バンドにトラブルは付きもの!?
ある程度の教室やクラスを回り、学校案内が終わったところで小木曽さんがうちの軽音部に興味を持ってくれらしい。部室がる別館二階にある音楽実習室に向かっていた。そんな時だった。
「あ、あの、、。想音さん。」
「はい?」
「あ、、えっと。急なんですけど下の名前で呼んでもいいですか?」
いきなりそんなことと言われた。急に距離が近くなった気がする。まぁ、呼びやすいほうで呼んでほしいから了承はする。
「好きに呼んでくれていいよ。」
「では、弓弦君で。」
「はいよ。」
そんな会話をしながら歩いていれば気が付けば実習室の前についていた。だが、今日はやけに静かであった。いつもなら風音のベースの音が聞こえてくるが一切聞こえてこない。それに、先輩も来ているはずなのに静かだ。すると、中から声が聞こえてくる。
『、、、だから!私たちに、、かづ、、、ないで!』
『なんで、、、に怒るんだよ。』
どうやら風音が中で誰かと喧嘩しているようだ。多分あの先輩だろう。それか、あの人が誰か違う人を連れてきたのかもしれない。そうだったら厄介なことになるな。
そんなことを気にしながら中に入ることにした。
「小木曽さん。少し待ってて。」
「?、、わかりました。」
キョトンとした顔でこっちを見つめている小木曽さんを背にして中に入る。そこには、先輩と言い合っている風音だけだった。他に誰かいないか周りを見たが、今二人だけらしい。
すると、二人が扉が開いたことに気が付いてこちらに目を向ける。
「あ、弓弦来たんだね。てか、この先輩連れて行ってくれない?」
「弓弦~、久しぶりだな。元気にしていたか?それとも私に会いたくてうずうずして待ちきれなかったか?」
「そんなことないですよ先輩。それよりさっきなんの言い合いしてたんですか?思ったより声聞こえてましたよ。」
「それはこいつが!」「この人が!」
「同時に話さないでくれ。それにお客さんも来てくれてるんだし。」
そうすると二人とも静かになった。さすがに廃部寸前のところに誰かが入ってきてくれるかもしれないんださすがに静かになる。
これくらいなら、中に入れてもいいかなと思い外に出る。そこには目を輝かせて待っている小木曽さんがいた。
「ど、どうしたの?」
「い、いえ。なんか楽しくて。」
「まだ、何もしていないけで、、、。」
「それでもです。」
「そうか。じゃあ、入ってきてくれ。」
鞄をさりげなく受け取りながら小木曽さんを中に入れる。その瞬間背筋がゾッとする何かを感じた。そっと振り向くとしっかりと笑っている風音と笑っているのに心の底では全く喜んでいない先輩がいた。
なるほど、、、この殺気は先輩のものか。そんなことを思いながら紹介を始める。
「えっと、、、体験入部に来てくださった小木曽詩織さんです。」
「初めまして、小木曽詩織です。う、歌うのが得意なので体験をしに来ました。」
「へぇ、小木曽ちゃんってボーカルやりたいんだ!うち、ちょうどボーカル居なかったから入部してくれたら助かる。」
「ボーカルね…。楽器はできるの?お、おぎなんとかさん。」
「小木曽です。」
「あぁ、そうそう、小木曽さん。で、なんかやってた?」
「アコギなら少しやってました。」
「なるほどねぇ。」
アコースティックギターか。なるほど。だからだろうかボーカルに興味があるのだろうと思った。これは単純に俺の中の偏見でしかないがアコギをやっている人は弾き語りとかで歌が上手いイメージがある。これはかなり有力な人が部活に入部してくれるかもしれない。
そんなことを考えていると気が付けば何故か彼女はキーボードをやっていた。
「え?キーボードできたの?」
「あ、うん。なんとなく教えてみたら出来ちゃったみたい。」
「これは才能の塊だね。弓弦くんとは違うね。」
「風音…。その話はやめてくれ。」
そうすると先輩がずっと肘で脇腹を突いてくる。一瞬何がしたいのかわからなかったが多分普通にイジラれているんだろう。
「ちょっ…痛いっす。」
「知るか。また女たぶらかして。」
「そんなつもりはないっす。てか、たぶらかしてもないっす。」
「何話しているんですか?」
気が付けばさっきまでキーボードをやっていた小木曽さんが俺たちの背後に立っていた。
「うわっ!びっくりした。小木なんとかさんか。」
「小木曽です。」
この先輩はいつになったら小木曽さんの名前を覚えるのだろうか。すると風音がベースとギターを持っている。弾かせようとしているのだろう。
アンプに次々とコードを繋げていく。昔はどこに繋ぐのかすらわからずに戸惑っていた風音が一人で繋いでるのを見ると成長を感じる。そして、準備ができたのだろう一音ずつ音を確認している。
最初はうまく弦が抑えられていなくて違う音を鳴らしていたコードすらも綺麗に引けている。昔はコードを余りわかっていなかったが今は一人で曲を作れるらしい。
そのような感傷に浸っていると。声をかけらた。
「どうしたの弓弦?こっちばっか見て。」
「いや、風音もかなり上手くなったなって思って。」
「そうだねぇ、昔は楽譜とか見てもわからなかったもん。」
「私も彼女にはかなり手を焼いたねぇ~。」
先輩が口を出した瞬間また風音の機嫌が悪くなった。
「チッ!」
「!? ねぇ、今の聞いた?今私に向かって舌打ちしたよ!?」
そういってまたくっつきに来る。この人は常にくっついていないと死ぬのか?と思いながら風音のほうを見る。
そこにはベースを持っている風音がとギターを持っている小木曽さんが居た。なんだろうこの二人結構似合うな。うちに部活の顔はこの二人で決まりだな。するとまたしても脇腹を突かれる。
「どうしたんすか先輩。」
「…。なぁ、その先輩呼び止めてくれよ。また、名前で呼んでくれよ。」
「…。今更無理っすよ。先輩から壊したんでふからこれは償いだとでも思ってください。」
「…。」
先輩はそれからはどこか穴が空いた様な感じになっていた。俺自身も少し申し訳ない事をしたと気になったが、これは先輩が起こした一つの罪である。
だからこそ、俺は壁を作る。頑張ってこの壁を乗り越えようとしてもまた、遠のかせるだろう。
すると勢いよく扉が開く。扉の前にいたのは足を開き、右手を突き出し左手で髪をかき上げて立っている二人がいる。
「おぃーす!文谷千弦ただいま参上!!」
「続けておぃーす!文谷千弘も参上です!」
千弦とその妹とである千弘の二人である。千弦はこの部活でギターをやっている。千弘は…どこの部活にも入らずにただ千弦についてきているだけでこの部活に入り浸っている。
すると風音はベースを置き、こちらに来る。そして、千弦の耳を引っ張る。
「ねぇ、いつも扉は静かに開けてって言ってるよね?」
「あ、いえ、、そのぉ…。」
「それに千弘ちゃんもこれに付き合わなくていいんだよ?」
「いえ、義姉様。私は自分の意思で兄の真似をしているのです。」
なんか凄くお母さんを感じる風音の後ろに小木曽さんが付いて来ていた。なんかピョコピョコしている。多分、何か聞きたいことがあるのだろうが風音が千弦を説教しているせいで話しかけれないのだろう。
それにしてもピョコピョコしてる小木曽さん小動物みたいだな。
そんな事を思っていると。
「風音ぇ〜。新人ちゃんが後ろで困ってるぞ。」
すると風音は後ろに振り返ると小木曽さんが待っていることに気がついて千弦の耳を離し小木曽さんを連れてベースにところに戻っていく。
「天音先輩助かりました!!」
「いやいや、千弦君には借りがあるからねぇ。」
「ん?千弦って先輩に借りあるのか?」
「いや!弓弦には関係無いぞ!」
そう言って中に入っていく。
ずっと思っていたのが千弦について来ている千弘は何をしているのだろう。と思っていると急に先輩が首を絞めてくる。
「な、なんすか?」
「いや…なんか妬いた。」
「今更ですか?」
「うん。」
静かにうなずいた先輩を横目に前を見る。
ベースを弾く風音とギターを弾く千弦に変わっていた。いつもの部活の風景である。しかし、小木曽さんが近くで二人の演奏を見ていた。
ここにボーカルが入ることを考えるとまた、新しく歌詞を考えたりしないといけないが本格的なバンドになるだろう。
しかし、いつになったら俺の首は解放されるんだろう。
「あ、あの先輩。いつになったら首放してくれるんですか?」
「そうだな…。じゃあ、久しぶりに私の名前を呼んでよ。」
すこし考えたが急に締める力が強くなったので考えてる暇じゃなくなった。
「…。おいさん。」
「ん?何か言ったかい?うまく聞こえなかったな。」
「あ、碧さん。」
「はぁい、なんですか可愛い後輩君?」
ニコニコした顔をして先輩が首を放してくれたがそれでも背中に乗っかろうとしてくる。
本当に何なんだこの先輩は…。
そして、気が付くとベースとギターの音が止まっていた。なぜ止まったのか気になり目をそちらにやると何故かニヤニヤしながらこちらを見ている。
何を見ているんだろうか。この人と付き合う前にもこんな状況が続いていた時もこのような状況があった。
すると小木曽さんが急に手を挙げた。
「急なんですけど質問してもいいですか?」
「ど、どうしたんだい?」
「部活には関係ないんですけど弓弦君ってその先輩と付き合っているんですか?」
おっと?この子は急に物故んだ質問をしてくれるね。流石に周りのあいつらですらビックリしすぎて固まってしまった。そして、質問に出てきた本人の先輩はすごく嬉しそうにニヤニヤしている。質問した本人は周りがあまりにも反応がなさすぎてキョトンとしてしまっている。
ただ、今ここで否定しなければ小木曽さんの中で俺はこの先輩とまた付き合ってしまっていることになってしまう。
なので、とりあえず否定しておく。
「いや、付き合ってないよ。急にビックリしたな。」
「そ、そうですか。その先輩はいつもこんな感じなんですか?」
「まぁ、そうだねぇ。」
「昔は付き合ってたし。」
急に先輩は後ろから顔を出しいつもより低めのトーンで話に出てきた。
すると、小木曽さんがまた質問をしてきた。
「そうなんですね、でも別れた後でもその距離感ってすごいですね。」
「でしょ!」
うわ、なんだろあからさまにテンションは上がったし。なんか、小木曽さんと先輩の間になんか火花が散っている気がする。
そんなことを思っていると部活終了のチャイムが学校全体に鳴り響く。それと同時に、部室の扉が開く。
「おぉい、今日の部活は終わりだぞぉ。先生を早く帰らせろ。」
「あ、笠井先生。」
「おう、早く片付けンるんだぞ…って、小木曽ここにいたのか。」
「はい。最初から気になってた部活だったので体験に来てました。」
「そうか。まぁ、無理せずに色々やってみんだぞぉ。」
そういって笠井先生は行ってしまった。
相変わらず気だるそうなだなと思っている先輩が話しかけてくる。
「ねぇ、今日さ。君の家に行ってもいい?」
「え?何でですか?てか、急すぎません?」
「そりゃ、急に行きたくなったからね。」
この先輩はいったい何を考えているんだろう本当に。そうすると小木曽さんからも急に声をかけられる。
「あの、私も行きたいです!」
「お、小木曽さんもか。まぁ、今は家に俺と妹しかいないしいいですよ。」
『やった!!』
この二人はバチバチなのか気が合うのかまったくもってわからない。
そして、部活を終えるために備品などを片付ける。片付けるといってもギターをケースにいれて、アンプの埃とかを掃除するだけだからすぐに終わった。部長であるために鍵を返しにいかなければならない。
皆が部屋から出た後、一応忘れ物がないかの確認をする。
「よし、閉めるぞ。」
「大丈夫よ。」
「りょ。」
鍵を閉め、本館の職員室に向けて歩き始める。途中で、風音と文谷兄妹と別れる。
「それでは、部活は終わりです。お疲れさまでした!」
「しゃー!終わり~。」
「兄よ今日もゲーセンによろうぞ!」
「行くか~」
「お疲れ様。小木曽ちゃんまたね!」
そういって、風音が兄妹の後ろについていく。それを見送りながら俺たちも職員室に向かう。