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満月の花婿①

 「結婚おめでとう」

 皆が私たちを祝福してくれる。これ以上ない幸せ。

「私、お嫁さんになるのが一番の夢だったんです」

「今日夢がかないますね。素敵な結婚式にしましょう」

 プランナーさんとの話も弾む。これも夢の一つだった。

「では、ファーストミートのお時間ですのでご移動おねがいします」

 旦那さんにウエディングドレス姿を見てもらう。どんな反応してくれるのか楽しみだ。

「じゃあドア開けますね」

 これが私の幸せな人生なのだ。


 自分をさらけ出すのが怖かった。自分を偽らなければ友達ができないんじゃないかと怯えていた。

 高校入学後、クラスメイトに自分から話しかけられず、友達もろくにできいないままぼーっとした生活を送っていた。このままでいいのかと不安になる。逃げてしまいたい。そう思って教室を見渡しながら席に座っていると一人の男子と目が合った。一瞬で逸らしたが、視線を感じる。もう一度目をやると、明らかにこっちを見ている。いてもたってもいられなくなった私は勇気を出して話しかけた。

「あの、何かありましたか?」

「なんかつまんなそうな顔してるなーと思って」

 そんな顔をしていたのかと恥ずかしくなる。

「いやいや恥ずかしがらなくても、俺もつまんないなーって思ってたから」

 ふと思う。普通にこの人と話せていると。こんな自分がいることが嬉しくて自然と笑みがこぼれた。

「笑ってたほうがいいじゃん」

 急に彼に言われる。

「本当はこんなおとなしくないんでしょ。自分らしくいなよ」

 はじめて言われた言葉。この人ならありのままの私を受け入れてくれるのかもしれない。学校に来るのが少しだけ楽しみになった瞬間だった。そして彼が私の人生を大きく変える。


 「バスケ部って恋愛禁止らしいよ」

 クラス中がその話で持ちきりになっている。今年度から顧問が変わったバスケ部は、恋愛禁止というルールをに新たに作ったらしい。強豪校ということもあり、より顧問の気合が入ってしまったのだろうか。

「聞いたっしょ?恋愛禁止だってさー」

 彼もその話をしてくる。

「今時にすごいルールだよね…」

「俺バスケ部入るのにお先真っ暗だわー」

 不意な一言に言葉が出なかった。もしこれから先、彼を好きになったとしても、引退するまで付き合うことができないのだ。

「なんだよ急に黙って。俺のこと好きになんてならないだろ」

「当たり前じゃん」

 好きになれない、なってはいけない。急に突き付けられた現実に少し驚いたが、今まで人を好きになったことのない私には無縁な話だった。


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