけようと胸ぐらに手を伸ばし、右拳を後ろへと振りかぶった



その時




「おーい、騒いでんのは龍二かー?どこだ?」



―――――――――天使が、舞い降りたのだ。



山中隼人



僕の背丈ほどもある背の高い下駄箱郡の向こうから響いたその声は



まさしく救いの声であった。


神はいたのだ


頭上の神様は、無能などではなかった。


上に目を向ければ、神様が「せやろ?」とほくそ笑む


いつになく頼りがいのある表情を浮かべていた。


幼馴染のなっちゃんに、これまた幼馴染のみーちゃんへの嫌がらせの片棒を担がされかけ、今にも人身御供としてその生涯の幕を下ろしかけていた僕に


天使が


舞い降りた




やつは




男だが




まぁいい、この際だ、目をつぶってやる、感謝しろよ隼人



できれば、




女の子の天使が良かった・・・




「おーい、ここか?」


ひょこっと、下駄箱の影から隼人が顔を出した。


「・・・」


「・・・」


「・・・は、はや・・・たすけ―――――――――」


三人の視線が交錯し


隼人が笑顔を浮かべ


「じゃぁな、龍二」


そのままひょこっと消えていった。


「待てこらああああああああああああああああああああああああ!!」

「無理だ、諦めろ、すまなかったな、一歩遅かったようだ龍二。安らかに眠ってくれ」

「まだ諦めるような時間じゃない!!!顔をだせ!!!下駄箱の影に隠れるんじゃない!!!助けてくれ!!僕らの友情はそんなもんだったのかい!!!?」

「命には変えられない。世の中は無情だな、龍二。安心しろ、骨は拾ってやる」

「裏切り者!!!言ってやる!!!お前の秘密全部ばらしてやる!!道連れにしてやる!!!段々声小さくなってるぞ!!!お前本当に離れていってるな!!!!帰ってこい!!!言っちゃうぞ!!!本当に言っちゃうぞ!!!言うからな!!!なっちゃんのこともみーちゃんのことも全部いってやるかr―――――――――」

「私の」

「ァンッ」

グィッと、なっちゃんが手に力を込めた。

「なに?」

「覚えておりません」

僕は生にすがる本能に負けた。

隼人のことも道連れにしてやりたかったが、ここは国会議員に習ってシラを切り通すしかあるまい。

命あっての物種、命あっての復讐である。

僕の本能と、持てる力の全てをもってして、ここは生き抜かなければならない。

出来るか、できないかではない。

やるか、やられるかだ。

ちょっと

違う気もするが

まぁ、いい


「言えコラ、私に、私のものに、私の事を、何をした」

「覚えておりません。あとそのいい方、変です。文法とか、知らないんですか?」

「・・・ほう?」

「嘘じゃありません。この目を見てください」

「汚ねえ目だ、腐ってやがる」

「最近暑くなってきましたからね。ナマモノには厳しい季節ですよねほんと」

「全身生肉に変えて腐らせてやろうか?」

「はっはー、そのセリフはイマイチだな、なっちゃん。君の殺気が伝わるよりも前に、僕が君は馬鹿なんだなぁと感じてしまう。陳腐を通り越しているよ。君のセリフのほうが腐っているんではないかい?」

「私が、なんだって?」

「覚えておりません」

「死にたいのか?」

「生きたいです」

「じゃぁ、言えよ」

「言ったら死んじゃうと思うんです」

「どのみち、死ぬよ?」

「僕たちは、どこで道を間違えたんだろうねなっちゃん。目の前には広大なルートが広がっていたはずなのに、今はもうバッドエンドにしか繋がっていないなんて。こんなのあんまりだよ」



「もういい」


「あ、そう?悪いね。さよなら。手、離してくれると嬉しいな」


「死ね」


「おや?」



空気を切り裂く音が




僕の耳に届き



目の前に



なっちゃんの



拳が




「俺は!!!!!!!!!!!!」


その時



声が響き渡る



ビタァァァアアアアアッ!!!!!



と、なっちゃんの拳が止まり


僕の顔面に



風圧がかかる


命が助かった喜びに打ち震える暇もなく


僕たちは声の方向へと目を向ける



顔面を蒼白にし


恐怖に震え


脂汗を流しながら



隼人が、立っていた




あぁ、


友よ



僕は



君のことを信じていた



きっと助けに来てくれるって



僕らの友情は





死を乗り越えた



「俺と龍二は!!!!!」


・・・と?



「中学生の頃に!!!!!!!!!」



やめろ




「魔が差して!!!!!!!!!!」



やめろバカ




「夏樹!!!!!!!!!!!お前の!!!!!!!!!!」




ヤメロ!!!!!!!!!!





「部屋に忍び込んで!!!!!!!!!!!!」



隼人!!!!!!!!!!!!!!!





逝くなら!!!!!!!!!!!!!!!




お前だけにしろ!!!!!!!!!!!!!!




僕を!!!!!!!!!!!!!!!




巻き込むな!!!!!!!!!!!!!!!!!




「お前の!!!!!!!!!!!!!!!!!」



「やめろ隼人おぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」




「パンツをかぶって遊んだことがある!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




神よ




なぜなんですか





僕らは





普通に生活して




ちょっと可愛い女の子に恋をして




ある日突然うちにメイドロボが送り届けられて



いちゃいちゃしていたら彼女にみつかっちゃって



なんだか恋のトライアングルに巻き込まれて




血の繋がっていない妹が突然現れて




異世界から美少女勇者が降臨して僕に恋をしちゃって




それをおってきた美少女魔王が僕に恋をしちゃって




ウハウハハーレムを作りたいだけなのに





どうして





こうも




暴力的な幼馴染しか





僕らの周りには




―――――――――いないのですか




その日の夜、下駄箱付近で血を流して無念に顔を歪めるボクらを見つけたのは


定年の迫った用務員の小林さんだった。



ありがとう、小林さん。



後日、小林さんは「なんか頭上から助けてあげてー!!助けてあげてーー!!って必死な声が聞こえたもんでさ、様子見に行ったんだわ」と、語ったという。




美春「蛙?別に?好きよ?この間食べたわ?」

龍二「嘘ついてたのかあんた!!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ