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また空間が歪む。そして徐々に、周りの喧騒と剣戟の音、怒号や悲鳴が鮮明になっていく。
さっきは動転していて気づかなかったが、周囲は歩兵がほとんどでどうやら自分の服装を見るとやや劣勢のようだ。
ここは一発僕の魔法で!!
とかカッコ良くやってみたいけど結局ゼータさんには紋章の使い方とか何も教えてもらえなかったからな。
いきなり実戦で試すには不安しかないけど、せっかく異世界に転生したんだからね。なんとか生き残らないと。
えーと、そういえば紋章ってどうやって使うんだ?詠唱とかいるのかな?そもそも重力系ってどうやって攻撃すればいいんだ??
わからないからとりあえず、紋章は計算に入れずに生き残るしかないよね。よし、じゃあいっちょやってみるか!!
そうして、シンの第二の人生は始まった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「いたぞ、こっちだ!殺っちまえ!!」
やっぱり無理だよ!!いきなりは無謀だった。せめて、チュートリアル的なものをクリアしてからじゃないと・・・
レベルが違いすぎて話にならないよ!!
さっきからシンは、弱音を吐きながら逃げ回っていた。
死体にまぎれ、岩に隠れ、泥をかぶりながら。
それでも必死に逃げた、逃げて逃げて逃げた。
なぜかって、それは誰だって死にたくない。それにシンはまだ魔法を使ってない。そう、魔法を使えずに死ぬものか!
それがシンの今の原動力だった。
しかしついに追い詰められた。絶体絶命といってもいいだろう。後ろは崖。前は、敵が3人。多分強くはないのだろうがとても今のシンには倒せると思えない。
敵の中の1人が斬りかかってきた。
「死ねぇ!!」
真上から、振り下ろされた剣が迫ってくる。
その瞬間、『待て!!!」
振りかざされた死がシンの顔の前で止まった。
剣を振りかざしていた兵士の後ろにいた1人が、目の前の兵士に向かい静止の言葉を投げかけた。
「やめろ。今伝令が入ったがどうやらこちらの勝利だそうだ。直ちに、全軍撤収の準備にかかるらしい。生き残りは皆捕虜にするらしいからそいつも捕まえて連れてこい!」
それを聞いた瞬間、シンはとりあえず生き残ったことに安堵し、そして意識を失った。