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これ、ゼミでやったやつだ

「ロミルダ様、イルカよ!すごい可愛いわ!」


眩しく強い日差し、見渡す限りの透き通る青い海、船に沿って泳ぐイルカたち。私は今、王家で借り切った豪華客船の甲板にいます。


先日、第一王子殿下ハルトムート様と第二王子エルヴィン殿下のお二人で、我が国の最南端トット島へ視察に行くことになりました。来年貴族学園中等部へ入学するハルトムート様のため、婚約者や側近候補達と親睦を深めるようにと、観光地としても有名なトット島へ視察を兼ねた旅行が計画されたのです。

この旅行のメンバーは第一王子殿下・第二王子殿下・第一王子殿下の婚約者の私・第二王子殿下の婚約者・宰相子息・騎士団長子息・魔法師団長子息の7名です。


私の横で、エルヴィン殿下の婚約者アンネマリー様がイルカの群れを見てはしゃいでます。


「沢山のイルカに浮かれてしまったわ。恥ずかしい。……ロミルダ様、船酔いは大丈夫?」

「はい。こうして新鮮な空気を吸ったら元気になりました」


私はフォーゲル侯爵令嬢ロミルダ、船旅の仲間7名の中では最年少の10歳です。2歳年上の第一王子殿下、ハルトムート様と婚約しています。大人しい私と無口なハルトムート様は、2人でいるところを見たお父様から「10歳ですでに老夫婦のような趣があるな」と言われたことがあるほどに波風の立たない凪いだ関係です。

対するアンネマリー様はローゼンハイン公爵の一人娘で11歳。同じ11歳の第二王子エルヴィン殿下とは気安い間柄、といえば聞こえがいいですが、実際は気の強い者同士で口喧嘩が絶えないのだと聞いてます。

私よりも爵位が上で1歳年上のアンネマリー様とは今まで交流が無く距離を感じていたのですが、少しだけ打ち解けられたように感じます。昨日この船へ乗船してからは食事を一緒に頂いてますし、先ほどの朝食では、少し船酔いしていた私を気遣って食後に海面を見に行こうと誘っていただき、こうして2人で甲板へ来ています。


強い日差しの下で輝く黄金の髪に真っ赤なバラのような赤い瞳のアンネマリー様は、エネルギッシュでハツラツとしています。青みがかった灰色の髪に黄色い瞳、大人しく鈍臭いせいでハシビロコウという動かない鳥にそっくりだと、3歳上の兄から「ハシビロミー」と揶揄われるような私とは比べられないほどの美少女です。


「それは良かったわ。カスパル様なんてひどい船酔いで朝食も取らずに部屋でぐったりしているらしいわよ。新鮮な空気を吸ったら少しはマシになるかもと従者が甲板へ連れてくる予定だって、私の侍女が言っていたわ」


カスパル様は宰相閣下のご子息、ハルトムート様と同じ12歳で王子2人とは幼なじみです。常に冷静沈着でメガネが似合うカスパル様がぐったりしているとは。トット島への船旅は丸1日かかりますので、本日の夕方まで後半日は下船できませんが大丈夫でしょうか。


それにしてもアンネマリー様はカスパル様の従者の方の情報まで掴んでいるようです。正直、私よりもよほど次期王妃にふさわしいと思うのですが、アンネマリー様は公爵家の一人娘なことと貴族間の派閥の関係から、私が立太子予定のハルトムート様の婚約者として選ばれたのです。

私が受けている王妃教育ですが、王家の伝統として第二王子殿下の婚約者のアンネマリー様も受けております。授業は別々ですが教師の方々は同じで、アンネマリー様はとても優秀だと私の耳にまで届いてきます。1歳年下だからという言い訳は出来ないと私も必死で頑張ってはいますが、アンネマリー様の評判を聞くたびに自信が無くなっていきます。

私自身がアンネマリー様の方が王妃に向いていると思ってしまう位です。周りの方々もアンネマリー様の方が王妃に向いていると思っているのではないかと悩んでしまいます。


「ハル様、見て!これがトット名物の“イルカの並走”よ!」


アンネマリー様と2人きりだった甲板にトット子爵令嬢ベティーナさんの弾んだ声が響いてきました。

ふわふわと揺れるピンク色のツインテールに澄んだ空のような水色の瞳のベティーナさんは、トット島の領主の娘として本土の港まで迎えに来てくださいました。私たちと同年代の11歳で、可愛く明るく人懐っこい彼女は、出会って半日足らずでハルトムート様のことをハル様と呼ぶくらいに打ち解けているようです。

私もハル様と呼びたいと羨ましく思ってしまいますが、ならばまずベティーナさんの陽気で親しみ易いところを見習わないといけませんね。


ベティーナさんに連れられて、ハルトムート様、エルヴィン殿下、騎士団長子息テオフィル様、魔法師団長子息クリストフ様が甲板へ出てきました。


「ベティ、走ったら危ない」


この声は騎士団長子息テオフィル様。ベティーナさんをベティと呼ぶほどに親しくなったようです。11歳とは思えないほど背が高く立派な体のテオフィル様。ここ甲板で護衛の方達と剣の打ち込みをしている大きな掛け声が、朝食前に下階にいた私の所まで聞こえてきたほどに、常に一生懸命で熱い方です。

駆け足のせいでよろけたベティーナ様を、素早く支えます。


「さすがテオ様!転ぶところだったわ。どうもありがとう」


お礼を言われたテオフィル様が照れています。なるほど。すかさず“さすが”と肯定し、小まめに感謝を伝えるのは親しみやすさの一因かもしれません。


「ちょっと、いきなりハル様とかテオ様とか失礼だよ?」


ベティーナさんに負けない位の可愛らしい美少女然としたお顔を歪め怒っているのは魔法師団長子息クリストフ様。テオフィル様の幼なじみで11歳のクリストフ様は魔法属性を5つ持つ天才少年です。光・火・水・氷・砂・岩・風・雷と全8属性ある魔法属性で、2属性持ちでも十分珍しく3属性あれば平民でも王宮魔法師になれると言われている中、5属性のクリストフ様はとても将来有望なのです。


「ひどぉ〜い。私はただ皆と仲良くしたいだけなのに」

「クリス、俺は気にしてない」

「はぁ?なにそれ、テオまで僕が酷いって言いたいの?」


クリストフ様がテオフィル様とベティーナさんを詰っている横で、王子2人はイルカを見て和んでいます。


「兄上、イルカだ!あそこの2匹、じゃれ合いながら泳いでるよ。あの2匹も兄弟なのかな」

「そうかもな」


寡黙で真面目なハルトムート様と快活で華やかなエルヴィン殿下。同じ銀髪に青い目なのに受ける印象が全く異なる2人ですが、とても仲が良いのです。

そこへ青い顔をしたカスパル様が従者に付き添われて甲板へ出てきました。すかさずベティーナさんが駆け寄ります。


「カスパル様、大丈夫?」

「大丈夫、ではないですね……」

「カスパル様、手ぇ貸して。手首のここを押すとね船酔いが軽くなるんだよ」

「ありがとう。少し気分が楽になった気がします」


あれは医療が発達する前に田舎で流行っていたという民間療法のツボ押しです。私は王妃教育のおかげで知っておりましたが、現在の王都ではもはやお年寄りしか知らないツボ押しを知っているとは、我が国最南端のトット島ではツボ押しはまだ現役なのでしょうか。


「ツボ押しとはいえみだりに殿方の手を触るなんて、何て端ない方なのかしら」


アンネマリー様がベティーナさんの行動に顔をしかめてます。

先ほどまでアンネマリー様と2人きりだった甲板ですが、今は旅の仲間全員集まってます。イルカ達もこの船に並走しながらジャンプをしたりとまるで持て成してくれているようです。

今日の予定は夕方に下船してその後トット子爵邸入りするだけのため、皆、身軽な服装をしています。王都では常に護衛や使用人に囲まれて生活している私たちですが、今、甲板には子供の私たちとカスパル様の従者の方しかいません。これは私たちの親睦を深めるための旅です。今は厳選した人しか乗船していない船の上だからと使用人は付けずに自由に行動させてもらっているのです。

周りに使用人等がいなく、堅苦しくない服装でただ一緒にいるだけなのですが、それでも普段と違う状況のおかげで以前よりもハルトムート様に近づけた気がして嬉しいです。


しばらくボーッと海を眺めていると、それまで静かだったイルカたちがいっせいに鳴き出しました。穏やかな海面にキューキューというイルカたちの騒めきだけが響き異様な雰囲気になります。


「何かしら」


アンネマリー様が不安そうに呟き、皆、周囲を警戒した態勢に入ります。私たちよりも海に長けた野生動物の警告は無視できません。カスパル様は船酔いのせいで青い顔をしながらも周囲に目を光らせ、テオフィル様とクリストフ様も護衛のために王子2人の近くへ移動します。

甲板から船内へ戻った方がいいのかと迷っていると、普段は寡黙なハルトムート様が声を張り上げました。


「皆、念のために転移の陣紙をすぐ使えるように確認してくれ。何か起きた時は躊躇せず速やかに使うように」


私たち7人は万が一に備え1人1枚、王城に転送される魔法陣が書かれた陣紙を持たされています。魔法陣の中でも特に難しく書ける者が少ない転移の魔法陣が書いてあるこの陣紙は、これ1枚で馬車1台が買えるほど高価なのだと聞いてます。親睦を深めるというこの旅の目的のためにとそれぞれの保護者達が奮発し用意してくれたのです。事件や事故が起きた際のリスクを考えれば、第一王子と第二王子が一緒の船で視察に行くなどこの陣紙無しではできなかったはずです。


この転移の魔法陣は、所有者が1L以上出血した時、2分以上呼吸しなかった時、12時間以上意識がない時に王城へ自動転送されるように作成されてます。もちろん所有者の意思で魔法陣を起動することも出来ます。起動の際は空いている方の手で手を繋いでいる人は一緒に転移できると聞いてます。今、甲板にいる人の中で転移の陣紙を持っていないのはベティーナさんとカスパル様の従者のお二人。これはお二人にも伝えておかないといけません。


「ベティーナさんとカスパル様の従者の方、今何かあったら私達と共に王城へ転移することになります。ベティーナさんはそのままカスパル様と、カスパル様の従者の方は私と手を繋げるようにしておいてください」


私がそう声をかけた、その時です。イルカ達の声がピタッと止まりました。そして、船が大きく揺れ、対面に高い波が現れました。


王都にある3階建てのフォーゲル家のタウンハウスよりも高く見えるその波は、甲板どころかこの客船を飲み込みそうなとてつもない高さです。甲板にいる私たちは王城へ転移できるけれど、船内に残ることになる侍女や護衛はどうなるのだと彼らの顔が頭によぎります。


「転移の陣紙を使え!」


ハルトムート様の大声で我に返った私は、すぐに使えるようにポケットに入れ直していた陣紙を出し、カスパル様の従者の手を掴み起動します。起動の瞬間に周りを見渡せば、皆、陣紙を起動してます。カスパル様もちゃんとベティーナさんの手を掴んでいます。


こうして私たち9人は、トット島へ向かう船の上、高波に飲まれる寸前で王城へ転移する陣紙を起動したのです。


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「ここはどこでしょうか」


私たちは今、見知らぬ浜辺にいます。


気温や日差しの角度から先ほどの船からそう遠い場所ではなさそうですが、そもそもあの陣紙は王城への転移の魔法陣だったはずなのに。なぜか失敗してしまったようです。


「皆、痛いところやおかしなところはないか。それと通信の魔道具などを持っていたら出して欲しい」


非常事態に戸惑っている私たちの中で、ハルトムート様が先導し一人一人の顔を見て安否を確かめてくれてます。さすがハルトムート様。頼りになります。

そんなハルトムート様に対してベティーナさんが甘えた声を出しました。


「ハル様、左手を捻ってしまったみたい」

「我慢出来ないほどに痛いか?」

「動かさなかったら大丈夫。それに痛くても我慢できるよ」


ベティーナさんが健気にも答えます。ベティーナさんは魔法陣の起動者ではなく連れ添いですので、起動者にはない負担があったのかもしれませんね。同じく連れ添い転移だった従者の方を確認すると私の手を見て顔を赤くしてます。私は繋いだまますっかり忘れていた手を慌てて離しました。


「そこの従者。私は君がカスパルと一緒に居るところを今まで見たことがなかったのだが、名はなんというのだ」


ハルトムート様が従者の方を鋭い目で睨み詰問します。彼には不愉快に感じるかもしれませんが、この非常事態、怪しいことは全て追求しないといけません。


「私はトラウゴット・クレムと申します。普段はカスパル様の弟君のアロイス様に付いてます。トット子爵夫人が私の叔母ということでこの旅だけカスパル様の従者に配置換えして頂きました」

「クレム男爵家の者か。たしかにトット子爵夫人はクレム男爵家出身だったな」


さすがハルトムート様。貴族末端の男爵の家名まで把握されてますし、視察先についても下調べ済みのようです。


「ハル殿下、トラウゴットは弟アロイスの従者で間違いありません」

「トラウは私の従兄弟だよ」


カスパル様とベティーナさんがトラウゴットさんの言葉に間違いがないと承認し身分が証明されました。トラウゴットさんはホッとした顔をしております。


「カスパルは顔色が良くなったな」

「はい、今は大丈夫ですが、船はこりごりです。もう二度と乗りません」


転移の陣紙が無い今、ここから王城に戻るにはもう一度船に乗るしかないと思います。普段は理知的で冗談などを嫌うカスパル様なのに、不合理な事を言ってしまうくらいには船酔いが辛かったようです。


「兄上、これは何かの陰謀かもしれない。あの陣紙、父上に手渡されたからと無闇に信用しないでちゃんと調べるんだったなぁ。起動して消えちゃったのが悔しいよ。誰かと手を繋いで転移してたら陣紙が余ったのに」

「あら、私は事前に魔法陣を読み込んで確かめたわよ」

「読み込んでいてもこの結果だったなら意味ないだろ」

「私の魔法陣の転移先は王城で間違いなかったし、おかしなところも見つけられなかったわ。私以外の陣紙が王城への転移を阻害するように作られていたのかもしれないし、それはちゃんと確かめてなかったエルヴィン様の分だったかもしれないわね」


エルヴィン殿下とアンネマリー様が言い争いを始めました。これが王宮の方々に“気安い仲”と濁されている2人の口喧嘩のようです。

あの陣紙についてですが、私も念のためにと読み込んでいたのでちゃんと伝えておきましょう。


「私も陣紙に書かれていた魔法陣を確認しましたが、私が分かる範囲で変な所はなかったと思います。移転先も王城でした」

「あぁ。私は父上が皆に渡す前の全員分の陣紙を確かめた。特に問題は無かったはずだ」


さすが、ハルトムート様。真面目で用心深くとても尊敬できます。


「兄上はいいなぁ。俺も可愛い婚約者にこんな風に尊敬の眼差しで見てもらいたいよ」

「可愛くなくて悪かったわね。私だってあなたが尊敬できるような人なら尊敬の眼差しの一つや二つするわよ!」


未来の義弟夫婦がまたもいがみ合います。少しは仲良くしてください。


「陣紙の発動の時、あの高い波と陣紙の魔法以外に魔法の気配は感じられなかったよ」


魔法師団長子息のクリストフ様が言うのですから間違いなさそうです。でも、そうなるとどうして王城へ転移出来なかったのかと謎が深まります。


「ここに魔法陣専用インクと紙さえあれば転移の陣紙を作れるのになぁ」

「クリス様は転移の陣紙を作れるの?すごぉ〜い」

「勝手にクリスと呼ばないで。あと、僕がすごいことは僕自身が一番知ってるから」


優秀な魔法師でも何年も修行を積まないと取れないと言われている陣紙の作成免許。そんな陣紙を11歳ですでに作成出来ると言うクリストフ様の優秀さに私も思わず驚きます。

ベティーナさんがクリストフ様を褒めたのが気に入らなかったのか、ベティーナさんを素っ気なくあしらったクリストフ様が気に入らなかったのか、むっとした表情のテオフィル様が割り込みます。


「旅行前はこの転移の陣紙は作れないと言っていたじゃないか」

「僕は出血量・呼吸時間・無意識時間の条件付けが出来ないって意味で言ったんだ。この陣紙を作った魔法師は化け物なんだよ。王城へ転移するだけの陣紙なら僕でも作れる」


そしてあの転移の陣紙は、そんなクリス様が作った方を化け物呼ばわりするくらいのすごいものだったようです。さすが馬車1台買えるだけあります。


「クリス、作れたとしても免許を取るまで作ってはいけない。……とりあえず、この場所についての調査と、食べ物の確保、水場と寝床の作成をしよう。それと、避難信号を出そうと思うが反対意見はあるか」

「俺たちをここに飛ばした犯人がいるとするなら飛ばした先がわからないなんてことはないだろうし、“犯人に気付かれないように避難信号を出さない”って配慮はいらない気がするな。俺は賛成」


王子2人の意見に皆納得したようで反対意見は出ません。


「ベティーナ、トラウゴット、魔法属性を教えてくれ」

「氷だよ」

「私は水属性です」

「そうか。火属性はクリスだけだな。クリス、煙に色を着けられるか?」


さすがハルトムート様。私たち旅の仲間の魔法属性は把握されているみたいです。


「やったことないけどやってみる。狼煙をあげるんだよね?煙がまっすぐ上に登るようにも工夫してみるよ」

「あぁ、普通の煙とは違う色になれば嬉しい。……私とエル、カスパル、テオ、トラウゴットで探索し、食料を確保しよう。ロミルダ、アンネマリー嬢、ベティーナはここで待機し水場と寝床の作成を頼む。クリスは狼煙を上げた後は彼女たちの助けと護衛を頼む」


ハルトムート様が決めた役割分担に各々納得したのですが、ベティーナさんだけが異を唱えます。


「私、探索がいいな」

「ハルトムート殿下が適性を考えて分担を決めたのよ。女性のあなたが探索に付いていっても足手まといになりかねないってわからないのかしら」

「ひどぉ〜い。暑い中歩くことになるハル様達を私の氷魔法で冷やしてあげたいだけなのに」


早くもここに不協和音が生じます。アンネマリー様が発言したせいか、エルヴィン殿下も口を挟みます。


「ベティは手が痛いんだし待機組の方がいいんじゃない?」

「手が痛いから水場や寝床を作る方が難しいと思う。それにエル様達と一緒の方が安心だもん。私も探索したらダメ?」


エルヴィン殿下が“ベティ”と言った時とベティーナさんが“エル様”と言った時、アンネマリー様が見たこともないすごい顔でベティーナさんを睨んでました。あのお顔を見ても動じないベティーナさん、肝の座り方がすごいです。


「“エル様達と一緒の方が安心”って、私たちと一緒では不安だって言いたいのかしら」

「ひどぉ〜い。私そんなこと言ってないのに」

「もういい、ベティーナは探索組でよい。日が暮れるまでに戻りたい。もう行くぞ」


ハルトムート様は時間がもったいないと話を切り上げ、エルヴィン殿下、カスパル様、テオフィル様、ベティーナさんと5人で探索に行ってしまいました。残る待機組は私、アンネマリー様、クリストフ様、トラウゴットさんの4人です。ベティーナさんが探索に変わると待機組の負担が大きくなるからとトラウゴットさんは待機組になりました。


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この顔ぶれだと待機組はアンネマリー様主導になりそうですね。


「私は水属性よ。ロミルダ様は?」

「私は砂属性です」

「まず最初にお手洗いを作っちゃいたいわね。1人1つずつでいいかしら」


アンネマリー様、1人1つのトイレは多すぎです。冗談なのかとアンネマリー様を見ますが、本気の顔をしています。大富豪公爵家のご令嬢ならではの発想だったようです。そしてトイレに行きたいのですね。


アンネマリー様の主導でよいのか早くも不安になってきました。普段は寡黙なハルトムート様も非常事態の今はリーダーシップを発揮しておりますし、ここは次期王妃として私も頑張る必要がありそうです。


「お手洗いはとりあえず男女1つずつ作成しましょう。アンネマリー様とトラウゴットさんの水魔法で地下水源を引き込み、私の砂魔法で周りを固め、下水は海に排水するようにして、周りは水魔法と砂魔法を組み合わせてドーム状にすれば良さそうですね。あと、寝床と水場の他に竃と土鍋も作りたいと思ってるんです。土器の要領で水と砂を混ぜて土鍋を作って、狼煙を上げる隙間でクリストフ様に焼いてもらいたいです」

「土器の作り方、これ王妃教育でやったやつだわ!正直こんなこと覚える意味があるのかしらと思ってたけれど、こんな形で役に立つなんて思わなかったわね。クリストフ様が岩魔法も使えるなら鉄板用の岩も出してもらいましょうよ!」


こんな時に不謹慎かもしれませんが、私とアンネマリー様は王妃教育で習った知識が活かせると少しワクワクしてしまっています。


「岩属性も持ってるから岩の鉄板は出せると思う。……ねぇ、クリストフって長いしクリスって呼んでよ。僕もロミーとマリーとトラウで良い?」

「私はマリーで大丈夫よ。実は私、前から心の中ではロミーちゃんって呼んでたの。ロミーちゃん良いかしら?」


良いと言う前に呼んでますよ、マリー様。


「ロミーたん」

「トラウ、ロミーたんはさすがにアウトだよ。っていうかトラウっていくつ?僕たちよりだいぶ年上だよね」

「……18です」

「ますますアウト」

「ひどぉ〜い」


突如放たれたトラウさんによるベティーナさんのモノマネにクリス様とマリー様が吹き出します。


「ぶっ、ふははははは!」

「ぎゃははは!それ、そっくりすぎよ!」

「クリス様もぉマリー様もぉ、そぉんなに笑うなんてぇ、ひどぉ〜〜〜いですぅ」


さすが従兄弟、大げさに真似てもそっくりです。私も思わず笑ってしまいました。


「ロミーちゃんが笑ったわ!かわいい!」

「ロミーたんの激レア笑顔、かわいい」


マリー様とトラウさんが過剰に反応してきますが、なんとなく怖いので少し距離を取っておきましょう。


私たち待機組はこんな感じで和やかに作業を進めました。訳がわからない非常状態に不安になる気持ちを誤魔化すためでもあったのかもしれません。

必死に作業し、男女1つずつのお手洗い、男女1つずつの掛け流しシャワー室、男女1つずつの寝床用ドーム、土鍋3個と私が作った歪な土鍋?1個が出来ました。浜辺で上げてる狼煙の近くには水場と竃も作り、寝床には森を少し入った所で見つけた大きな葉っぱも人数分置きました。クリス様の岩魔法で鉄板と全員が座れるテーブルとベンチも出してもらい、私たちで出来ることはやりきったと思います。


クリス様が砂属性を持っていなかったため、私の魔力負担が大きく、さすがに疲れてぐったりとしてしまいます。お手洗いどころかシャワー室まで1人1つ欲しいと言っていたマリー様も私の疲れた様子を見て男女1つずつで納得してくれたほどです。

正直、普段の生活では役に立たずあまり好きになれなかった砂属性ですが、大活躍した今日からは好きになれそうな気がします。


私たち4人は順番にシャワーを済まし、クリス様の風魔法で服と髪を乾かして貰いました。段々と日も傾いてきましたが探索組の5人はまだ帰ってきません。救助も来ません。私たちは狼煙の周りに座り探索組の帰りを待つことにしました。


「ロミーちゃん、大丈夫?ロミーちゃんはまだ10歳なのにこんなことになって、私をお姉さんだと思って甘えてくれてもいいのよ?」


隣に座ったマリー様が頭を撫でてくれます。思わず思春期に入り頭を撫でてくれなくなったお兄様を思い出してしまいます。昨日までは優秀なマリー様に勝手に劣等感を感じて近寄りがたいと思っていたというのに、今では気が強いけど優しくて頼りになるマリー様のことが大好きになってしまいました。


「船に残してきた侍女や護衛達が気になります」

「ロミー様は優しいですね。高位貴族家の使用人達なんて皆エリートばかりです。あんな高波ひとつくらい大丈夫ですよ。きっと今頃は皆様の探索に加わってるはずです」


トラウさんが慰めて下さいます。ロミーたんと呼ぶのは諦めてもらえたようでよかったです。


「そうよ!きっと皆大丈夫。私の侍女なんて泳いでここまで来てしまいそうだわ。淑女らしくっていつも怒られるのだけど、こんなに日焼けして泥々になってる姿を見たらどんな反応をするのか怖くて会いたくないくらいよ」


あの完璧に見えていたマリー様が侍女に怒られているなんて、昨日までの私だったら信じられなかったと思います。


「私は船に残してきたぬいぐるみが気がかりだわ。あの子を抱きしめないと寝れないからって今回の旅にも連れてきたのだけど、家でお留守番してもらってた方が良かったかもと後悔してるの。私の侍女なら気にかけてくれてるって信じているのだけれど」

「マリーがぬいぐるみがないと寝れないなんて意外だね。なんのぬいぐるみ?うさぎとか?」

「ハシビロコウのロコちゃんよ!今晩はロコちゃんの代わりにロミーちゃんを抱きしめて寝るから大丈夫!」


おぉ、こんなところでハシビロコウの名を聞くとは。出会った当初からなぜか私への好意を隠さないマリー様を不思議に思っていたのですが、その謎が解けました。そして、ロコちゃんの代わりになることは私に拒否権は無いようです。

道理で寝床用ドームを作る時だけ1人1つ欲しいと言わなかったわけです。


「ハシビロコウってあの動かない鳥だよね。なるほど、髪と目の色もだけど、あのなんとも言えない表情がロミーと似てるかも。それにしてもハシビロコウのぬいぐるみなんて珍しい物どこで買ったの?」


なんかクリス様に失礼なことを言われた気がしますが、私もハシビロコウのぬいぐるみを売っている所は気になります。ぬいぐるみが売れるほどの需要がハシビロコウにあるとは思えません。そんな採算度外視の酔狂なお店があるなら行ってみたいです。


「小さい頃にね、エルヴィン様と行った花鳥園でハシビロコウが可愛くてはしゃいでしまったのだけど、その年の誕生日にエルヴィン様から貰ったのがロコちゃんなの。エルヴィン様はオーダーメイドで作ったのだと言ってたわ」


真っ赤な顔をしてエルヴィン殿下との思い出を話すマリー様がとても可愛いです。口喧嘩ばかりに見える2人ですが、本当は思い合っているんじゃないですか。


「ツンデレ同士のケンカップルですか。マリー様、ツンデレは尊くてとても良いものですが、相手もツンデレの場合デレが無さすぎると拗れてしまうことがあるので気をつけてください」

「ツンデレ?ケンカップル?」

「普段はツンツンしてつれない態度なのにふとした時にデレデレと甘えてくる人、つまりマリー様に対するエルヴィン殿下と、エルヴィン殿下に対するマリー様みたいな人をツンデレと言います。ケンカップルとは“喧嘩するほど仲がいい”って言われちゃうようなカップル、まさしくマリー様とエルヴィン殿下です。ただ、今のマリー様とエルヴィン殿下は2人共にデレ、つまり相手に甘えたり素直になったりする所が無さすぎるように見えます。ツンデレ同士は尊くもありますが、実際の組み合わせとしては難しいんですよね」


トラウさんが早口でマリー様へ熱弁してますが、熱弁すればするほどマリー様とクリス様のトラウさんを見る目がどんどん冷たくなっていることに気づいていないのでしょうか。


と、そこへテオフィル様のお声が響きました。日も暮れかけてやっと、探索組が帰ってきました!


「おーい!」


皆たくさんの木の実やフルーツなどを上着に包んでます。良かった。楽しくお話しする事で誤魔化していただけで本当はすごい不安だったのだと気づき、思わずハルトムート様に駆け寄ります。


「ハルトムート様!おかえりなさい」

「あぁ」


いつ見ても乱れひとつなく完璧な身嗜みのハルトムート様が、今は泥々でボロボロです。


「お怪我はありませんか?あちらにシャワー室も作ったので使ってください。それとも先にお食事にしますか?」

「あぁ」


ハルトムート様は「あぁ」と言いながら顔を上にあげ手で目を押さえております。お疲れなのでしょう。それにしても「あぁ」ってどちらなのでしょうか。シャワー?食事?


「ハル様、あの時の足の打撲はまだ痛む?また冷やすよ?」


そこへ、ベティーナ様が私を無視してハルトムート様へ声をかけました。ハルトムート様は足を打っていたようです。ハルトムート様はベティーナ様へは気さくに返事をします。


「ありがとう。もうそれほど痛くはないがシャワーを浴びた後にまた冷やしてもらえると助かる」


私へは硬い表情で「あぁ」しか言ってもらえなかったのにな。なんだかベティーナ様の方が婚約者のようで悲しくなります。


「ちょっと、ハルトムート殿下、横で聞いてれば何なんですか!ロミーちゃんがかわいく『お風呂にする?ご飯にする?』って聞いたのにあんな薄い反応しか返さないし、そのくせそこのあざとい女とは普通に会話するとか。ロミーちゃんが傷ついているのが分からないのですか?ハルトムート殿下がこんな朴念仁だなんて知らなかったわ!」

「兄上に朴念仁だなんてよくも言ったな!王族に対して不敬がすぎるぞ!」

「何よ!かわいいロミーちゃんを傷つけるような男、王族であろうと朴念仁よ!」


マリー様が私の悲しみに気付いて怒ってくれました。泣くほどは悲しくなかったはずなのですが、マリー様の言葉が嬉しくて目に涙が滲んできます。マリー様から朴念仁と言われたからか、もしかしたら泣きそうな私を見たからか、ハルトムート様が狼狽えてる姿が泣きそうな目の端に入りました。


----------


探索組の方々が順番にシャワー室を使い、私たち待機組は探索組が取ってきた食材を調理します。鮎を木の棒に刺して焼き、海水を水魔法で薄めて土鍋でキノコのスープを作り、木の実やフルーツは私が作った土鍋?に盛りつけます。せっかくクリス様に出してもらった鉄板は残念ながら出番がありませんでした。


マリー様は好物の鮎が食べられるとはしゃいでます。この鮎はエルヴィン殿下が殆ど捕まえたのだとテオフィル様から聞きました。口喧嘩ばかりに見えても実は思い合っているのがわかるマリー様とエルヴィン殿下の関係がとても羨ましいです。

クリス様は岩魔法でカトラリーが作れないかひたすら試してたのですが、今は岩魔法で出したナイフで木を削りスプーンを作ってます。岩魔法のカトラリーは諦めたようです。トラウさんは切り出した木を彫って人数分のお椀を作っています。私もトラウさんと一緒にお椀を作ります。

土器を作る時にお椀も作れば良かったですね。もしも明日も救助が来なかった時はお椀も作ろうと心に決めます。


そこへシャワーを浴びたベティーナ様がきました。


「ベティーナさん、手は大丈夫ですか?」

「痛いけど我慢してるわ」

「私、包帯を巻いて固定することで痛みを和らげる方法を習ったことがあって、これはさっき洗ったばかりの清潔なハンカチなんです。巻かせていただいて良いですか?」


手の手当てをしようと声をかけたのですが、ベティーナ様はその手に王家の紋章の刺繍が入ったハンカチを持っています。


「お昼にハル様がこのハンカチで巻いてくれたんだけど、さっきシャワーで解いちゃったの。でも後でハル様に巻き直してもらおうと思ってて、だから大丈夫」


ここは「さすが、ハルトムート様」って思わないといけないところなはずなのに、悲しくて、悔しくて、羨ましくて、泣きそうです。私は別にハルトムート様から粗末に扱われているわけではありません。でも、私にもベティーナ様にするように普通に会話してほしいし、私以外の女性に優しくしているのを見たくないなと思ってしまうのです。

そこへ、マリー様がベティーナ様へ声をかけました。


「ベティーナさん、この木の実を割るのを手伝ってもらえる?」

「私手が痛いのに。ひどぉ〜い」

「どうした?」


マリー様、ベティーナさん、エルヴィン殿下の3人です。なんか一悶着起こりそうな嫌な予感がします。


「エル様、私が悪いの。大変な時に手を痛めてるから」

「アンネマリー、ベティは怪我をしているんだ。思いやれないのか?」

「何よ!私は手伝ってもらえるか確認しただけよ!」


マリー様はエルヴィン殿下とベティーナさんを残し、私の方へきます。なぜかクリス様までこちらへきました。


「ロミーちゃん、クリス、聞いて!エルヴィン様がひどいの!」

「マリーそこは“ひどぉ〜い”でしょ」


クリス様が煽り、エルヴィン殿下がマリー様を追いかけてこちらに来ます。


「“クリス”と“マリー”だと?お前、俺以外の男を愛称で呼んで、しかも俺が呼んでない愛称をクリスに許したのか?」

「何よ、エルヴィン様だって“ベティ”“エル様”ってベティーナさんと呼び合ってるじゃない」

「なんだ嫉妬か?」


2人ともお腹が空いてイライラしているのでしょう。喧嘩はやめてほしいです。


「アンネマリー嬢とロミルダ嬢、ベティは手を痛めているのだ。ベティを責めないでもらいたい」


そこへ、ベティーナさんに声をかけた後にこちらに来たテオフィル様が、私とマリー様を睨み付けながら言い放ちました。まさしく火に油です。


「テオは何を言ってるの?マリーもロミーもベティーナ嬢を責めたりなんてしてないよ」

「クリス、ベティが2人から責められて悲しいと言ったんだ。いじめは加害者に自覚がないこともあると聞く。加害者にはちゃんと注意しないといけない」

「なんでその女が悲しんでるってだけでこっちが加害者になるんだよ」


マリー様とエルヴィン殿下だけでなく、クリス様とテオフィル様まで一触即発の佇まいになります。次期王妃としてここを丸く収めないととは思いますが、私が注意しても聞かない気がして尻込みしてしまいます。


「皆、争いはやめろ。夕飯にしよう」


ハルトムート様の一言で皆喧嘩を中断します。雰囲気は悪いままですが、とりあえず危機は乗り越えました。


「兄上、ごめんなさい」


エルヴィン殿下は本当にハルトムート様が好きなのですよね。大好きな兄の婚約者である私に反発してこない事が不思議なくらいです。

そこへ、シャワーを浴びている間に危機一髪で大げんかを免れた事など知らないカスパル様が来ました。1人遅れてきた彼はテーブルの上に並んだ食べ物を見て、空気も読まずに特大の火種を投下したのです。


「えっこんな土鍋で作ったスープを食べるのですか?しかもお椀は木だし。こんな汚いもの口に入れるのは無理です」


そう、トイレとシャワー室を見たカスパル様に「1人1つじゃないのか」と言われた時点で嫌な予感はしていたのです。皆矛を収めたばかりだというのに、これはまずい。


「私たちが一生懸命作った土鍋を汚いだなんて、ひどぉ〜い。嫌なら食べなきゃいいじゃない!木のお椀がダメなら木に刺さった鮎も無理ね。カスパル様の鮎は私が食べてあげるわ。カスパル様はリスみたいに木の実だけ齧っていたらいいのだわ」

「おい、そんな言い方はないだろう!カスパルはお前と違って繊細なんだ」

「繊細じゃなくて悪かったわね!でも、繊細すぎて船にも乗れないのなら、私はがさつで良かったと思うわ!」


やはりマリー様とエルヴィン殿下が言い争いを始めてしまいました。さりげなくベティーナさんのモノマネを入れてるあたり、ベティーナさんへの苛立ちも収まっていないようです。


「カスパル、無理に食べろとは言っていない。食べられる物だけ黙って食べろ。疲れているのはわかるが、何もなかった状態から試行錯誤してここまでしてくれた待機組への感謝がない。“衣食足りて礼節を知る”という言葉がある意味を考えるように。……皆、緊急事態だからこそ思いやりの心を忘れないように」


ハルトムート様の言葉を受けてカスパル様、マリー様、エルヴィン殿下が黙りました。皆、だまって黙々と食べ始めます。お通夜みたいな雰囲気ですが、船で朝食を取ってから水しか飲んでなかったおかげか鮎もキノコのスープも木の実もフルーツもとっても美味しく感じます。でも、贅沢を言うならば皆で和気藹々と食べたかったです。


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「ロミー様が作ったこの土器、私がもらってもいいですか」

夕食後の片付けをしている時、トラウさんが私が作った土鍋?が欲しいと言いだしました。穴が空いているために水を入れられず、木の実やフルーツを入れるカゴ替わりに使ったのですが、いびつな形のせいでボロボロと中身が溢れてしまうためカゴとしての役割すら満足に出来ない、土鍋にもカゴにもなり損ねた失敗作です。夕食の時も、皆がフルーツを取る度に中身が溢れ出てしまい、これは誰が作ったんだと探索組の方に聞かれなかったことにホッとしていたほどです。後でこっそり捨てようと心に決めていたというのに。


「それをどうするのですか?」

「部屋に飾ります」

「これをトラウさんの部屋に飾るのですか!?」


それはなんだかものすごい恥ずかしい気がします。近くにいたマリー様とベティーナさんがとても冷たい目でトラウさんを見ています。あまり仲が良くない2人ですが、トラウさんへの思いは同じみたいです。

そこへエルヴィン殿下が颯爽と現れました。


「ロミルダ嬢、将来の王妃が手作り品を無闇に下賜したらダメだ。その前衛的な土器は王家で預かるよ」


そう言ってエルヴィン殿下が土鍋?を持って行ってしまいました。前衛的と言われるくらいなら、早く捨てておけば良かった。そしてトラウさんはすごい目でエルヴィン殿下の背中を睨んでいますが、王族をそんな目で見てはダメだと思います。


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夕飯の片付けを済ませたあとは皆で集まり話し合いです。日もすっかり暮れ、クリス様がテーブルの横に出した篝火が皆の顔を照らしてます。自然と探索組と待機組に別れて座ってしまいます。

話し合いの進行はテオフィル様。普段でしたらカスパル様の役割だと思うのですが、船酔いに始まり、頭脳派にも関わらず半日以上歩き回って探索をし、夕飯前に幼馴染からの説教で止めを刺されたカスパル様は消え入りそうな様子で座っております。かわいそうですが、正直、皆で作ったスープを汚いと言われてカチンときたので私も放置しています。


「ここは無人島のようです。人も、人がいた形跡も見つかりませんでした。森をまっすぐ突っ切ったら海岸に出ました。その後は海岸に沿って移動し、一度この浜辺に戻り、折り返し海岸沿いに歩いたらまたこの浜辺に戻ったことから、周囲10数キロほどの島だと思われる、とカスパル殿が計算しました」


探索組の方達は一度この浜辺に来ていたそうですが気づきませんでした。声をかけてくれたら良かったのに。


「最悪、船が沈没していたとしても、夕方以降には我々がトット島へ到着していない事に気づき捜索が始まるはずです。死にかけてたら自動的に王城に転移するはずだけど転移して来ない、でも、自分たちで陣紙を起動しない、ということは誘拐だと思われている可能性が高い、というのがカスパル殿の予測です」

「日が暮れて星座の位置を見て確信した。ここは転移した船の位置とトット島の間に無数にある無人島の一つだろう」


さすがに王妃教育でも星座から位置の特定までは習っていません。私にだけ無愛想なことが悲しいと傷ついてもやっぱり、“さすがハルトムート様”と思ってしまいます。


「王城ではなくこの無人島へ転移してしまった原因も不明です。事故ではなく犯人がいた場合、この無人島へ転移してから何も接触が無く目的もわかりません。船が無事だったなら昼には捜索が始まっているはずだし、誘拐の可能性を考慮されていたとしても、我々はここで狼煙を上げて待つのが一番よいのでは、というのがハル殿下、エル殿下、カスパル殿、俺の総意…」

「ねぇ」

「クリス、今は真面目な話し合いだ。意見があるなら最後まで発言を聞…」

「ねぇ!すごい魔力の波動!」


クリス様の焦った様子から皆立ち上がり警戒した態勢に入ります。


「クリス、どっちだ」

「森の方向!ハル様にもまだ感知出来ないの?何これ、どんどん大きくなってる。こんなの人間じゃ無いよ。災害クラスの魔獣だ」


森の方向の魔力を探ると、すごい荒々しい魔力の塊を感じます。全方位に向けて魔力を放っているようです。


「逃げましょう!」

「夜の海に入るなんて自殺行為だろ!冷静になれよ!」


森と反対方向、海の方へ向かおうとしたカスパル様をエルヴィン殿下が止めました。


「私が確認しに行く。皆は残って…」

「この中で一番生き残らないといけないのは兄上だろ!」


「来る!」


誰ともなく叫びます。森の方向から魔力の塊がこちらに向かって来ているのがわかります。


「イィィィイィィィィイィィィイィィィィ」


ペガサスです。


月の光に照らされて、白毛の馬に白鳥のような立派な翼が付いたペガサスが叫びながらこちらへ向かって来るのが見えます。私たちを認識している様子ではありませんが、とても苦しそうに暴れまわり、森の木々をなぎ倒しています。このままではせっかく作った寝床や水場が壊されてしまいそうです。


ペガサスはすごい量の魔力を持ちながらも温厚で賢く魔獣ではなく幻獣と呼ばれています。討伐の対象になることなど聞いた事がありません。ペガサスがこんな攻撃的になるなど考えられない事態です。


皆で攻撃しどうにか倒すしかないのかと思ったその時、私たちの周りを分厚い氷のドームが囲いました。氷のドームの中にはハルトムート様、エルヴィン殿下、カスパル様、テオフィル様、クリス様、マリー様と私の7人。ベティーナさんとトラウさんの2人はドームの外にいます。


「何をする!出せ!まさかこれはお前達の企みだったのか!?」


テオフィル様が吠え、クリス様やハルトムート様も氷のドームを壊そうと攻撃しますがビクともしません。そして、ベティーナさんとトラウさんはこちらを気にもせずに暴れるペガサスを真剣に見つめています。


「非常事態につき無人島ゼミを終了し、殿下達の援護に切り替える。フーゴはペガサスを討伐、私は殿下達を護衛しつつ緊急避難信号を出し援護射撃する」


ベティーナさんがそう言ったとたんピンク髪の美少女から茶色い髪のお母様くらいの年齢の女性に変わり、トラウさんは茶髪緑目の青年から黒髪黒目のお父様くらいの年齢の男性に変わりました。


「……黒髪のフーゴ。何を言っても引きこもって出てこないと父上がぼやいていたあの化け物が外に出て来てるなんて」


クリス様の言葉でトラウさんが黒髪のフーゴ様だと判明しました。黒髪のフーゴ様は平民でも知っている有名人、お母様の学生時代に異世界から迷い込んできた史上初の全属性持ちです。“魔法師団の隠れたエース黒髪のフーゴ”と呼ばれています。クリス様から化け物呼ばわりされるのも納得です。


「黒髪のフーゴに“無人島ゼミ”ね。これは父上達の仕業みたいだね、兄上」

「あの転移の陣紙を作った黒髪のフーゴがいたんだ。奴が王城からこの島へ転移先を変更したのだろう」


クリス様でも破ることができない頑丈な氷のドームを破るのを諦めた王子2人は、この異常事態について解き明かしてしまったようです。あまり驚いていない反応から薄々陛下の企みだと察していたようにも見えます。


王宮魔法師の黒髪のフーゴ様とその同僚と思われるベティーナさん、“無人島ゼミ”“緊急避難信号”という言葉。船の高波から無人島へ飛ばされたのもすべて陛下含む保護者達が計画したものなのでしょう。

“婚約者や側近候補達と親睦を深めるように”無人島でのサバイバル実習をさせられていたようです。そして、あのペガサスの暴走だけは予定になかったのだと思われます。少し腹立たしい気持ちもありますが、ペガサスさえどうにかしたら無事家に帰ることができそうなことと、船に残っている侍女や護衛は無事だということがわかり安心しました。


「あのペガサスお腹が大きいわ!赤ちゃんがいるのかもしれない!」


マリー様が声をあげます。攻撃寸前だったトラウさん改めフーゴ様がマリー様の声を聞き手を止めました。ペガサスを見ると、確かにお腹が大きい。しかもお尻から脚のようなものが出ているのが確認できます。暴れているのは出産のせいみたいですが、ペガサスの出産はこんなに激しいのかと驚きます。


「あっ」

「どうした」


ペガサスの様子にあることを思い出し思わず声を漏らしてしまったのですが、ハルトムート様が気づいて理由を聞いてくれます。


「古い詩の中に、“仔馬は蹄から出てくる”という一節があった気がするのです。暗くて確信を持てないのですが、あの少し出ている仔馬の脚は蹄ではなく関節に見えるのです」

「馬の出産は前足の蹄から出てくるはずです。もし関節が出ているならばペガサスが暴れているのもそのせいかもしれません。非常にまずい。一旦出ている脚を押してお腹へ戻し、脚を伸ばして蹄を出し直さないと無事に仔馬が生まれないかもしれません」


私のおぼろげな知識をカスパル様が補足してくれました。本来のカスパル様はこのように物知りで優秀な方なのです。この旅で初めてカスパル様らしいところが見られました。


「ベティーナ、この氷を解け。皆でペガサスの出産を助ける」


ペガサス母子のピンチを察したハルトムート様がベティーナさんへ命令します。王族に命令されたベティーナさんがどうしようかと迷っているのがわかります。そこへフーゴ様が声をかけました。


「ヘラ、ペガサスも暴れ疲れたのか魔力の放出も減ってきた。私たち全員で押さえつけれるまで弱ったら出産を助けてやろう。何かあったら俺が責任を持つ。お前の立場と報酬は俺が保証しよう」

「そういうことなら分かったわ。殿下ももし何かあったら全てこのフーゴの責任になるようによろしくお願いします!」


そう行ってベティーナさん改めヘラ様は氷のドームを解きました。ヘラ様は現金な方みたいです。


こうして、急遽、ペガサスの出産を助けることになったのです。


最初は抵抗していたお母さんペガサスですが、本来はとても賢い幻獣です。私たちの助けたい気持ちが通じたのかすぐに大人しくなりました。私たちはジャンケンで決めた順番で仔馬の脚を戻すことになりました。もちろん私も試しましたがビクともしませんでした。テオフィル様が力任せに仔馬の脚を押し込むことに成功し、何時間もかけてやっと仔馬の脚をお腹に戻す事ができたのです。

脚を戻した時点でお母さんペガサスが力尽きてしまい今度は蹄部分を掴んだテオフィル様をみんなで引っ張り赤ちゃんを引っ張り出すことになりました。夕飯前には探索組と待機組に分かれていがみ合っていた私たちですが、今は皆で一丸になってます。


そして、無事、赤ちゃんペガサスは生まれました。


生まれたばかりでお母さんの体液で汚れた赤ちゃんペガサスを水魔法で洗おうとしたマリー様をヘラ様が止めます。

「母親の匂いが消えた子供は育児放棄されることがあります。だから動物の赤ちゃんを綺麗にしたり無闇に触ったりしてはダメです」

「知らなかったわ。ありがとう。ベティーナさんは本当は物知りで素敵なエリート女性魔法師だったのね」

「アンネマリー様、エリート女性魔法師だからって素敵とは限りませんよ。現に私の同僚にはベティーナの性格設定の参考にした“ひどぉ〜い”が口癖の超あざといぶりっ子女魔法師がいます」


なんと、ベティーナさんの人懐っこく砕けた性格と「ひどぉ〜い」には参考元の方がいるようです。もしかしてこのゼミにはハニートラップ実習も含まれていたのかも。ベティーナさんを好きになっていたように見えたテオフィル様とカスパル様の評価が心配です。


「その方と一緒に働くのはストレスが溜まりそうね」


マリー様に同情されているベティーナさん改めヘラ様ですが、気にせず出産で抜けたペガサスの羽を拾っております。ペガサスの羽はポーションなどの材料としてとても高く売れるらしいです。


「それにしても、ロミルダ様は本当にレオニー様にそっくりですね」


レオニーは私のお母様です。


「ヘラ様は母とお知り合いなのですか?」

「学園の同級生なんです。私は平民なのに4属性持ちだったせいで貴族学園に通うことになったんですが、レオニー様は平民でも関係ないと仲良くしてくれたのです。実はフーゴも同級生で、奴はそんな優しいレオニー様のことが大好きだったんですよ。レオニー様が結婚して失恋してからは引きこもって出てこなくなって、陛下の命令すら無視することもあったんです。そんなフーゴがこの無人島ゼミを担当するって聞いて、嫌な予感がして私も無理やり担当になったんですが、おかしな所もなく予定通り進行してたのですぐに杞憂だったと気づきました」


ロミーたんと呼んだり、私の作った土鍋を欲しがったりしたのはおかしな所にはカウントされないのでしょうか。トラウさん改めフーゴ様のあの謎の行為は私のお母様のことが好きだったからこその奇行だったとわかり、とても複雑な気持ちです。


私たち女性陣がそんな話をしている間にペガサスのお母さんと赤ちゃんは2匹でどこかへ飛んで行ってしまいました。生まれたばかりでもすぐ飛べるのですね。どちらも欠けることなく元気に飛んでいけて本当によかった。


カスパル様は疲れたのかドロドロの姿のままその場で寝てしまってます。おそらくまた船に乗ることになると思うので、このまま寝ている間に船に乗せてあげたいです。

クリス様とテオフィル様は仲良くペガサスの赤ちゃんの可愛さについて話しています。幼なじみの2人が仲直りしたようで良かったです。


フーゴ様は、マリー様から待機中のトラウさんの発言を聞いたヘラ様に怒られています。やはり“ロミーたん“はアウトだったようです。フーゴ様がお母様のことを“レオたん”と呼んでいるのが聞こえて来ていますが、気づかなかったことにしたいです。


あたりは真っ暗ですが、東側の空が少しだけ明るくなって来ています。そろそろ夜明けが近い気がします。


「ロミルダ、少しいいか?」


硬い顔をしたハルトムート様に声をかけられました。改まったハルトムート様の態度に私も緊張してしまいます。皆から少し離れた岩場の隅に2人並んで座りました。


「アンネマリー嬢に朴念仁と言われた時の事なんだが」


朴念仁。ペガサスの出産が衝撃的すぎて忘れていましたが、そんな事もありました。


「島を探索していた時に一度浜辺に戻って来たんだが、実はその時にこっそりと水場を作るロミルダ達を見てたんだ。ロミルダの事をロミーと言っているクリスやトラウゴットにすごい怒りを覚えて、しかもロミルダが2人をクリスやトラウと呼んでいるのも聞こえて来て、これは嫉妬だって気づいたんだ。隠れて嫉妬するくらいなら私もロミーって呼びたいって言おうと決意したのに、顔を見たら恥ずかしくなって言えなくなってしまって、あんな態度になってしまった。どうしてかわからないけどロミルダだけに素っ気なくなってしまうんだ。許して欲しい。こんな私だけどロミーって呼んでも良いだろうか?」


ハルトムート様が一生懸命に話してくれている中で、海面から太陽が出て来ました。段々と明るくなるにつれハルトムート様の銀色の髪がキラキラと輝き、真っ赤なお顔が露わになっていきます。


「ロミーって呼んでもらえたらとても嬉しいです。実は私も、ハル様って呼ぶベティーナさんに嫉妬していたんです。私もハル様って呼んでも良いですか?」


そんな私も、ハルトムート様に負けないくらいの真っ赤な顔になっている気がします。


「もちろんだ!」


とても眩しいのですが、眩しいのはハル様の笑顔なのか髪なのか海に照らされた朝日なのかはわかりません。でも今日2人で笑いあったことは私たちがおじいさんとおばあさんになってもずっとずっと忘れないことだけはわかります。


「ちょっと!隠れて見ていたらこの場に及んでも“どうしてかわからないけど素っ気なくなってしまう”だけですって!朴念仁にもほどがあるわ。もっとロマンチックな言葉は言えないのかしら」

「マリー、こういう鈍感なところも兄上のいいところなんだ」

「絶対いいところではないわよ。エルはブラコンがすぎると思うわ」


いつの間にかマリーとエルと呼び合っている未来の義弟夫婦。2人は本当に“気安い間柄”のようです。


こうして私たち7人はきっと一生忘れられない無人島での1日を終えたのでした。


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あの無人島ゼミから6年の月日が経ち16歳になった私は、貴族学園高等部の一年生になりました。

目の前にはピンク色のツインテールをふわふわと揺らしながら廊下を走るご令嬢がいます。駆け足をしていたせいでよろけたご令嬢を、テオフィル様が素早く支えました。


「さすがテオ様!転ぶところだったの。どうもありがとう」


このピンク髪のご令嬢は最近男爵家に引き取られた庶子で、その可愛さと貴族令嬢にはない気安さで高位貴族の方々を次々と虜にしているのです。


「これ、ゼミでやったやつだ」


そう言ってテオフィル様はご令嬢から距離をとりました。


「貴様、俺がいるのがわかっていて走って来たのであろう。それと勝手にテオ様などと呼ばないでいただきたい」

「そんなこと言うなんて、ひどぉ〜い!」


とても可愛らしいご令嬢なのですが、あの無人島ゼミだけではなくその後も何度かハニトラ試験をされている無人島ゼミメンバーの男性達は虜にできないようです。相手にもしないハル様を見て、私は密かに胸をなでおろしたのです。


今度の夏休みは6年ぶりに7名でトット島へ行く予定です。結婚して子供が生まれると忙しくなるので、学生のうちに次代で使う無人島の候補を探しておくようにと言われたからです。


その昔、貴族学園の卒業式で婚約破棄を宣言する王子が続出して困った王家は、試しに『愛は無理でも絆なら作れる!吊り橋効果も期待できるかも!無人島サバイバルゼミ〜ハニトラ試験を添えて〜』という名の無人島サバイバルを強行しました。その無人島ゼミメンバーは無事学園を卒業し、皆で協力して良い国になるように頑張ったそうです。それ以降の我が国の王家は、第一王子の中等部入学前に無人島ゼミを行うのが恒例となったそうです。


「ロミー、カスパルが最近ランチを食べない理由を知っているかい?」

「ダイエットですか?」

「夏休みのトット島旅行を陣紙で行くために小遣いを貯めているそうだ」


カスパル様は育ち盛りにも関わらずランチを節約してまで船に乗りたくないようです。6年前のトット島から帰る際に、船に乗りたがらずにトット島に住むと言い出しただけあります。あの時は黒髪のフーゴ様に無理を言って転移の陣紙を作って貰い、その料金は投資等で自分で稼ぎ3年かけて返済したのでした。


「ロミー、また2人で綺麗な朝日を見たいね。皆には内緒で抜け出そうか」


高等部に入ってからのハル様は今までの無愛想が嘘のように甘くなりました。今までとは逆に私の方が照れてしまって素っ気なくなってしまうのが最近の悩みなのです。

でも今度のトット島への旅行では照れを克服してもっともっとハル様に近づこうと決意しているのです。





馬の出産を始め、全て作者のふわっとした知識だけで書いてます。実際とは違う事が多々あるかと思いますが、魔法が使える異世界のお話だということで許してください。

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[一言] なんでそんなに似てるだろう、ゼミってすごいね
[一言] 返信遅くなってすみません。 黒髪ではない「フーゴ」と検索してたぶん一番最初に出てくる、「スタンド」バトル漫画第5部に出てくるキャラクターの名前を、トラウさんがこちらの世界に来た時に名乗った…
[良い点] 題名で面白かったんに、それを作中でいわれてもうwもうw [気になる点] 砂とか岩とかの属性まで細分化されているとは…ポケモン並みに分かれていて、強弱関係とかあるんですかね?面白いけど大変そ…
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