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バニラ  作者: 高野豆腐
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転校生は突然に

「高校生活ってのは案が一瞬なんだぜ?」


 中学の終わり…俺の進学先の先輩はそんな一言を残していった。自分にとっては関係のないことであると思っていた。そんな彼女の一言はずっと俺のこころのすみで残っていた。高校二年の入学式を迎えた俺こと想音弓弦おとゆずるは登校の準備をしながら思いだしていた。


「兄ぃ~そろそろ行くよ~!!」


 暢気に準備をしていると下から声が響いてきた。どうやら時間がないらしい。そこまでギリギリに起きた気がしなかったが急かされながら動いてるときに不意にスマホが鳴った。覗いてみるとそこにはあの言葉を残した先輩からの連絡が来ていた。


『よう、今日部活行ってもいいか?』

 たったそれだけの連絡あった。

『いいですよ。どうせ暇なんで。』


それだけを返信して部屋を出た。玄関にはジタバタしながら待つ妹とが居た。名前は美揮みき。中学校三年だ。


「兄ぃ、遅い。」

「ごめん、行くか。」

「仕方ないな、今日の晩御飯をさばの味噌煮で許そう。」

「相変わらず渋いな」


 中学三年とは思えないぐらい渋い料理が好きなのがうちの妹だ。しかし、今日に限って煮込み料理か。正直炒め物の方がうれしかったが,可愛い妹のためだなんとか言い訳して先輩から逃げようかな。

 そんなことを思いながら、玄関を開ける。今日は春にしては暑いと言える。入学式に来ていくブレザーは流石にあっちに着くまで脱いでいこうと鞄を置いたその瞬間に声をかけられた。


「あのぉ、」

「どうした美揮改まって……。どちら様ですか?」


 そこに立っていたのは美揮ではなく見知らぬ少女であった。着ている服がうちの学校を除けば本当に見知らぬ少女である。


「兄ぃ。その女の人だれ?」

「いや、俺も知らんがな。」


 こそこそと二人で隠れながら喋っているとまた声を掛けられらた。


「あ、急にすみません。今日から隣に引っ越してきた小木曽詩織おぎそしおりって言います。」

「そうだったんですね。すみません。それでどういった用件で?」

桜館おうかん高校ってどの辺にありますかね?」


 桜館高校。俺が通っている学校だ。学部は普通科しかない。所謂自称進学校みたいなところだ。しかし、今頃転校してくるとは、中々、大変な気がするが。まぁ、他人を心配してる暇はないし。とりあえず付いてきてもらうか。


「桜館ですか?うちの兄とおんなじ学校ですねぇ。兄についてけば分かりますよ!じゃ、頑張って。」


 そういってうちに妹はそそくさと足早に学校に向かって行ってしまった。

 妹よ。兄ちゃん女性が苦手って知ってるだろ…。見捨てるなよ。そんなことを思いながらも彼女を高校に案内することにした。


「こっちです。」

「あ、ありがとうございます。」

「いえ、」


 歩き出して二・三分、、非常に気まずい。何も話すことがないし、何ならさっき会ったばっかりというお得意の人見知りがバリバリに発動してしまっている。どうしよう、あと六分ぐらいは歩くんだよな。気まず過ぎるだろ。誰か助けに来てくれ。そんなときだった。


「あ、あの、想音さんは何か部活やってるんですか?」

「え、あ、うん。」

「ど、どんな部活入っているんですか?」

「け、軽音楽部?見合いな感じなところ。」

「そ、そうなんですね。」


 会話が終わった。あまりにも早すぎる。部活について聞くってことは、部活に入るんかな。正直人が少ないから入ってほしいけど……。歌唄うのが上手いのか、わからないし。正直、歌が上手くても人前で歌えるかもわからない。これ機に少し質問してみるか。


「あ、あのさ、、小木曽さんって、歌上手い?」

「た、多分上手いほうなのかな?」

「そ、そうなんだ…」


 また会話が止まった。ここまで、聞いておいて今更、後に引くにも引けないな…。腹くくって聞くか…。


「あ、、あの…」

「わ、わたし、、軽音楽部気になります。」

「へ、、?」


 俺の聞き間違えじゃなければ、彼女は軽音楽部を少しは気になっているという。つまりは、上手くいけば彼女を誘える。今のうちに少しだけ釘を刺しておくか。


「よかったらさ、今日の業後に部活来る?」

「は、はい!行かせてください。」


 思ったより食いつきがあって嬉しいことだ。これで、バンドが組めるな。最高だな。

 そして、想音達は学校に着く間に少しだけたわいのない会話をして、学校に着いた。


「私はどうすればいいですかね?」

「多分職員室に行けば大丈夫だと思うよ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「いえ、では、また、、」


 そう言って想音は下駄箱に向けて歩き始めた。


「なんか、見られてる気がするけど気のせいかな。」


 別に目立つような存在でもない俺がうやけに人い見られてる気がする。あれか、自意識過剰なだけかもしれない。うん、きっとそうだ。俺が目立つこと何てもうないはずだからな。

 そんなことを思っていたが、下駄箱に着くとより視線を感じる。ここまで来ると気のせいとも言えなくなる。そんな時だった。


「ゆず!!さっき一緒に歩いてた女の子誰だよ!!」


 そう。俺の友達である文谷千弦ふみやちづるである。彼とは小学校からの友人であり唯一の存在である。顔面はイケメンで運動もでき音楽もできる。そんな完璧の具現化みたいなやつだ。だが、少しなんだろ俺みたいに少々オタクっぽいところが出てしまう時がある。それさえなければパーフェクトな人間である。


「う、家の隣に引っ越してきた人だよ…。」

「何て名前だ!!」

「た、確か小木曽って苗字だった気がするよ。」

「そうか!!!ありがとう~!!」


 そう言って千弦は職員室の方へ走っていった。


「てか、もうすぐホームルーム始まるのに職員室の方行って大丈夫なのかよ。」


 そんなことを思いつつ俺は自分のクラスに歩いていく。さっきまでの視線は気が付けば居なくなっていた。やっぱり、自意識過剰だったのかもしれない。俺に視線が向くことなんてあの事件の時ぐらいだし。みんなの記憶からはスッと忘れられるだけだ。

 そんなこんなで気が付けば自分の教室にたどり着く。扉を開けるのを戸惑っていると後ろから声をかけられた。


「あ、あの…千弦先輩知りませんか?」


 見た感じは小学生くらいの見た目の子が立っていた。千弦に用があるってことはサッカー部のマネージャーだろう。


「今、職員室の方にいると思うよ。さっきあっちに行ってたからね。」

「そ、そうですか。ありがとうございます。」


 そういってそそくさと走っていった。いったい何があったのか聞きたかったが、自分には関係ないからいいやと思い扉に手をかけて開ける。この瞬間は何時になっても慣れない。前にあった出来事のせいで扉を開けただけで教室の中の生徒に誹謗中傷された時の背景が蘇る。


「ねぇ、早く入ってくれない?」


 後ろから声を掛けられる。振り向くとそこにはうちのクラスのマドンナ的な存在の浅見優子あさみゆうこが立っていた。


「ご、ごめん。」

「何、、まだあの事気にしてたの?」

「、、、。」

「まぁ、仕方ないよね。でもね、あんたは悪くないよ。」


 そういって、浅見は教室のドアを開き中に入っていった。


「悪くないよ、、か。優しいな。」


 そんなことを思いながら流れに合わせて教室の中に入っていった。教室は別に俺の事を気にしていなかった。半年もすればすぐに忘れていくものなんだなと感じた。自分の席に行って何もされていない。


「あ、おはよう。今日は千弦と一緒じゃなかったの?」


 席に着くと調月風音しらつきかざねが声をかけてきた。


「おはよ、俺が一緒に来た転校生の事追いかけて職員室に走ってったよ。」

「そ、そうなんだね。」


 少し落ち込んでいるように見えるが、俺には関係ない。風音と千弦は小学校からの友達だ。いつも一緒に遊びに行くときはいつもこの二人だった。今の軽音楽部の部員もこの二人しかいない。


「今日も部活するの?」

「うん、なんか転校生の子も興味があるらしいから。」

「へぇ、そうなんだ。てか、なんで転校生の事そこまで知ってるの?」

「そりゃ、一緒に来たからね。」

「は!?」


 急に大きな声を出す風音に驚いたクラスメイトがこちらに振り向く。

 頼むから目立つようなことはしないでほしい…


「な、なんで一緒に来てるのよ。」


 声を小さくしながら俺に訪ねてきた。


「隣に引っ越してきて、今朝急に声かけられて連れてきた。」

「はぁ、あんたがよりによって女子と一緒になんてね。考えたこともなかったわ。」

「いや、俺もだが、、。」

「ふ~ん。まぁ、いいや。」


 そんなことを呟きながら前を向く風音。なんかいつも通りだなぁ、と感じた。俺と話す時だけは風音は何時もそっけない。まぁ、別に悲しくはない。いつもの事だからだ。だけど、千弦と話している時だけは世界が違うように見える。ささやかながら応援したい。そんなこんなで4年は立っているが千弦は気が付いていないらしい。まぁ、特定の人だけ見ないのが千弦らしい。

 そんなことを考えていると予鈴が鳴る。


「お~う、お前ら席に着けよなぁ。」


 担任の笠井明人かさいあきと先生が入ってくる。千弦は教室にはいない。どこ行ったんだろうか。


「おい、文谷はどこ行った?」

「朝は教室居ましたよ~。」「急にいなくなりましたぁ。」

「そうか、、。まぁ、いいか。んで、今日なんだが転校生が来た。」


 クラス転校生と聞きそわそわし始めている。俺はもう顔とかも知っているから何とも言えない。風音もそわそわしている。


「んじゃ、入ってきてくれ。」


 そして、先生の声掛けとともに教室のドアが開く。そこにいたのは、、


「うぇ~い。俺でぇす!!」


扉を開けて入ってきたのは千弦であった。教室のみんなは大笑いしている。風音に関しては困惑している。


そうすると先生が扉の方に近ずき、千弦を通り過ぎる。廊下の方に出ていき誰かに話しかけている。多分あの人だろう。そんなことを考えていると先生が教室に戻ってくる。


「んじゃ、千弦は席に戻れ。入ってきな。」


 先生の一言にクラスは皆、扉の方を凝視ししている。そして、扉が開くとそこにはやはり今日送ってきた彼女であった。


「はい、じゃあ自己紹介よろしく。」

「え、あ、はい。静岡から来ました。小木曽詩織です。」


 声を聴いた瞬間。クラスの男子は大盛り上がり。女子もかわいいと喋っている。確かに改めてみるとかなりかわいい。いや、めちゃくちゃかわいい。

 そうするとクラスの陽キャグループのリーダーが質問をしている。


「は~い!!質問です。小木曽さんって彼氏いますか!!」

「か、彼氏ですか?いません…。」

「聞いたか!?いないってよ!!俺彼氏立候補します~。」


 陽キャグループのリーダーが大声をあげてそういう。小木曽さんは驚いててんやわんやしている。

 まぁ、転校していて最初の質問が彼氏いるかいないかなんてそれは驚くよな。

 そんなことを思っていると先生が喋りだす。


「おい、、もっとましなことを質問しろ。まぁ、とりあえず席が想音の隣が開いてるからそこに行ってくれ。」

「あ、はい。」


 まさかの俺の隣という。俺ですら予想していなかったので驚いていたがクラスの奴らの方が驚いていた。気が付けば横には小木曽さんが立っていた。


「えっと、横失礼します。」

「こんな席でよければ…。」


 こんな会話をしていると前に座っている風音が振り向いてきて話しかけてきた。


「ねぇ、あなたたち知り合い?」

「いや、今日の朝送ってきた時が初めてだよ。」

「そう、、。」


 それだけを聞いて風音は前を向いた。その前に何かつぶやいてた気がしたが気のせいだろう。

 そんなこんなで授業などが始まっていく。俺は隣と言うことで常に教科書を見せて居た。そして、気が付けば午前授業はすべて終わっていた。いつもなら長く感じる授業はすべてあっという間に終わってしまった。もう昼である。


「ゆず~!!一緒にご飯食べようぜ!もちろん、小木曽さんも。」

「わ、私は一人でも…。」

「いいからいいから!ご飯は人が多い方がいいからね。」


 千弦はそう言って俺と小木曽さんの席の間に椅子を置きお弁当を開けた。風音も何事もないように俺の机にお弁当を広げていく。あれ?俺の場所なくね?いつもの事だけども…。


「相変わらずゆずの弁当うまそうだよな、自分で作ってるのによくバランス考えるぜ。」

「確かに自分だけだったら茶色くてもいいけど、妹がいるからな。」

「そうよね。さすがだわ。誰かさんはいつもまっ茶色だもんね。」

「うるせぇ!!茶色い方がうまいんだ!!」


 いつも通りの会話の内容である。小木曽さんはこの会話を聞きながらお弁当を少しづつ食べていた。


「小木曽さんはお母さんがお弁当作ってくれてるの?」

「私は時間があれば手作りします。今日も手作りです。」


 そう言ってお弁当を見せてくれた。そこにはザ・女子高校生といったお弁当だった。いろいろな食材が彩りよく並べられていた。


「すごーい!こんなきれいに並んでて、私も料理勉強しないと。」

「お前はやめとけ。人が一人ずつ犠牲になってしまう。」


 確かにそうだ。風音の料理は二回食べたことあるが。あれは人に食べさせれないし、料理しない方がいいとまで言える。


「ちょっと、二人とも何感心してるのかしら?」

「なんもないぞ。」

「うんうん。何もない」


 そして、昼休みも何事もなくあっという間に過ぎて行ってしまった。午後からの授業も何事もなく終わった。千弦が爆睡している以外はいつも通りだった。掃除もちゃちゃっと終わらせてあとは部活をして帰るまでになった。教室に先生が入ってくる。


「よし、俺からの連絡は特にない。んじゃ、みんな気をつけてな。」


 先生はそのまま児湯室を出て行ってしまった。


 俺も部活に行くために荷物をまとめていると小木曽さんから声をかけられた。


「あ、あの、、学校案内してくれませんか?」

「俺?」

「そうです。」


 正直めんどくさいから断りたいが、今日は部活にああの人が来るのを今思い出したからつい反射的にいいと言ってしまった。


「て、ことで先に部活に行っててくれ。」

「なんで、私に言うのかしら?」

「千弦は今日も陸上部行ってから部活来るだろうし。」

「まぁ、確かにね。わかったは先に行ってあの人といろいしとくわ。」

「すまん。」


 風音はそれだけを聞き、鞄を持って職員室に向けて走っていった。なんだかんだ、あの人と仲いいしなんとかなるだろう。


「じゃあ、行こうか。」

「お願いします。」


 俺と小木曽さんが教室から出るときにクラスメイト全員にめっちゃ見られた気がした。確かに転校初日に一緒に教室を出て行ったら皆気になるだろう。

 教室を出て様々な場所を回った。俺らの教室がある本館は三階建てである。そして、専門的な教室が集まっている本館がある。本館は四階建てである。ちなみに、俺の部活は本館の二階にある。そして、外のグラウンドと近くにある体育館と武道場に向かった。今の時間帯はどこの部活動も活動している。


「とりあえずこんなものかな。なんか気になるのある?」

「軽音部に行ってみたいです。」

「そうか。じゃあ、荷物取りに行こうか。」


 クラスに戻る先ほどまでいた、クラスのみんながいなくなっていた。自分の席に近づき鞄をとって、扉を開ける。後ろから小木曽さんも付いてきている。


「じゃあ、行こうか。」

「はい。」


 そして、音楽実習室に向けて歩き出した。

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